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三章 中間テストと告白
テスト勉強③
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可愛い子供と可愛いさくらちゃんを見れて何だかほっこりした気持ちになった昼食。
そのホカホカした気持ちは次の目的地のカフェまで続いた。
――そう、カフェまでは続いた。
その後空いてきたカフェを見つけてみんなで入って座ったんだけれど……。
「ん? 倉木、ここの公式間違ってるぞ?」
どういうわけか私は日高くんの隣に座ることになっていた。
くっつかれてはいないけれど、確実に距離が近い。
どう対応すればいいのか結論も出ていないのに、こんなに近い距離とか何だか困る。
しかも日高くんは私が思っていたより勉強が出来る様で、さっきからちょくちょく間違いを訂正された。
そしてその度に距離が縮まって、以前より血色が良くなった唇が視界に入る。
意識しない様にと目線をノートに集中させるけれど、なかなか難しい。
そうして何回目かの訂正をされた後、彼のノートの端を見せられた。
そこには『俺の事意識してんの?』と書かれている。
「っ!」
モロバレだったらしい。
こうなったらもう直接聞いてやる。
声に出したい気持ちではあったけれど、ここでそんなことをすれば皆に聞こえてしまう。
私もノートの端を使って日高くんに見せた。
『どうしてキス何てしたの⁉』
『ご褒美って言っただろ?』
『だから、どうしてあれがご褒美になるの? もしかして私をからかって楽しんでる⁉』
『まあ、それも間違っちゃいねぇな』
やっぱりからかって楽しんでたのか!
腹立たしくて頬を引きつらせていると、日高くんはもう一言続けて書き足した。
『でも、本気だ』
本気?
本気でからかってるってこと?
訳が分からなくて彼の顔を見ると、そこにはからかいの色は無くとても真剣な表情。
からかってるわけじゃない?
でもそれなら本気って、何が?
考えても分からない。
それなのに日高くんは真剣に見つめて来る。
だから私は。
「ごめん、ちょっとトイレ」
その視線に耐えきれなくて、逃げた。
で、逃げて来たのは良いけれど、ずっとトイレにいるわけにもいかない。
でも戻っても同じ事の繰り返しにしかならないだろう。
どうしよう、と途方に暮れてトイレの手洗い場の鏡と睨めっこしていると声が掛けられた。
「灯里? 大丈夫?」
「美智留ちゃん……」
「午前中よりも様子がおかしかったけど、どうしたの? 日高と何かあった?」
「っ!」
何で日高くんが原因って気付かれちゃったんだろう。
いや、美智留ちゃんは結構みんなの事よく見てるし、それで私を気に掛けてくれてたなら気付いてもおかしくないか。
多分私、結構不審な動きしてたと思うし……。
思い返すとそんな気がする。
「やっぱり日高か……。何されたか聞いていい?」
「そ、れは……」
つい口籠る。
何されたかって、キスされたんだけど……。
い、言えるわけがない!
心配されてるのは分かるけど、恥ずかしくて簡単には言えないよ!
「……言えない様なことされたの?」
答えられずにいると、美智留ちゃんの声が固くなった。
あれ? これ、何か脅されてるんじゃないのって感じに思われてる?
「ち、違うの!」
日高くんが悪い人みたいに思われそうで慌てて止めた。
いやまあ、本当は元総長だし今でも本性は不良っぽいけれど。
でも悪い人では無いから!
「恥ずかしくて言えないだけだからっ!」
何とかそう言うと、美智留ちゃんは目をパチクリ。
そして心配そうだった顔がニヤァと変わる。
あ、これはこれでマズかったかも……。
「ふーん。恥ずかしいだけかぁ」
「えっと、その……」
「恥ずかしいだけなら、今は無理でも後で話してくれるよね?」
ニッコリと笑顔に圧を感じる。
これはこれで脅されてるような……。
「ね?」
念を押された。
「う……うん……」
「良かった。じゃあまた日を改めて聞くから」
そこでパッといつもの笑顔に戻る辺り美智留ちゃんはしたたかだ。
でも良かったのかも知れない。
何でキスしたのか、日高くんに直接聞いても更に困惑することになったから。
相談、してみよう。
日を改めてっていうのも助かる。
秘密のことは話せないから、話せる事と話せない事を整理する時間も欲しいし。
「まあ、とにかく今は戻ろうか」
フッと優しい表情になった美智留ちゃんはそう言って続けた。
「席は私と交換してあげるから。日高の隣に座るの気まずいんでしょ?」
「美智留ちゃん……」
私の様子がおかしい事に気付いて追いかけてきてくれたり、その原因をちょっと強引だったけど聞き出そうとしてくれたり。
そして詳しくは分からなくても日高くんが原因だと知って席を変わるって言ってくれたり。
感動で少し涙が滲んだ。
でもそれを瞬きで引っ込めて、感謝だけを伝える。
「美智留ちゃん、ありがとう」
戻ると、美智留ちゃんは早速席を代わるよう言ってくれた。
「日高、あんた結構頭良いんでしょ? ちょっと教えてよ。工藤が隣だとこっちが聞かれてばかりではかどらないのよ」
そう言って、私と席を代わる。
「えー、それ言い方ひどくね?」
と工藤くんは文句を言いつつも笑っていた。
日高くんは明らかに不満顔だったけれど、みんながいる前ではいつもの様な態度が取れないからか素直に応じた。
そんなこんなで何とか今日の勉強会は乗り越えた。
家に帰ると、美智留ちゃんからメッセージが届く。
『明日のお昼は女子だけでご飯食べよ!』
と。
そのホカホカした気持ちは次の目的地のカフェまで続いた。
――そう、カフェまでは続いた。
その後空いてきたカフェを見つけてみんなで入って座ったんだけれど……。
「ん? 倉木、ここの公式間違ってるぞ?」
どういうわけか私は日高くんの隣に座ることになっていた。
くっつかれてはいないけれど、確実に距離が近い。
どう対応すればいいのか結論も出ていないのに、こんなに近い距離とか何だか困る。
しかも日高くんは私が思っていたより勉強が出来る様で、さっきからちょくちょく間違いを訂正された。
そしてその度に距離が縮まって、以前より血色が良くなった唇が視界に入る。
意識しない様にと目線をノートに集中させるけれど、なかなか難しい。
そうして何回目かの訂正をされた後、彼のノートの端を見せられた。
そこには『俺の事意識してんの?』と書かれている。
「っ!」
モロバレだったらしい。
こうなったらもう直接聞いてやる。
声に出したい気持ちではあったけれど、ここでそんなことをすれば皆に聞こえてしまう。
私もノートの端を使って日高くんに見せた。
『どうしてキス何てしたの⁉』
『ご褒美って言っただろ?』
『だから、どうしてあれがご褒美になるの? もしかして私をからかって楽しんでる⁉』
『まあ、それも間違っちゃいねぇな』
やっぱりからかって楽しんでたのか!
腹立たしくて頬を引きつらせていると、日高くんはもう一言続けて書き足した。
『でも、本気だ』
本気?
本気でからかってるってこと?
訳が分からなくて彼の顔を見ると、そこにはからかいの色は無くとても真剣な表情。
からかってるわけじゃない?
でもそれなら本気って、何が?
考えても分からない。
それなのに日高くんは真剣に見つめて来る。
だから私は。
「ごめん、ちょっとトイレ」
その視線に耐えきれなくて、逃げた。
で、逃げて来たのは良いけれど、ずっとトイレにいるわけにもいかない。
でも戻っても同じ事の繰り返しにしかならないだろう。
どうしよう、と途方に暮れてトイレの手洗い場の鏡と睨めっこしていると声が掛けられた。
「灯里? 大丈夫?」
「美智留ちゃん……」
「午前中よりも様子がおかしかったけど、どうしたの? 日高と何かあった?」
「っ!」
何で日高くんが原因って気付かれちゃったんだろう。
いや、美智留ちゃんは結構みんなの事よく見てるし、それで私を気に掛けてくれてたなら気付いてもおかしくないか。
多分私、結構不審な動きしてたと思うし……。
思い返すとそんな気がする。
「やっぱり日高か……。何されたか聞いていい?」
「そ、れは……」
つい口籠る。
何されたかって、キスされたんだけど……。
い、言えるわけがない!
心配されてるのは分かるけど、恥ずかしくて簡単には言えないよ!
「……言えない様なことされたの?」
答えられずにいると、美智留ちゃんの声が固くなった。
あれ? これ、何か脅されてるんじゃないのって感じに思われてる?
「ち、違うの!」
日高くんが悪い人みたいに思われそうで慌てて止めた。
いやまあ、本当は元総長だし今でも本性は不良っぽいけれど。
でも悪い人では無いから!
「恥ずかしくて言えないだけだからっ!」
何とかそう言うと、美智留ちゃんは目をパチクリ。
そして心配そうだった顔がニヤァと変わる。
あ、これはこれでマズかったかも……。
「ふーん。恥ずかしいだけかぁ」
「えっと、その……」
「恥ずかしいだけなら、今は無理でも後で話してくれるよね?」
ニッコリと笑顔に圧を感じる。
これはこれで脅されてるような……。
「ね?」
念を押された。
「う……うん……」
「良かった。じゃあまた日を改めて聞くから」
そこでパッといつもの笑顔に戻る辺り美智留ちゃんはしたたかだ。
でも良かったのかも知れない。
何でキスしたのか、日高くんに直接聞いても更に困惑することになったから。
相談、してみよう。
日を改めてっていうのも助かる。
秘密のことは話せないから、話せる事と話せない事を整理する時間も欲しいし。
「まあ、とにかく今は戻ろうか」
フッと優しい表情になった美智留ちゃんはそう言って続けた。
「席は私と交換してあげるから。日高の隣に座るの気まずいんでしょ?」
「美智留ちゃん……」
私の様子がおかしい事に気付いて追いかけてきてくれたり、その原因をちょっと強引だったけど聞き出そうとしてくれたり。
そして詳しくは分からなくても日高くんが原因だと知って席を変わるって言ってくれたり。
感動で少し涙が滲んだ。
でもそれを瞬きで引っ込めて、感謝だけを伝える。
「美智留ちゃん、ありがとう」
戻ると、美智留ちゃんは早速席を代わるよう言ってくれた。
「日高、あんた結構頭良いんでしょ? ちょっと教えてよ。工藤が隣だとこっちが聞かれてばかりではかどらないのよ」
そう言って、私と席を代わる。
「えー、それ言い方ひどくね?」
と工藤くんは文句を言いつつも笑っていた。
日高くんは明らかに不満顔だったけれど、みんながいる前ではいつもの様な態度が取れないからか素直に応じた。
そんなこんなで何とか今日の勉強会は乗り越えた。
家に帰ると、美智留ちゃんからメッセージが届く。
『明日のお昼は女子だけでご飯食べよ!』
と。
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