fragile〜はかなきもの〜

FOKA

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4話

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 ある者は険しい山々を超え、またある者は大海原を超えこの街へやって来る。
金、権力、名声。この街で成功したならばあなたの運命は大きく変わるでしょう。
ようこそ貿易都市ルヘルムへ。あなたの成功を祈っております。


 「桜花ー、ヒマダヨ」
ワトスがこれを言うのは何回目だろう。今はルヘルムに入るための検問待ちをしているところなのだが、かれこれ半日近く待っている。
通告証を持っていればすんなりと入ることができるのだが、持っていない者は新しく通告書を作成しなくてはならない。現在はこの作成列に並んでいる。作成に時間が掛かる訳ではない。むしろ作成などものの数分で終わってしまう。人数が多いのだ。さすがルヘルムといったところである。
「もう少しだから大人しくしてろよ。あと絶対にマントと頭巾は取るな」
この街が獣人嫌いだと言うことを聞きここに来る前に手に入れておいた。
故郷の村では皆んながワトスに優しかったし、姿が違うと気にする奴なんていなかったのに。正直獣人が嫌いなんて言う奴がいるとは信じられなかった。

 外はそろそろ日が落ちようとしている頃、あと2組ほどで自分たちの番となりそうだった。隣にいるワトスは死んだような目をしている。顔にも布を巻いているのであまり表情は見れないが殆ど死んでいる。
やっと自分たちの番が回って来た。役人が街に来た目的、滞在期間などを聞きながら通告証を作成している。ワトスの身なりを突っ込まれるかと思ったが特に気にしていなかった。よく見ると役人も死人のような顔をしていてそれどころではないように見える。ほんの数分で通告書が作られ手渡された。あれだけの時間を待っていたので肩透かしを喰らったような気分だった。
 「ワトスお待たせ。今日はもう遅いから明日クリスタルを換金しに行こう」
先ほどまでの死んでいた目は水を得た魚のように生き生きとしていた。
「オナカスイタ、ゴハンゴハン!」
「先に今日泊まる宿を探してからな」
先ほど通告書と一緒に貰った街の地図だと宿街は西区にあるらしく、今は南区の正面入り口。あたりは日が沈み暗くなって来た。道に迷わぬように駄々をこねるワトスを引きずりながら西区を目指す。街には街灯があり、日が沈んでも昼のように明るかったことに驚いたが人の多さにも驚いた。

 西区入口には大型の受付所が設けられており多くの商人がここで今夜の宿を探しているようだった。荷物をワトスに預け入口近くに待たせおき受付所に入る。
中は思っていたよりも広く宿の受付以外にも飲食スペース、情報版などの施設があった。長旅の影響なのか疲れており早くベットに飛び込みたい気分だった。とりあえず今は宿を先に取ろう。
受付に行くと白髪の女性がニコリと笑い、ようこそ、宿をお探しですか?っと対応してくれる。
「はい、宿を探してるんですけどこの街は初めてなのでどうしたらいいかと」
実は都会の女性にちょっとドキドキしている。ここに来るまでもすれ違う女性を見てはドキドキしていた。
「ルヘルムは初めてですか。でしたら少しご説明させて…」
受付嬢が何か言っているがそれよりも胸見えすぎだろ。肌の露出も多いし。
ワトス以外、村には若い女性なんていなかったし、これは俺には刺激が強い。
「簡単ですが説明は以上となります。ご質問はありますか」
胸のホクロとか反則すぎる。このホクロあるなしではこの胸の魅力は天と地ほどの差ができてしまうだろう。しかもこの受付所は人も多く結構暑かったりする。
するとどうだろう。ただでさえこのホクロのせいで果てしない魅了を醸し出しているのに、滴る汗が首、鎖骨を通って谷間に流れいく。これは灼熱の大地に現れたオアシス。ホクロをオアシスに咲く一輪の花なら、滴る汗は花のためだけにある湖に違いない。
「あの、大丈夫ですか。」
受付嬢がこちらの顔を覗き込んで来たため胸が見えなくなってしまった。
「あ、はい、大丈夫です」
ちょっと声が浮つく。
「ではこちらの用紙に予算と人数をお書きください。もし荷物が多いようでしたらこちらの備考欄に詳細を書いていただければ荷物場がある宿をお探しいたします」
お礼を言いつつ、受付嬢から用紙を貰い書こうとするも手汗が酷く書くのに苦労した。

 入口で待たせていたワトスと合流し紹介してくれた宿へと向う。余り手持ちが多くなかったので宿泊街でも中心街ではなく少し離れた宿を紹介してくてた。
「アツカッター、シッポモグジュグジュ、キモチワルイ。桜花、ワトスガサキ二ミズアビスル」
宿に到着するとワトスはすぐに身に付けていたマントや頭巾を脱ぎ捨て部屋に付いていた水浴び場へ直行した。普段は言われないと風呂に入らないのに珍しいな。普段薄着だから余計に辛かったのだろう。
ワトスの脱ぎ捨てた衣服を拾い上げ、回る水洗浄機へと放り込む。
ふと水浴び場へ視線をやると薄い布越しにワトスの影がくっきりと写っていた。
普段一緒に寝たりしているがワトスは家族だし、変な感情を抱いたことはなかった。風呂上りのワトスを見ても俺は直視できる。はず。なのにこれはどういうことだ。布越しに写るこの体のライン、まるっとしたヒップ、胸の頂点の突起物。あれ、おかしいな。またドキドキしてきた。
ワトスが体の向きを変える。揺れる胸。今この場はライトアップされた劇場だ。
視線はこの劇場の舞台の上に立つ主役に向いている。目が逸らせない。
舞台の端に移動を始めるワトス、いやこの舞台の主役はクリスだ。
クリスが一歩踏み出すと、しなやかな髪は水を濃艶に弾き、胸の突起物から滴となってこぼれ落ちる蜜、お尻から伸びる濡れた淫々しい魅惑の尻尾。
俺もこの舞台で君と恋に落ちたい。今いくよクリス!
布を潜り洗い場へ入るとワトスがいた。クリスはいなかった。
「桜花モイッショ二ミズアビシタイノカ?」
「クリスはどこに行った」
「クリス?タベモノカ!」
俺は水浴び場を出る。後ろからキョウノゴハンハクリス!っと言っているワトスが上機嫌に体をブルブルとさせ体の水を飛ばしていた。

 夕食を食べ終え寝床に入る。旅の疲れなどがあってかワトスはすぐに寝てしまった。俺もすぐに寝れるとばかり思っていたがまだドキドキが収まらないでいたためなかなか寝付けない。仕方がないので外を散歩することにした。
外は涼しく、まだ宿泊街の中央の方は明るかった。明るい中央とは反対側へフラフラしていると街の雰囲気が変わってきた。活気がなく建ててある家もどこかボロかったりする。
気がつくと結構奥の方まで来てしまっていた。するとどこからか男の笑い声がしてくる。よかった道に迷ってしまい宿まで帰れなくなっていたので助かった。
声のする方へ近づくと、どうやら3人くらいいるらしい。路地の角からそっと頭を出し見渡すと男達を発見した。
よかったよかった見つかった。早速男達に声をかけようと角から出ようとした瞬間、男達の隙間から獣人の女の子が見えた。
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