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2.離縁してくれますか?
しおりを挟むその頃のリュークはというと。
「リュークゥ。結婚したから、会えなくなるんじゃないかと思って心配だったけどぉ、変わらず愛してくれて嬉しいわぁ。」
「当然じゃないかサラン。君のような美しい女性を手放すわけないだろう?」
そう言って、リュークはサランの膝に頭を乗せた。
「まあ、嬉しい。わたしを愛してる?」
「もちろんだよ。サラン。」
サランは10人以上いるリュークの愛人にすぎないが・・・リュークは笑みを浮かべた。
(ああ、なんでも俺の思い通りだ。ハクストル家の娘も手に入れた。地位も財産も、何も怖いものはない。)
愚かにもユナとかいう娘は俺の裏切りに気づくことなく、いつもヘラヘラと笑っている。
今は、まだ幼すぎて手を出すつもりはないが・・・いつかは相手をしてやってもいい。そんなことを考えながら、リュークは愛人と週末を楽しんでいた。
◇◇◇
週末が終わり、リュークが家に変えると屋敷の執事が彼の元にやってきた。
「リューク様、ユナ様に注意してほしいことがあるのですよ!」
執事は顔をしかめて、リュークに尋ねた。
「ユナ様がこの家のお金で毎週末豪遊しているのをご存知ですか?」
「なんだと?!」
確かにユナがこの家に来たときに、好きに使えと小切手を渡していたが、まさか執事が苦言を言うほど豪遊しているとは思わなかった。
執事から明細書をみせてもらうと、ユリの使ったお金は信じられないほどの大金だった。
(あの箱入り娘め!)
「ユナはどこだ?!」
そうリュークが叫ぶも、ユナの姿は見つからない。
「ユリ様は毎週、各地に旅行に行かれているのですよ・・・リューク様が家を留守にしている間に。」
執事がじろりとリュークを見上げる。
「何だお前は!俺のせいとでも言いたいのか?!」
「いいえ。そういうわけでは・・・」
「だいたい、家にいるのはお前なのだから、お前がユナを止めるべきだろう?!」
腹がたったリュークが執事の胸ぐらをつかみ上げたとき
「ただいま帰りましたーーー!」
麦わら帽子を被ったユナが家に帰ってきた。その肌はこんがりと焼けている。
「おい!ユナ!!」
リュークがユナを怒鳴りつけるも、ユナはにっこりと笑って首をかしげた。
「あら、旦那様。いたんですか。今週は早かったですね。」
リュークは大きく息を吸った。
本当なら、ユナは甘やかしていたいが・・・あの豪遊は見過ごせるものではない。
「ユナ、話があるんだが座ってくれないか。」
ユナは大きく目を見開いた。
「遂にですか!」
(なぜそんなに楽しそうなんだ。このガキめ。)
無邪気なユナを見ていると、怒りが湧いてくる。
「最近、毎週旅行に行っているそうだね?」
「はい!今週は隣国の海に行ってきました。たのしかったですよ~。」
「それは何よりなんだが・・・毎週旅行となると、流石に問題だ。君の旅行にかかったお金は誰が払っていると思う?君が思っているより、沢山のお金を使っているんだよ。もう少しお金を使うのを控えてくれないか?」
ユナは頬に手を当てる。
「嫌だと言ったら?」
「は・・・」
「わたしと離縁してくれますか?」
ユナは笑みを絶やさずにリュークに言った。
(こいつは何を言っているんだ・・・?)
「そんなこと許されるはずないだろ!いい加減にしろ!」
「私は本気ですよ。リューク様。あなたがいつ私に離縁を申し出てくれるか待っていたのですが、いつまで経っても愛人と遊んでばかり・・・。」
「は・・・。」
(バレていたのか!)
ユナはやれやれと首を振った。
「他に愛する女がいるなら、すぐに私に離縁を言い渡すだろうと思っていましたが、どうやらそう単純な話じゃないようですね。」
リュークの背に冷や汗が伝った。
ユナはハクストル家の令嬢。ユナがいなくなれば、ハクストル家からの支援だけでなく、社交界での信用を失う。
「ま、待ってくれ!金なら自由に使っていい!浮気もやめる!だから、急に離縁は待ってくれないか・・・!」
ユナは口を抑えてふふふ、と笑った。
「それはできません。リューク様。
もうすでに、あなたには私の旦那様でいる資格はないのですよ。実のところ、私達は"離縁"ですらないのです。」
「ど、どういうことだ?!」
「私とリューク様の結婚は、まだお試し期間だったのですよ。私に相応しい旦那様なのか・・・審査されていたのは、あなたですよ。リューク様。」
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