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最強メイド!誕生のお話。
第4話 三兄弟の長男
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天然パーマなのかゆるやかに波打っている茶色の髪。
落ち着いている様子だけれど、つかみどころのないような不思議な茶色の目。
まるで絵本から飛び出して来た王子様みたいなカッコイイ男の子がそこにいた。
ただ、なぜか近くに二十センチくらいのコウモリみたいな形をしたロボットが飛んでいる。
男の子がスッと人差し指を横にして上げると、コウモリロボットはその指に逆さに止まって翼を閉じた。
翼を閉じて十センチくらいになったコウモリロボット。
それをシャツの胸ポケットにしまうと、男の子はニコリともせずに私を見てチョンと首をかしげる。
「お姫様みたいに可愛い子だね。……でもメイドなんだ?」
「は? へ?」
ヴァンパイアは基本美男美女らしいから、確かに私も可愛い顔をしていると思う。
でも無表情で淡々と言われても可愛いとほめられている感じがしないよ。
そのせいでなおさら戸惑っちゃう。
「で? きみはあやしいメイドなの?」
重ねて聞いて来る彼に、私は反射的に「違います!」と答えた。
「私、今日からここで働くことになっている弧月望乃って言います!」
勢いのまま、なんとかやっと名乗りを上げられた。
「ああ、そういえば杏と同じ年の子が護衛につくって聞いたけど……きみのことか」
話は通っていたのか、つぶやいた男の子は相変わらず無表情のまま納得する。
少なくともあやしくはないと証明出来たみたいでホッとした。
「で? どうしてこっちに来てるの? この辺りは僕ら三兄弟の部屋があるところで、限られた人しか来ちゃいけないことになってるんだけど」
「え⁉」
やっぱり来ちゃいけないところだったんだ。
でも、私は三兄弟の護衛なんだから別にいいんじゃないかな?
驚きつつも、大した問題じゃなさそうな気がして首をひねる。
うーん、とうなって考えていると、男の子が少しだけ表情を変えて口を開いた。
「迷った? それとも僕らを襲いに来た?」
「へ? 襲いに? 護衛なのに何で襲うの? 迷ったんですけど?」
何となく見定めようとしてる目をしていたけれど、逆にわたしの方が「何言ってるの?」といぶかしむところだよ。
なのに私の反応が予想外だったのかな?
彼は驚くみたいに目をパチパチさせていた。
「……あの、なんですか?」
もうホント、この人何がしたいんだろう?
不思議な雰囲気の男の子だけど……とにかく変な人って思った。
「ああ、なんでもないよ」
私の問いかけも無表情であしらって、彼は足を進める。
私の横を通り過ぎて「こっちだよ」とそのまま歩いて行った。
「え?」
「リビングルームに行くんだろう? 僕も今から行くところだったんだ」
「あ、はい」
ついて来いと言わんばかりの様子に私はあわててついて行く。
無言で歩いていると、カーペットの色が赤に変わってホッとした。
少なくとも見覚えのある場所に来れたみたい。
安心した私はそこでやっと男の子の正体を考える余裕が出来た。
まあ、さっきの青いカーペットの辺りを『僕ら三兄弟の部屋があるところ』って言ったり、私と同じ年の杏くんって人を呼び捨てにしてる時点で分かっちゃったけどね。
「えっと……ありがとうございます。……柊さん、ですよね?」
護衛対象である三兄弟の長男、常盤柊で間違いないはずだ。
「そうだよ。まあ、一か月よろしくね」
顔だけをこっちに向けて、口元に笑みを浮かべてあいさつされる。
でも、目はやっぱり無感情で全く笑っている様には見えない。
「……よろしくお願いします」
だからそう返しながら、私は仲良く出来そうにないなぁって初めてこの依頼に不安を覚えた。
落ち着いている様子だけれど、つかみどころのないような不思議な茶色の目。
まるで絵本から飛び出して来た王子様みたいなカッコイイ男の子がそこにいた。
ただ、なぜか近くに二十センチくらいのコウモリみたいな形をしたロボットが飛んでいる。
男の子がスッと人差し指を横にして上げると、コウモリロボットはその指に逆さに止まって翼を閉じた。
翼を閉じて十センチくらいになったコウモリロボット。
それをシャツの胸ポケットにしまうと、男の子はニコリともせずに私を見てチョンと首をかしげる。
「お姫様みたいに可愛い子だね。……でもメイドなんだ?」
「は? へ?」
ヴァンパイアは基本美男美女らしいから、確かに私も可愛い顔をしていると思う。
でも無表情で淡々と言われても可愛いとほめられている感じがしないよ。
そのせいでなおさら戸惑っちゃう。
「で? きみはあやしいメイドなの?」
重ねて聞いて来る彼に、私は反射的に「違います!」と答えた。
「私、今日からここで働くことになっている弧月望乃って言います!」
勢いのまま、なんとかやっと名乗りを上げられた。
「ああ、そういえば杏と同じ年の子が護衛につくって聞いたけど……きみのことか」
話は通っていたのか、つぶやいた男の子は相変わらず無表情のまま納得する。
少なくともあやしくはないと証明出来たみたいでホッとした。
「で? どうしてこっちに来てるの? この辺りは僕ら三兄弟の部屋があるところで、限られた人しか来ちゃいけないことになってるんだけど」
「え⁉」
やっぱり来ちゃいけないところだったんだ。
でも、私は三兄弟の護衛なんだから別にいいんじゃないかな?
驚きつつも、大した問題じゃなさそうな気がして首をひねる。
うーん、とうなって考えていると、男の子が少しだけ表情を変えて口を開いた。
「迷った? それとも僕らを襲いに来た?」
「へ? 襲いに? 護衛なのに何で襲うの? 迷ったんですけど?」
何となく見定めようとしてる目をしていたけれど、逆にわたしの方が「何言ってるの?」といぶかしむところだよ。
なのに私の反応が予想外だったのかな?
彼は驚くみたいに目をパチパチさせていた。
「……あの、なんですか?」
もうホント、この人何がしたいんだろう?
不思議な雰囲気の男の子だけど……とにかく変な人って思った。
「ああ、なんでもないよ」
私の問いかけも無表情であしらって、彼は足を進める。
私の横を通り過ぎて「こっちだよ」とそのまま歩いて行った。
「え?」
「リビングルームに行くんだろう? 僕も今から行くところだったんだ」
「あ、はい」
ついて来いと言わんばかりの様子に私はあわててついて行く。
無言で歩いていると、カーペットの色が赤に変わってホッとした。
少なくとも見覚えのある場所に来れたみたい。
安心した私はそこでやっと男の子の正体を考える余裕が出来た。
まあ、さっきの青いカーペットの辺りを『僕ら三兄弟の部屋があるところ』って言ったり、私と同じ年の杏くんって人を呼び捨てにしてる時点で分かっちゃったけどね。
「えっと……ありがとうございます。……柊さん、ですよね?」
護衛対象である三兄弟の長男、常盤柊で間違いないはずだ。
「そうだよ。まあ、一か月よろしくね」
顔だけをこっちに向けて、口元に笑みを浮かべてあいさつされる。
でも、目はやっぱり無感情で全く笑っている様には見えない。
「……よろしくお願いします」
だからそう返しながら、私は仲良く出来そうにないなぁって初めてこの依頼に不安を覚えた。
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