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三章 中間テストと告白
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《で? どうだったの灯里?》
家に帰って夕飯も食べ終わり、お風呂に入ろうかというときに美智留ちゃんからそんなメッセージが届いた。
校外学習女子というグループ名のトーク画面に表示されたそれを見て、私は返事を打つ。
相談したんだし、結果は報告するべきだよね。
そう思って《日高くん、私のこと好きだって言ってた》と事実だけを打ち込んで送信する。
そしてお風呂から上がってまた確認すると、美智留ちゃんとさくらちゃんからメッセージが来ていた。
《やっぱり! そうだと思ったよ》
さくらちゃんのその言葉から始まり、美智留ちゃんも《だよね。灯里、ちょっと鈍感すぎるよ……》などとメッセージを送ってきている。
「……」
お昼の話だけで二人には気付かれていたってことか。
それなら確かに私は鈍感なのかもしれない、と遠い目をして思った。
そしてそれらの最後、さくらちゃんからのメッセージが――。
《それで、付き合うことにしたの?》
目がキラキラしている絵文字と共に聞かれる。
《え? 付き合って無いけど?》
純粋に疑問でそう返した。
付き合うって恋人同士になるって事だよね。
そんな事なにも言ってなかったし。
それに……。
《恋人って好き合ってる人がなるものでしょう? 私、日高くんのこと異性として好きか分からないし……》
その後の返信は、少し間が開いた。
《あー、まあ……そういうこともある、のかな?》
何だか歯切れの悪い返事が美智留ちゃんから届く。
《……でも嫌いじゃないんでしょ?》
と続けて来たので《うん、友達だし》と答えた。
《告白の返事、求められなかったの?》
さくらちゃんからの言葉に、ああ、あれは告白だったんだな、と今更ながらに思う。
でも特に返事は求められなかったな。
どうしてだっけ?
とあの時のことを思い出す。
確か、日高くんが私のことを好きだなんて信じられないって言ったんだっけ。
それで、それなら何度だって言うって言われて……。
そうだ、それからなし崩しに頬とか額とかキスされたんだ。
「っ」
思い出して、お風呂上がりで温まった体が更に熱を持つ。
お風呂からはもう上がったのに、のぼせてしまいそうになった。
「ムリムリ! あんなこと言えないよ!」
誰にも聞かれていないことを良いことに声を上げて大きく深呼吸をする。
ある程度落ち着かせてから、詳しい説明はせずに《求められなかった》とだけ返した。
さくらちゃんは《そうなの……》とそのまま納得してくれたんだけど……。
《……ねえ灯里。もしかしてまた何かされた?》
「っ⁉」
美智留ちゃん、鋭い!
絵文字もスタンプも使っていない私のメッセージから何でそんなことを察せられるんだろう。
これは、正直に言うべきことかな?
言わなくても良い事なんじゃ……。
そう思って何もなかったと返信しようとしたら。
《正直に言っちゃいな? また変に勘違いとかしてたら困るのは灯里だよ?》
と続けてメッセージが来た。
「う゛っ」
前例が出来てしまったので、大丈夫だよとは言えなかった。
結果、私は聞かれるままに答えて洗いざらい吐かされてしまう。
《それでキスはやめて貰えたけれど、何て言うか……逃がしてもらえなさそうって思ったっていうか……》
最後に歯切れの悪い言い方で説明のメッセージを終える。
それに最初に返してきたのはさくらちゃんだ。
《意外。日高くんってそんなタイプだったんだ……》
地味男の日高くんしか知らないとやっぱりそう思うよね。
美智留ちゃんからは少し間をおいてメッセージが届く。
《とにかくまとめると、まず日高は灯里のことが好きで、灯里は嫌いじゃないけれど恋愛的な意味で好きかは分からないってことよね?》
念のための確認っぽかったので、私は《うん》とだけ返す。
《そんな状態だけど、日高は逃がしてくれない。つまり、恋人にする気満々ってことよね?》
《……そういうことになるね》
他人から説明されると何だかムズムズした気分になった。
それを隠すように淡々としたメッセージで返す。
すると美智留ちゃんはズバリ言ってきた。
《灯里、もしかしてあんた……どうせ逃げられないんだし、自分の気持ちとか関係ないんじゃないかとか考えてない?》
「……」
図星だった。
というか、言われて初めてハッキリ自分がそう思っていたことを自覚した。
《もしそう思っているなら考えを改めて。灯里が本当に嫌だと思っているなら、私達がどんな手を使ってでも助け出すから。だから自分の気持ちにはちゃんと向き合って》
「……」
《そうだよ! 灯里ちゃんの気持ちが大事なんだから!》
さくらちゃんも美智留ちゃんの言葉に同意する。
ヤバい……泣きそう……。
こんなにも私を想ってくれている友人がいる。
仲良くするようになってまだひと月も経っていないのに……。
《分かったよ。ありがとう、ちゃんと考えてみる》
と、初めて美智留ちゃん達に対してスタンプを使った。
泣いているウサギのスタンプ。
彼女たちの言葉に、感動したってことを少しでも伝えたくて。
そうしたらさくらちゃんからウサギを慰めているクマさんのスタンプが届いた。
美智留ちゃんからは可愛い女の子がファイト! と励ますスタンプが届く。
どれも可愛くてフフッと笑っていると、美智留ちゃんからメッセージも届いた。
《それにさ、日高だって灯里が止めてって言ったら離れてくれたんでしょう? 強引なのかも知れないけれど、ちゃんと灯里の事大事に思ってるってことなんじゃない?》
「あ……」
確かに、本気で嫌なことはされていない。
頭の中に今日のお昼の時の日高くんの顔が浮かぶ。
『もしかして避けられてんのかな、と思った』
そう言って安堵していた日高くん。
それは避けられるかもしれないと思ってたってことで。
避けられるかもしれないことをしたって自覚はあったってことで。
最初のキスの事、少しは反省してるのかな?
強引な態度だから分からなかったけれど、日高くんは本当に私のことを好きでいてくれて、彼なりに大事に思っていてくれていたのかもしれない。
多分、私が私を一番大事にしていなかったんだ。
「私、ダメだなぁ……」
反省しなきゃな。
《そうだね。それも含めて、ちゃんと向き合ってみる》
最後にそう返して、二人から頑張ってと返事を貰い、今日の報告を終えた。
家に帰って夕飯も食べ終わり、お風呂に入ろうかというときに美智留ちゃんからそんなメッセージが届いた。
校外学習女子というグループ名のトーク画面に表示されたそれを見て、私は返事を打つ。
相談したんだし、結果は報告するべきだよね。
そう思って《日高くん、私のこと好きだって言ってた》と事実だけを打ち込んで送信する。
そしてお風呂から上がってまた確認すると、美智留ちゃんとさくらちゃんからメッセージが来ていた。
《やっぱり! そうだと思ったよ》
さくらちゃんのその言葉から始まり、美智留ちゃんも《だよね。灯里、ちょっと鈍感すぎるよ……》などとメッセージを送ってきている。
「……」
お昼の話だけで二人には気付かれていたってことか。
それなら確かに私は鈍感なのかもしれない、と遠い目をして思った。
そしてそれらの最後、さくらちゃんからのメッセージが――。
《それで、付き合うことにしたの?》
目がキラキラしている絵文字と共に聞かれる。
《え? 付き合って無いけど?》
純粋に疑問でそう返した。
付き合うって恋人同士になるって事だよね。
そんな事なにも言ってなかったし。
それに……。
《恋人って好き合ってる人がなるものでしょう? 私、日高くんのこと異性として好きか分からないし……》
その後の返信は、少し間が開いた。
《あー、まあ……そういうこともある、のかな?》
何だか歯切れの悪い返事が美智留ちゃんから届く。
《……でも嫌いじゃないんでしょ?》
と続けて来たので《うん、友達だし》と答えた。
《告白の返事、求められなかったの?》
さくらちゃんからの言葉に、ああ、あれは告白だったんだな、と今更ながらに思う。
でも特に返事は求められなかったな。
どうしてだっけ?
とあの時のことを思い出す。
確か、日高くんが私のことを好きだなんて信じられないって言ったんだっけ。
それで、それなら何度だって言うって言われて……。
そうだ、それからなし崩しに頬とか額とかキスされたんだ。
「っ」
思い出して、お風呂上がりで温まった体が更に熱を持つ。
お風呂からはもう上がったのに、のぼせてしまいそうになった。
「ムリムリ! あんなこと言えないよ!」
誰にも聞かれていないことを良いことに声を上げて大きく深呼吸をする。
ある程度落ち着かせてから、詳しい説明はせずに《求められなかった》とだけ返した。
さくらちゃんは《そうなの……》とそのまま納得してくれたんだけど……。
《……ねえ灯里。もしかしてまた何かされた?》
「っ⁉」
美智留ちゃん、鋭い!
絵文字もスタンプも使っていない私のメッセージから何でそんなことを察せられるんだろう。
これは、正直に言うべきことかな?
言わなくても良い事なんじゃ……。
そう思って何もなかったと返信しようとしたら。
《正直に言っちゃいな? また変に勘違いとかしてたら困るのは灯里だよ?》
と続けてメッセージが来た。
「う゛っ」
前例が出来てしまったので、大丈夫だよとは言えなかった。
結果、私は聞かれるままに答えて洗いざらい吐かされてしまう。
《それでキスはやめて貰えたけれど、何て言うか……逃がしてもらえなさそうって思ったっていうか……》
最後に歯切れの悪い言い方で説明のメッセージを終える。
それに最初に返してきたのはさくらちゃんだ。
《意外。日高くんってそんなタイプだったんだ……》
地味男の日高くんしか知らないとやっぱりそう思うよね。
美智留ちゃんからは少し間をおいてメッセージが届く。
《とにかくまとめると、まず日高は灯里のことが好きで、灯里は嫌いじゃないけれど恋愛的な意味で好きかは分からないってことよね?》
念のための確認っぽかったので、私は《うん》とだけ返す。
《そんな状態だけど、日高は逃がしてくれない。つまり、恋人にする気満々ってことよね?》
《……そういうことになるね》
他人から説明されると何だかムズムズした気分になった。
それを隠すように淡々としたメッセージで返す。
すると美智留ちゃんはズバリ言ってきた。
《灯里、もしかしてあんた……どうせ逃げられないんだし、自分の気持ちとか関係ないんじゃないかとか考えてない?》
「……」
図星だった。
というか、言われて初めてハッキリ自分がそう思っていたことを自覚した。
《もしそう思っているなら考えを改めて。灯里が本当に嫌だと思っているなら、私達がどんな手を使ってでも助け出すから。だから自分の気持ちにはちゃんと向き合って》
「……」
《そうだよ! 灯里ちゃんの気持ちが大事なんだから!》
さくらちゃんも美智留ちゃんの言葉に同意する。
ヤバい……泣きそう……。
こんなにも私を想ってくれている友人がいる。
仲良くするようになってまだひと月も経っていないのに……。
《分かったよ。ありがとう、ちゃんと考えてみる》
と、初めて美智留ちゃん達に対してスタンプを使った。
泣いているウサギのスタンプ。
彼女たちの言葉に、感動したってことを少しでも伝えたくて。
そうしたらさくらちゃんからウサギを慰めているクマさんのスタンプが届いた。
美智留ちゃんからは可愛い女の子がファイト! と励ますスタンプが届く。
どれも可愛くてフフッと笑っていると、美智留ちゃんからメッセージも届いた。
《それにさ、日高だって灯里が止めてって言ったら離れてくれたんでしょう? 強引なのかも知れないけれど、ちゃんと灯里の事大事に思ってるってことなんじゃない?》
「あ……」
確かに、本気で嫌なことはされていない。
頭の中に今日のお昼の時の日高くんの顔が浮かぶ。
『もしかして避けられてんのかな、と思った』
そう言って安堵していた日高くん。
それは避けられるかもしれないと思ってたってことで。
避けられるかもしれないことをしたって自覚はあったってことで。
最初のキスの事、少しは反省してるのかな?
強引な態度だから分からなかったけれど、日高くんは本当に私のことを好きでいてくれて、彼なりに大事に思っていてくれていたのかもしれない。
多分、私が私を一番大事にしていなかったんだ。
「私、ダメだなぁ……」
反省しなきゃな。
《そうだね。それも含めて、ちゃんと向き合ってみる》
最後にそう返して、二人から頑張ってと返事を貰い、今日の報告を終えた。
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