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一章 メイクオタク地味子
閑話 日高 陸斗
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誰もいないアパートに帰ってくると、俺はすぐベッドに横になる。
今日は疲れた。
メシ食ってシャワーも浴びなきゃならねぇけど、その前にちょっと休憩だ。
メガネを取ってローテーブルに軽く放り投げると、邪魔臭い前髪をかき上げる。
「ったく、休みの日までこんな格好しなきゃなんねぇとか……」
愚痴ったけれど、それでも最初のジェットコースター以外は中々楽しめたし、悪い事ばっかりじゃなかった。
普通の学生とつるむのは面倒だったが、花田辺りなんかは面倒見が良いから勝手に色々やってくれて楽だったなぁ。
工藤はちょっと面倒臭ぇけど、大体花田が間に入ってくれるから面倒なことにはならねぇし。
女子チームは、何か色々やってたな。
宮野が花田を好きなのは今日の出来事で何となく察した。
それを田中がフォローしてて……女子って何であんなに恋愛に力入れられるんだろうな、不思議だ。
しかも倉木まで巻き込んでやがったし。
そうして倉木の顔を思い浮かべてフッと笑いが漏れた。
「あいつ、あんなに面白そうな奴だったとはな」
学校では友達もいなさそうな地味子にしか見えなかった。
肩までの黒髪で黒縁メガネを掛けた地味な女。
それくらいの認識だった。
他にはせいぜい、地味男をやってる俺とセットにされることがあったからうぜぇなーと思ってたくらいか。
それがまさかあんな面白いヤツだったとは。
お化け屋敷でのケンカの後。
俺の顔に見惚れてる様だったから、そのまま誘惑して黙っててもらおうかと思ったら……。
『すっごくもったいない!』
「……くはっ!」
言われた瞬間は呆気に取られたけど、思い返すと笑いしか出てこない。
確かに一人暮らしになったせいもあって、食事も三食取れてればいいと思って栄養面なんか考えてなかったし、うるさい母親もいねぇから時間も気にせず夜更かしも普通にしてた。
言われてみれば肌が荒れたりしてもおかしくない生活はしていたなと思う。
でもそれでも顔の造りは変わってねぇんだから、カッコイイと思って多少見惚るくらいするだろう? 普通は。
その普通が通用しなかったことが面白い。
しかも俺のケンカする姿見た後だってのに、大して怖がらずに交換条件を出してきやがった。
「つまらねぇ学生生活を続けなきゃならねぇと思ってたが、少しは面白くなりそうだ」
そう言って口端を上げると、丁度SNSのメッセージ着信音が鳴った。
ポケットに入れていたスマホを取って画面を見ると倉木の名前。
そういえば帰り道でふと思いついたことを送ってみたんだった。
メイクさせてなんて意気込んでたけど、そんなんどこでやるんだ?
学校は当然としても、その辺の店や路上だと俺が偽地味男だってすぐバレちまう。
俺が考えることじゃねぇから丸投げする感じでメッセージを送ってみたけど……。
どうするんだろうな?
そう思ってメッセージを開く。
画面に現れた文章を読んで、俺は呟いた。
「……おいおい、マジかよ?」
今日は疲れた。
メシ食ってシャワーも浴びなきゃならねぇけど、その前にちょっと休憩だ。
メガネを取ってローテーブルに軽く放り投げると、邪魔臭い前髪をかき上げる。
「ったく、休みの日までこんな格好しなきゃなんねぇとか……」
愚痴ったけれど、それでも最初のジェットコースター以外は中々楽しめたし、悪い事ばっかりじゃなかった。
普通の学生とつるむのは面倒だったが、花田辺りなんかは面倒見が良いから勝手に色々やってくれて楽だったなぁ。
工藤はちょっと面倒臭ぇけど、大体花田が間に入ってくれるから面倒なことにはならねぇし。
女子チームは、何か色々やってたな。
宮野が花田を好きなのは今日の出来事で何となく察した。
それを田中がフォローしてて……女子って何であんなに恋愛に力入れられるんだろうな、不思議だ。
しかも倉木まで巻き込んでやがったし。
そうして倉木の顔を思い浮かべてフッと笑いが漏れた。
「あいつ、あんなに面白そうな奴だったとはな」
学校では友達もいなさそうな地味子にしか見えなかった。
肩までの黒髪で黒縁メガネを掛けた地味な女。
それくらいの認識だった。
他にはせいぜい、地味男をやってる俺とセットにされることがあったからうぜぇなーと思ってたくらいか。
それがまさかあんな面白いヤツだったとは。
お化け屋敷でのケンカの後。
俺の顔に見惚れてる様だったから、そのまま誘惑して黙っててもらおうかと思ったら……。
『すっごくもったいない!』
「……くはっ!」
言われた瞬間は呆気に取られたけど、思い返すと笑いしか出てこない。
確かに一人暮らしになったせいもあって、食事も三食取れてればいいと思って栄養面なんか考えてなかったし、うるさい母親もいねぇから時間も気にせず夜更かしも普通にしてた。
言われてみれば肌が荒れたりしてもおかしくない生活はしていたなと思う。
でもそれでも顔の造りは変わってねぇんだから、カッコイイと思って多少見惚るくらいするだろう? 普通は。
その普通が通用しなかったことが面白い。
しかも俺のケンカする姿見た後だってのに、大して怖がらずに交換条件を出してきやがった。
「つまらねぇ学生生活を続けなきゃならねぇと思ってたが、少しは面白くなりそうだ」
そう言って口端を上げると、丁度SNSのメッセージ着信音が鳴った。
ポケットに入れていたスマホを取って画面を見ると倉木の名前。
そういえば帰り道でふと思いついたことを送ってみたんだった。
メイクさせてなんて意気込んでたけど、そんなんどこでやるんだ?
学校は当然としても、その辺の店や路上だと俺が偽地味男だってすぐバレちまう。
俺が考えることじゃねぇから丸投げする感じでメッセージを送ってみたけど……。
どうするんだろうな?
そう思ってメッセージを開く。
画面に現れた文章を読んで、俺は呟いた。
「……おいおい、マジかよ?」
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