4 / 30
最強メイド!誕生のお話。
第4話 三兄弟の長男
しおりを挟む
天然パーマなのかゆるやかに波打っている茶色の髪。
落ち着いている様子だけれど、つかみどころのないような不思議な茶色の目。
まるで絵本から飛び出して来た王子様みたいなカッコイイ男の子がそこにいた。
ただ、なぜか近くに二十センチくらいのコウモリみたいな形をしたロボットが飛んでいる。
男の子がスッと人差し指を横にして上げると、コウモリロボットはその指に逆さに止まって翼を閉じた。
翼を閉じて十センチくらいになったコウモリロボット。
それをシャツの胸ポケットにしまうと、男の子はニコリともせずに私を見てチョンと首をかしげる。
「お姫様みたいに可愛い子だね。……でもメイドなんだ?」
「は? へ?」
ヴァンパイアは基本美男美女らしいから、確かに私も可愛い顔をしていると思う。
でも無表情で淡々と言われても可愛いとほめられている感じがしないよ。
そのせいでなおさら戸惑っちゃう。
「で? きみはあやしいメイドなの?」
重ねて聞いて来る彼に、私は反射的に「違います!」と答えた。
「私、今日からここで働くことになっている弧月望乃って言います!」
勢いのまま、なんとかやっと名乗りを上げられた。
「ああ、そういえば杏と同じ年の子が護衛につくって聞いたけど……きみのことか」
話は通っていたのか、つぶやいた男の子は相変わらず無表情のまま納得する。
少なくともあやしくはないと証明出来たみたいでホッとした。
「で? どうしてこっちに来てるの? この辺りは僕ら三兄弟の部屋があるところで、限られた人しか来ちゃいけないことになってるんだけど」
「え⁉」
やっぱり来ちゃいけないところだったんだ。
でも、私は三兄弟の護衛なんだから別にいいんじゃないかな?
驚きつつも、大した問題じゃなさそうな気がして首をひねる。
うーん、とうなって考えていると、男の子が少しだけ表情を変えて口を開いた。
「迷った? それとも僕らを襲いに来た?」
「へ? 襲いに? 護衛なのに何で襲うの? 迷ったんですけど?」
何となく見定めようとしてる目をしていたけれど、逆にわたしの方が「何言ってるの?」といぶかしむところだよ。
なのに私の反応が予想外だったのかな?
彼は驚くみたいに目をパチパチさせていた。
「……あの、なんですか?」
もうホント、この人何がしたいんだろう?
不思議な雰囲気の男の子だけど……とにかく変な人って思った。
「ああ、なんでもないよ」
私の問いかけも無表情であしらって、彼は足を進める。
私の横を通り過ぎて「こっちだよ」とそのまま歩いて行った。
「え?」
「リビングルームに行くんだろう? 僕も今から行くところだったんだ」
「あ、はい」
ついて来いと言わんばかりの様子に私はあわててついて行く。
無言で歩いていると、カーペットの色が赤に変わってホッとした。
少なくとも見覚えのある場所に来れたみたい。
安心した私はそこでやっと男の子の正体を考える余裕が出来た。
まあ、さっきの青いカーペットの辺りを『僕ら三兄弟の部屋があるところ』って言ったり、私と同じ年の杏くんって人を呼び捨てにしてる時点で分かっちゃったけどね。
「えっと……ありがとうございます。……柊さん、ですよね?」
護衛対象である三兄弟の長男、常盤柊で間違いないはずだ。
「そうだよ。まあ、一か月よろしくね」
顔だけをこっちに向けて、口元に笑みを浮かべてあいさつされる。
でも、目はやっぱり無感情で全く笑っている様には見えない。
「……よろしくお願いします」
だからそう返しながら、私は仲良く出来そうにないなぁって初めてこの依頼に不安を覚えた。
落ち着いている様子だけれど、つかみどころのないような不思議な茶色の目。
まるで絵本から飛び出して来た王子様みたいなカッコイイ男の子がそこにいた。
ただ、なぜか近くに二十センチくらいのコウモリみたいな形をしたロボットが飛んでいる。
男の子がスッと人差し指を横にして上げると、コウモリロボットはその指に逆さに止まって翼を閉じた。
翼を閉じて十センチくらいになったコウモリロボット。
それをシャツの胸ポケットにしまうと、男の子はニコリともせずに私を見てチョンと首をかしげる。
「お姫様みたいに可愛い子だね。……でもメイドなんだ?」
「は? へ?」
ヴァンパイアは基本美男美女らしいから、確かに私も可愛い顔をしていると思う。
でも無表情で淡々と言われても可愛いとほめられている感じがしないよ。
そのせいでなおさら戸惑っちゃう。
「で? きみはあやしいメイドなの?」
重ねて聞いて来る彼に、私は反射的に「違います!」と答えた。
「私、今日からここで働くことになっている弧月望乃って言います!」
勢いのまま、なんとかやっと名乗りを上げられた。
「ああ、そういえば杏と同じ年の子が護衛につくって聞いたけど……きみのことか」
話は通っていたのか、つぶやいた男の子は相変わらず無表情のまま納得する。
少なくともあやしくはないと証明出来たみたいでホッとした。
「で? どうしてこっちに来てるの? この辺りは僕ら三兄弟の部屋があるところで、限られた人しか来ちゃいけないことになってるんだけど」
「え⁉」
やっぱり来ちゃいけないところだったんだ。
でも、私は三兄弟の護衛なんだから別にいいんじゃないかな?
驚きつつも、大した問題じゃなさそうな気がして首をひねる。
うーん、とうなって考えていると、男の子が少しだけ表情を変えて口を開いた。
「迷った? それとも僕らを襲いに来た?」
「へ? 襲いに? 護衛なのに何で襲うの? 迷ったんですけど?」
何となく見定めようとしてる目をしていたけれど、逆にわたしの方が「何言ってるの?」といぶかしむところだよ。
なのに私の反応が予想外だったのかな?
彼は驚くみたいに目をパチパチさせていた。
「……あの、なんですか?」
もうホント、この人何がしたいんだろう?
不思議な雰囲気の男の子だけど……とにかく変な人って思った。
「ああ、なんでもないよ」
私の問いかけも無表情であしらって、彼は足を進める。
私の横を通り過ぎて「こっちだよ」とそのまま歩いて行った。
「え?」
「リビングルームに行くんだろう? 僕も今から行くところだったんだ」
「あ、はい」
ついて来いと言わんばかりの様子に私はあわててついて行く。
無言で歩いていると、カーペットの色が赤に変わってホッとした。
少なくとも見覚えのある場所に来れたみたい。
安心した私はそこでやっと男の子の正体を考える余裕が出来た。
まあ、さっきの青いカーペットの辺りを『僕ら三兄弟の部屋があるところ』って言ったり、私と同じ年の杏くんって人を呼び捨てにしてる時点で分かっちゃったけどね。
「えっと……ありがとうございます。……柊さん、ですよね?」
護衛対象である三兄弟の長男、常盤柊で間違いないはずだ。
「そうだよ。まあ、一か月よろしくね」
顔だけをこっちに向けて、口元に笑みを浮かべてあいさつされる。
でも、目はやっぱり無感情で全く笑っている様には見えない。
「……よろしくお願いします」
だからそう返しながら、私は仲良く出来そうにないなぁって初めてこの依頼に不安を覚えた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
クール天狗の溺愛事情
緋村燐
児童書・童話
サトリの子孫である美紗都は
中学の入学を期にあやかしの里・北妖に戻って来た。
一歳から人間の街で暮らしていたからうまく馴染めるか不安があったけれど……。
でも、素敵な出会いが待っていた。
黒い髪と同じ色の翼をもったカラス天狗。
普段クールだという彼は美紗都だけには甘くて……。
*・゜゚・*:.。..。.:*☆*:.。. .。.:*・゜゚・*
「可愛いな……」
*滝柳 風雅*
守りの力を持つカラス天狗
。.:*☆*:.。
「お前今から俺の第一嫁候補な」
*日宮 煉*
最強の火鬼
。.:*☆*:.。
「風雅の邪魔はしたくないけど、簡単に諦めたくもないなぁ」
*山里 那岐*
神の使いの白狐
\\ドキドキワクワクなあやかし現代ファンタジー!//
野いちご様
ベリーズカフェ様
魔法のiらんど様
エブリスタ様
にも掲載しています。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。
桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。
山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。
そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。
するとその人は優しい声で言いました。
「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」
その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。
(この作品はほぼ毎日更新です)

こちら御神楽学園心霊部!
緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。
灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。
それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。
。
部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。
前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。
通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。
どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。
封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。
決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。
事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。
ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。
都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。
延々と名前を問う不気味な声【名前】。
10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
スクナビコナの冒険―小さな神が高天原を追放されネズミとともに地上に落っこちてしまった件―
七柱雄一
児童書・童話
スクナビコナは人の手のひらに乗る程度の小さな体の神です。
またスクナビコナは日本神話に登場する神でもあるのですが、作者としては日本の神話などに関する予備知識があまりなくても、読み進められるように本作を書いていくことを心がけようと思っています。
まだまだ『アルファポリス』初心者の上に未熟者の作者ですが、一応プロを目指す方向でやっていくつもりでおります。
感想、ご指摘、批評、批判(もちろん誹謗、中傷のたぐいはご勘弁願いたいのですが)大歓迎でございます。
特に特定の読者層は想定しておらず、誰でも読めるものを目指した作品です。
また『小説家になろう』『カクヨム』でもこの小説を投稿しております。
ではぜひお楽しみください!
ゆうれいのぼく
早乙女純章
児童書・童話
ぼくはゆうれいになっていた。
ゆうれいになる前が何だったのか分からない。
ぼくが帰れる場所を探してみよう。きっと自分が何だったのかを思い出して、なりたい自分になれそうな気がする。
ぼくはいろいろなものに憑依していって、みんなを喜ばせていく。
でも、結局、ゆうれいの自分に戻ってしまう。
ついには、空で同じゆうれいたちを見つけるけれど、そこもぼくの本当の居場所ではなかった。
ゆうれいはどんどん増えていっていく。なんと『あくのぐんだん』が人間をゆうれいにしていたのだ。
※この作品は、レトロアーケードゲーム『ファンタズム』から影響を受けて創作しました。いわゆる参考文献みたいな感じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる