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不測の事態④
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穏やかな雰囲気の、少々浮ついた人物。
それが晋以という男への認識だった。
だが、今見上げている男は穏やかさなど無く、浮つくどころか抜き身の刃のような鋭利な雰囲気を持っている。
何より、明凜を見下ろし笑う顔は、嗜虐的に歪んでいた。
「蘭から来た侍女殿。元より間者の可能性はあったが、初めて会ったときあなたは私を避けようとした。こちらが避けようとしたのにぶつかってしまったからね」
「っ!」
「あの身のこなしはただの侍女じゃない。すぐに確かめようと逢い引きの体で誘い出そうとしたが、令劉様に邪魔されてしまったからなぁ?」
あのときから疑われていたとは思わず明凜は驚く。
同時に自分の浅慮さに臍を噛んだ。
(とっさに動いてしまったから……もっと完璧に侍女を装わなければならなかったのに)
ギリ、と奥歯を食いしばる。
悔しさと、今後の自分がどうなるかという恐怖に耐えるために。
今の晋以は明凜と同じく身軽な格好をしている。
宦官の袍ではなく、明らかに明凜と同業と分かるものだ。
同じように暗殺の技を身につけているのだとすれば、明凜の素早さでどうにかなる相手ではない。
そんな相手に馬乗りになられている状況は、明らかに明凜にとって分が悪かった。
このまま殺されてもおかしくは無い状況。
だが、すぐに殺さないところを見ると情報を聞き出したいということだろうか。
(だとしても、話すわけにはいかない以上殺されるのが落ちだわ)
明確な死への道筋が見え、恐怖で歯が鳴らぬよう顎に力を入れた。
それでも僅かな生きる道を探し、晋以から目を逸らすことはしない。
隙を突き、出来るならば口封じのために彼を殺さなくてはならない。
「さて、間者と分かったからには目的を吐かせなくてはな……とはいえ、『誰が言うか』って顔をしているな?」
ニタリと嫌悪しか抱かない笑みを浮かべた晋以は、小刀を取り出しそれを明凜の首元に当てた。
「っ……」
「このまま殺しても良いが……それは色々と勿体ない」
抵抗出来ない明凜を見下ろす晋以は、ねっとりとした視線で明凜を見下ろす。
その視線に内包される嫌悪と不快感に気付くと同時に、晋以は小刀の刃を返し一気に明凜の上衣を裂いた。
「っ!」
薄暗い中白い肌が浮かび上がり、真ん中に一本鮮やかな赤い線が滲み出る。
驚き、恐怖で固まる明凜を楽しそうに見下ろした晋以は顔を寄せ赤い線に舌を這わせた。
「っ、ぃゃっ……」
肌にねっとりと這う生暖かいものに不快感が最高潮に達する。
なんとか逃げ出そうともがくが、僅かに身を捩ることが精一杯だった。
(何を……晋以殿は私をどうするつもりなの!?)
行動だけで言うならば辱められるところなのだろうが、晋以は宦官だ。
令劉という例外はあるが、本来宦官は男のものが無い。
その分性欲も無いはずだが……。
「不思議そうな顔をしているな? 宦官でも性欲が残っている者はいるんだよ。特に俺は暗殺者として残虐性を残すためにあえて性欲も残る方法を取った」
明凜の素肌から顔を上げた晋以が、にやにやと笑みを浮かべながら説明をする。
語りながら自由な方の手で破れた布をかき分け、そのまま膨らみへと進んでいった。
「ぃやっ」
また逃げようと身を捩るが、それすらも押さえつけるように晋以は明凜の肌を強く掴む。
「いっ!」
痛みに顔を歪めると、晋以はとても嬉しそうな……恍惚とした笑みを浮かべた。
「そうそう、その目が見たかったんだ。その美しい翡翠の瞳が恐怖と嫌悪に染まっていくさまはとてもぞくぞくする」
「っ!」
(怖い)
怖くて、恐ろしかった。
令劉に組み敷かれたときとは全く違う。
令劉は同じように明凜を組み敷いていても、触れる手は優しかった。
空色の瞳は、どこまでも明凜を求めていた。
「はぁ……興奮してきたよ。ああ、俺は性を解放するものがないのでね。代わりに色々と噛みつくが頑張って耐えてみると良い」
晋以の様に、遊んでいるかの様な笑みを浮かべることなど無い。
(触れてくれるのが、令劉様なら……)
それならむしろ嬉しかったのでは無いだろうかと、涙が零れた。
だが、零れ落ちる前に突如房の戸が開き、外気が入り込んだ。
『っ!?』
第三者の気配に、明凜と晋以は驚き息を詰める。
直後、何者かが晋以に向かって突進した。
「ぅっ、ぐぅ!」
上に乗っていた晋以が突進した者に捕まり、明凜は急ぎ体を起こし体制を整える。
胸元を隠すように掴み、状況把握のために視線を他の二人に向けた。
壁側で晋以の首を片手で持ち上げていたのは、その身に怒りの炎を宿した令劉だった。
それが晋以という男への認識だった。
だが、今見上げている男は穏やかさなど無く、浮つくどころか抜き身の刃のような鋭利な雰囲気を持っている。
何より、明凜を見下ろし笑う顔は、嗜虐的に歪んでいた。
「蘭から来た侍女殿。元より間者の可能性はあったが、初めて会ったときあなたは私を避けようとした。こちらが避けようとしたのにぶつかってしまったからね」
「っ!」
「あの身のこなしはただの侍女じゃない。すぐに確かめようと逢い引きの体で誘い出そうとしたが、令劉様に邪魔されてしまったからなぁ?」
あのときから疑われていたとは思わず明凜は驚く。
同時に自分の浅慮さに臍を噛んだ。
(とっさに動いてしまったから……もっと完璧に侍女を装わなければならなかったのに)
ギリ、と奥歯を食いしばる。
悔しさと、今後の自分がどうなるかという恐怖に耐えるために。
今の晋以は明凜と同じく身軽な格好をしている。
宦官の袍ではなく、明らかに明凜と同業と分かるものだ。
同じように暗殺の技を身につけているのだとすれば、明凜の素早さでどうにかなる相手ではない。
そんな相手に馬乗りになられている状況は、明らかに明凜にとって分が悪かった。
このまま殺されてもおかしくは無い状況。
だが、すぐに殺さないところを見ると情報を聞き出したいということだろうか。
(だとしても、話すわけにはいかない以上殺されるのが落ちだわ)
明確な死への道筋が見え、恐怖で歯が鳴らぬよう顎に力を入れた。
それでも僅かな生きる道を探し、晋以から目を逸らすことはしない。
隙を突き、出来るならば口封じのために彼を殺さなくてはならない。
「さて、間者と分かったからには目的を吐かせなくてはな……とはいえ、『誰が言うか』って顔をしているな?」
ニタリと嫌悪しか抱かない笑みを浮かべた晋以は、小刀を取り出しそれを明凜の首元に当てた。
「っ……」
「このまま殺しても良いが……それは色々と勿体ない」
抵抗出来ない明凜を見下ろす晋以は、ねっとりとした視線で明凜を見下ろす。
その視線に内包される嫌悪と不快感に気付くと同時に、晋以は小刀の刃を返し一気に明凜の上衣を裂いた。
「っ!」
薄暗い中白い肌が浮かび上がり、真ん中に一本鮮やかな赤い線が滲み出る。
驚き、恐怖で固まる明凜を楽しそうに見下ろした晋以は顔を寄せ赤い線に舌を這わせた。
「っ、ぃゃっ……」
肌にねっとりと這う生暖かいものに不快感が最高潮に達する。
なんとか逃げ出そうともがくが、僅かに身を捩ることが精一杯だった。
(何を……晋以殿は私をどうするつもりなの!?)
行動だけで言うならば辱められるところなのだろうが、晋以は宦官だ。
令劉という例外はあるが、本来宦官は男のものが無い。
その分性欲も無いはずだが……。
「不思議そうな顔をしているな? 宦官でも性欲が残っている者はいるんだよ。特に俺は暗殺者として残虐性を残すためにあえて性欲も残る方法を取った」
明凜の素肌から顔を上げた晋以が、にやにやと笑みを浮かべながら説明をする。
語りながら自由な方の手で破れた布をかき分け、そのまま膨らみへと進んでいった。
「ぃやっ」
また逃げようと身を捩るが、それすらも押さえつけるように晋以は明凜の肌を強く掴む。
「いっ!」
痛みに顔を歪めると、晋以はとても嬉しそうな……恍惚とした笑みを浮かべた。
「そうそう、その目が見たかったんだ。その美しい翡翠の瞳が恐怖と嫌悪に染まっていくさまはとてもぞくぞくする」
「っ!」
(怖い)
怖くて、恐ろしかった。
令劉に組み敷かれたときとは全く違う。
令劉は同じように明凜を組み敷いていても、触れる手は優しかった。
空色の瞳は、どこまでも明凜を求めていた。
「はぁ……興奮してきたよ。ああ、俺は性を解放するものがないのでね。代わりに色々と噛みつくが頑張って耐えてみると良い」
晋以の様に、遊んでいるかの様な笑みを浮かべることなど無い。
(触れてくれるのが、令劉様なら……)
それならむしろ嬉しかったのでは無いだろうかと、涙が零れた。
だが、零れ落ちる前に突如房の戸が開き、外気が入り込んだ。
『っ!?』
第三者の気配に、明凜と晋以は驚き息を詰める。
直後、何者かが晋以に向かって突進した。
「ぅっ、ぐぅ!」
上に乗っていた晋以が突進した者に捕まり、明凜は急ぎ体を起こし体制を整える。
胸元を隠すように掴み、状況把握のために視線を他の二人に向けた。
壁側で晋以の首を片手で持ち上げていたのは、その身に怒りの炎を宿した令劉だった。
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