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25.女王は国を売ります
しおりを挟む「アルフレッド。」
部屋を出た私はアルフレッドに声をかける。
ドアを睨みつけて仁王立ちになっていたアルフレッドは、私を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
「シアラ様!!だいじょうぶですか?あ!!クーズマに泣かされたんですか?!」
目元の涙の跡に気がついたアルフレッドが、私の頭を勢いよく撫でる。
「だいじょうぶよ。」
私はその手をそっと、掴んだ。
「私が、貴方を好きだっていう話をしていたの。」
早口で呟く。恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。
「シアラ様!!」
後ろからクーズマが顔を出す。
「ま、別に諦めたわけじゃないけどな。ほら、とっとと入れ!なんか相談があるんだろ?」
◇◇◇
「実はーー。」
私はクーズマに借金取りによってカーシャさんが誘拐されてしまったことを話した。
現在取り返しがつかないほど借金が膨らんでいることや、その資金源となるはずの採掘場の復興が進んでいないこと。それから、シアラがオークリィに婚約破棄されてしまったことも全て伝えた。
「なんでそこまでなるまで俺に相談しなかったんだ?」
頭を抱えるクーズマをアルフレッドが不機嫌な顔で呟く。
「友達に迷惑をかけたくないと、シアラ様はおっしゃっていました。」
シアラは優しくて不器用な子だったけど、私は少しずる賢い。
ここに来る前に、一つ良いアイデアを思いついていた。
「クーズマ様。お願いがあります。」
私はまっすぐにクーズマを見つめた。クーズマが少し嬉しそうな顔をする。
「おう!何でも言え!」
大きく深呼吸をして、私は言った。
「ルカドル国を、借金ごと全て買い取ってくれませんか?」
私の言葉に、アルフレッドとクーズマが黙って顔を見合わせる。
「えーと?」
ひたすら笑顔を浮かべていたクーズマの顔に戸惑いが浮かぶ。
私はにっこりと笑った。
「ルカドル国の所有権、土地、金坑の権利を全てクーズマ様に差し上げます。ちなみに、ルカドル国の王様の座も、クーズマ様のものです。
その代わり、借金も引き受けてください!」
私は両手をテーブルについて、クーズマにお願いをした。
まるで悪徳業者になった気分だ。
だが、クーズマにとって悪い話では無いだろう。
金塊が出る採掘場の復活にお金がかかるとしても、それさえ乗り切れば大金持ちになれるはずだ。
きっと今ルカドル国に必要なのは、圧倒的財力。クーズマならばきっと、この国を豊かにできるんじゃないだろうか。
「借金、いくら?」
アルフレッドがクーズマに耳打ちする。
「ふーん。」
クーズマは少し考え込んだあと、グーサインを出した。
「俺の持ってるお金、全部使えばこの国を買えそうだ!ちょっとの間、お菓子を買う金には困りそうだが、まあ父さんにそのお金は借りるさ。」
と、クーズマが言う。流石、大国デミオン国の皇太子。ポケットマネーでルカドル国の借金を返せるなんて、大金持ちである。
「ほんとですか!!ありがとうございます!!」
あっさりと了承してくれたクーズマ。
あまりの嬉しさに、私はテーブルの下でアルフレッドの手をぎゅっと握った。
「ああ。シアラの頼みだし、断る理由がないさ。あの金塊の鉱山は、復活出来れば最高の資産だしな。父さんに伝えに行こう!」
意気揚々と立ち上がったクーズマだが、私達を見て口を尖らせた。
「言っとくけど、振られたばっかりなんだからあんまり俺の前でいちゃいちやすんな!」
私とアルフレッドは顔を見合わせた。
「くっそー!」
クーズマは顔をしかめる。
(ごめんね。まだ想いが通じ合ってすぐなのよ。)
心のなかで、そっと謝った。
◇◇◇
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