異世界タイムスリップ

緋村燐

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異界を渡るマレビト

マレビト③

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「前世の時代に行くためのカギ?」

 オウムみたいにくり返して聞く。
 大人のミチさんからオカルトっぽい言葉が出てきてちょっとビックリしたけど、鏡が勝手に光った時点で不思議な状況になってるもんね。
 とりあえず話を聞こう。

「現世で起こることは前世で起こったことが原因になっていることもあるの。この鏡は、ふれた人が今困っていることの原因が前世にあるのか調べ、その時代に行けるよう導いてくれる」

 流れるように言葉をつむいでいくミチさん。
 落ち着いた声のおかげかな?
 非現実的なことを話されてるのに、すんなりと受け入れることが出来る。

「今日ここに来たということは鏡は光ったのでしょう? 貴方のお母様が鏡にふれて、鏡の持ち主であるアキラが問いかけた。お母様を救うことが出来ると鏡が判断したから、光って教えてくれたの」

 ふんふん、あのときの光ってそういうことだったんだ。

「お母様を救うには前世の時代に行って原因となったものを突き止めて、それを回避かいひしてこなければならないわ」

 鏡から手を離し、真っ直ぐに私を見るミチさん。
 真剣に問いかけてくる目だ。

「アキラは渡り鏡の持ち主だから、時代を渡ってサポートすることは出来るけれど実際に行動するのはあなたになる。……出来るかしら?」
「……」

 なんだか急展開でちょっと頭がついて行けない。

 えっと、まず鏡が光ったから前世の時代に行けばお母さんを助けられるってことだよね?
 で、その時代ではアキラ先輩がサポートはしてくれるけれど私が行動して前世のお母さんを助けなきゃならないってこと?

 頭の中で情報を整理してそこまではわかった。
 でも、そうなると一つ疑問が浮かぶ。

「でも、どうやって前世の時代に行くんですか?」

 まず行けるのかが分からない。
 いくら不思議なことが好きな私でも想像できないよ。

「それは……こちらにある鳥居をくぐるのよ」

 そう言って立ち上がったミチさんは、背後のふすまを開いてみせる。
 隣もタタミの部屋だったけど、そこには普通の家の中にはない大きな赤い鳥居があった。

「この鳥居は時空のトビラです。門番である私がトビラを開きます。渡り鏡を持ってここを通ると、その時代への道ができるのです」
「……」

 家の中に人が通れるくらいの鳥居があるっていう光景にポカンとしちゃったけど、とりあえず理解はした。

 正直半信半疑だったけど、非科学的なことはもともと好きだし。
 何より不思議なことはもう起こってる。

「ラナさん、俺は君を連れて行って手助けすることしか出来ない。サポートは頑張るつもりだけれど、行動を起こすのはラナさんだ」

 隣に座っているアキラ先輩が真剣な様子で話しかけてくる。
 今は地味な外見だけど、その真剣さでカッコよく見えた。

「それでも頑張れるかな?」
「……もちろんです!」

 悩んだのは数秒。
 私はすぐに決意して大きくうなずいた。

 アキラ先輩もミチさんもウソや冗談を言ってるようには見えない。
 鏡が光ったのは本当だし、お母さんを助ける道があるっていうなら迷わずその道を選ぶよ!

 お母さんの前世の時代なんてどんなところなのかとか不安はあるけど、アキラ先輩もサポートしてくれるっていうし。
 一人じゃないなら、きっとなんとかなるはず!

「そうか、わかった」

 アキラ先輩はホッとして表情をゆるめた。
 その顔はどっちかっていうとかわいくて、私もヘラッと笑っちゃった。

 そんな私たちにミチさんが声をかける。

「では、さっそく行ってきなさい」
「……へ?」
「時間の心配はしなくても大丈夫ですよ。いわゆるタイムスリップですからね、帰ってくるのはこの時間になります」
「え? い、今!?」

 なにか準備とかして、早くても明日とかだと思ったのに!

「鏡さえあれば事足ことたりるからね。準備とかも特に必要ないし、早い方が良いだろ?」

 私の考えを読んだかのようにそう言ったアキラ先輩は、鏡を巾着袋に戻して立ち上がる。
 そして一度部屋を出て行ったかと思うとすぐに私とアキラ先輩のくつを持って戻って来た。

「ほら、行こう」
「なっなっなっ!?」

 いくら私が順応性が高くても急展開すぎてすぐには状況に追いつけないよ!

 心の中で文句を言う私。
 でも、お母さんを助けるために頑張るって決めた。
 だから、急いで覚悟を決めて自分のくつを受け取って差し出されたアキラ先輩の手を取る。

「わかりましたよ!」

 立ち上がって、覚悟をしめすように先輩の手をギュッと握った。
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