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最強メイド!誕生のお話。
第7話 宵満学園
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私たちが通う学校は宵満学園っていうらしい。
常盤兄弟みたいにお金持ちの子が通う学校らしいから大丈夫かなって不安はある。
でも私はあくまで護衛だしね。
他のことはあまり気にしないことにしよう。
そう思っていたけれど、登校中の車の中で杏くんは目も合わせようとしてくれない。
柊さんは全く私に興味がないのか、目が合っても無反応。
護衛対象とこんな感じで本当に大丈夫かな?
先が思いやられるよ……。
そうして迎えた入学式。
生徒会長として壇上《だんじょう》であいさつをする柊さんを私はポカンと口を開けて見上げていた。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生を代表して、歓迎の意を表したいと思います」
数十分前までの無表情な柊さんと同一人物とは思えないキラキラな笑顔。
まさに王子様だった。
周囲の女子生徒は完全に見ほれてる。
なにこれ?
二重人格?
それとも私の目がおかしくなった?
「常盤様、一段と凛々しくなってるね」
「うん。初等部の頃からカッコ良かったけど、更に素敵になってるよね」
すぐ近くの女子がヒソヒソと話す声が聞こえる。
宵満学園は小、中、高のエスカレーター式学校だから、前から柊さんのことを知っている子も多いみたい。
……ってことは、みんなの中ではあのキラキラ笑顔の柊さんが普通ってこと?
じゃあ何で家や私の前ではあんなに無感情なの⁉
そんな疑問の叫びは声に出ることなく私ののどで止まった。
大きな声を上げるわけにはいかないし、何より答えられそうなのは杏くんくらいだよね。
そしてその杏くんが素直に教えてくれるとも思えないし……。
だから疑問をそのままにして入学式をやり過ごすしかなかったんだ。
何だか悶々《もんもん》と考えてしまって入学式だけで疲れてしまったけど、まだクラスでの自己紹介と明日からの授業説明がある。
気を取り直して、私は杏くんと同じ教室に戻った。
「常盤杏です。よろしく」
簡単な自己紹介で終わる杏くんだったけれど、初等部から繰り上がって来たいわゆる内部生は大体みんなこんな感じの自己紹介をしてたし、いいのかな?
その内部生が終わったら、今度は中学からこの学園に通う外部生のあいさつ。
ちなみに私もその外部生に入るんだ。
外部生はもう少し詳しく自己紹介していた。
前の学校がどこだったのかとか、趣味は何なのかとか。
だから私もしっかり自己紹介した。
「弧月望乃です。期間限定で常盤兄弟の護衛をしています。よろしくお願いします!」
元気にハキハキと自己紹介出来たと思ったんだけど、杏くんは「なっ⁉」って声を上げて驚きの表情をしていた。
それに教室の皆も反応がおかしい。
ザワザワと戸惑いみたいなものを感じる。
「護衛? 女だろ?」
「本当なの? 杏くんたちに近づくためのウソなんじゃないの?」
そんな声が聞こえてきて、信じてもらえてないみたいだって気づいた。
「ええー? 本当なのに……」
信じてもらいたかったけれど、自己紹介にあまり時間を取られたくない先生に「次」ってうながされちゃった。
モヤモヤしたまま椅子に座って、次の人の自己紹介を聞く。
周りからの疑わしそうな目のせいで居心地が悪い。
それに、杏くんがものすごい顔でにらんで来てる。
あーもう。
学園生活も前途多難《ぜんとたなん》になりそうだよ……。
いいもん。
一か月だけだし、依頼を頑張るのが私の仕事だもん。
私は拗《す》ねるようにそんなことを思いながら他の人の自己紹介や担任の先生の話を聞いていた。
常盤兄弟みたいにお金持ちの子が通う学校らしいから大丈夫かなって不安はある。
でも私はあくまで護衛だしね。
他のことはあまり気にしないことにしよう。
そう思っていたけれど、登校中の車の中で杏くんは目も合わせようとしてくれない。
柊さんは全く私に興味がないのか、目が合っても無反応。
護衛対象とこんな感じで本当に大丈夫かな?
先が思いやられるよ……。
そうして迎えた入学式。
生徒会長として壇上《だんじょう》であいさつをする柊さんを私はポカンと口を開けて見上げていた。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生を代表して、歓迎の意を表したいと思います」
数十分前までの無表情な柊さんと同一人物とは思えないキラキラな笑顔。
まさに王子様だった。
周囲の女子生徒は完全に見ほれてる。
なにこれ?
二重人格?
それとも私の目がおかしくなった?
「常盤様、一段と凛々しくなってるね」
「うん。初等部の頃からカッコ良かったけど、更に素敵になってるよね」
すぐ近くの女子がヒソヒソと話す声が聞こえる。
宵満学園は小、中、高のエスカレーター式学校だから、前から柊さんのことを知っている子も多いみたい。
……ってことは、みんなの中ではあのキラキラ笑顔の柊さんが普通ってこと?
じゃあ何で家や私の前ではあんなに無感情なの⁉
そんな疑問の叫びは声に出ることなく私ののどで止まった。
大きな声を上げるわけにはいかないし、何より答えられそうなのは杏くんくらいだよね。
そしてその杏くんが素直に教えてくれるとも思えないし……。
だから疑問をそのままにして入学式をやり過ごすしかなかったんだ。
何だか悶々《もんもん》と考えてしまって入学式だけで疲れてしまったけど、まだクラスでの自己紹介と明日からの授業説明がある。
気を取り直して、私は杏くんと同じ教室に戻った。
「常盤杏です。よろしく」
簡単な自己紹介で終わる杏くんだったけれど、初等部から繰り上がって来たいわゆる内部生は大体みんなこんな感じの自己紹介をしてたし、いいのかな?
その内部生が終わったら、今度は中学からこの学園に通う外部生のあいさつ。
ちなみに私もその外部生に入るんだ。
外部生はもう少し詳しく自己紹介していた。
前の学校がどこだったのかとか、趣味は何なのかとか。
だから私もしっかり自己紹介した。
「弧月望乃です。期間限定で常盤兄弟の護衛をしています。よろしくお願いします!」
元気にハキハキと自己紹介出来たと思ったんだけど、杏くんは「なっ⁉」って声を上げて驚きの表情をしていた。
それに教室の皆も反応がおかしい。
ザワザワと戸惑いみたいなものを感じる。
「護衛? 女だろ?」
「本当なの? 杏くんたちに近づくためのウソなんじゃないの?」
そんな声が聞こえてきて、信じてもらえてないみたいだって気づいた。
「ええー? 本当なのに……」
信じてもらいたかったけれど、自己紹介にあまり時間を取られたくない先生に「次」ってうながされちゃった。
モヤモヤしたまま椅子に座って、次の人の自己紹介を聞く。
周りからの疑わしそうな目のせいで居心地が悪い。
それに、杏くんがものすごい顔でにらんで来てる。
あーもう。
学園生活も前途多難《ぜんとたなん》になりそうだよ……。
いいもん。
一か月だけだし、依頼を頑張るのが私の仕事だもん。
私は拗《す》ねるようにそんなことを思いながら他の人の自己紹介や担任の先生の話を聞いていた。
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