上 下
1 / 1

婚約破棄するしかないのよ。

しおりを挟む




「ねぇ、



 婚約破棄するか、


 私を殺して

 

 復讐を達成するか。


 フリート、貴方は
 

 どっちがいい?」



私は婚約者のフリート・ロストに

そう尋ねた。



「え、、、?」

フリートは呟き、

その場に立ちつくした。


夕暮れ。

オレンジ色の光に照らされて、

フリートがゆっくり瞬きするのが

よく見えた。


貴方が私に近づいた目的を、

私ははじめから気づいていたのよ。




ずっと、そういう人生だったのだから。


私の本名は

ビビ・ライク。
   

だが、この街で、

私はカヤと名乗っている。


田舎町で、

ひっそりと服を売り


生計を立てていた。


だが、

もうそろそろ

名前と場所を変える必要があるだろう。



私の父は、

10年前、

連続殺人事件の容疑者となった。


それ以来、

私の人生は

逃げてばかりだ。



容疑者となった父の行方は

未だ分かっていない。




「どちらでも、


 好きな方を選んでくれていいのよ?」



私はにっこりと微笑んだ。

私達の結末に

ハッピーエンドなんてないの。




フリートの黒髪が、

彼の表情を隠していた。



「どちらか、、?



 君はどこまで知っているんだ?」



「貴方が、
 
 私の父が起こした連続殺人事件の

 遺族の一人だという事。



 その復讐のために

 私に近づいたこと。



 そして、


 私を殺すための拳銃を


 懐にいつも


 隠し持っていること。」



フリートと出会ったのは、

一年前の感謝祭だった。



彼は私に、

王都から来た商人だと名乗った。



だが、

彼が初めて私を見たときの 

恐ろしい目を私は忘れない。



彼の母、ヒル・ロストは

私の父によって殺された。




彼は、

その復讐をしにきたのだ。



「気づいていて、


 なぜ君は、


 僕から逃げなかったんだい?」




「もう、


 逃げるのを終わりにしたかった。



 貴方ならきっと



 私を殺してくれるだろうと、


 期待したの。」




だが、

そう事は上手く運ばなかった。




彼は少しずつ私に近づき、

私に好意を伝えてきた。





胸には、

拳銃をいつも隠しているくせに、

私にずっと優しくしてくれた。




そして

ついには先週、

私にプロポーズをした。



僕と、結婚してほしい。


彼はそう言った。


 
もう、限界だった。



フリートは顔をあげて

青い瞳で私を真っ直ぐに見つめた。




「ビビ、、。」



「私を、

 これ以上惑わすのはやめてよ!!」


裏切られるのは、

もう慣れっこのはずなのに。



幸せな日々が続く度に、

私の心は悲鳴をあげた。



「婚約破棄して、


 どこか遠くにいくか、



 さっさと私を殺すか、



 ちゃんと決めてよ!」



フリートは

拳銃を隠している

胸のあたりを押さえた。



それから、

少し歩き、

私のすぐ前に来た。



「ビビ。」

私の頬に


右手で触れた。




「ずっと、


 誤解させていて


 すまないかった。」




「何が誤解よ!!」



私は、

左手でフリートの手を弾いた。



だから、優しくしないでって

言ってるじゃない。



「僕が、君の側に来たのは、


 君に復讐するためじゃない。




 君を守るためだ。」





「どういうこと、、?」





「君の父は、


 僕の母を殺した犯人じゃない。」



「え、、?」



「僕が絶対に



 君を救うから。



 だから、



 ねぇ。ビビ。



 婚約破棄しないで、



 僕を待っていてよ。」




--------------------------------------




そしてその一ヶ月後。


ある一人の若手刑事によって、


10年前、王都で起こった

連続殺人事件の真犯人が逮捕された。


若手刑事は、

かつて連続殺人事件で母を失った


遺族の一人だという。



--------------------------------------




「これで、やっと言えのね。



 フリート。」



「なんだい、ビビ。」




「私はずっと


 貴方のことを愛していたわ。」


そう言ったビビは

満面の笑みを浮かべた。




もう、逃げる必要なんてないのだ。



「僕もだよ。ビビ。



 ねぇ、君の



 最高の笑顔が見れて、


 僕は幸せだ。」
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

令嬢が婚約破棄をした数年後、ひとつの和平が成立しました。

夢草 蝶
恋愛
 公爵の妹・フューシャの目の前に、婚約者の恋人が現れ、フューシャは婚約破棄を決意する。  そして、婚約破棄をして一週間も経たないうちに、とある人物が突撃してきた。

酔って婚約破棄されましたが本望です!

神々廻
恋愛
「こ...んやく破棄する..........」 偶然、婚約者が友達と一緒にお酒を飲んでいる所に偶然居合わせると何と、私と婚約破棄するなどと言っているではありませんか! それなら婚約破棄してやりますよ!!

婚約破棄したいって言いだしたのは、あなたのほうでしょ?【完結】

小平ニコ
恋愛
父親同士が親友であるというだけで、相性が合わないゴードリックと婚約を結ばされたキャシール。何かにつけて女性を見下し、あまつさえ自分の目の前で他の女を口説いたゴードリックに対し、キャシールもついに愛想が尽きた。 しかしこの国では制度上、女性の方から婚約を破棄することはできない。そのためキャシールは、ゴードリックの方から婚約破棄を言いだすように、一計を案じるのだった……

婚約破棄をしたいそうですが、却下します

神々廻
恋愛
私は公爵令嬢で一人娘。跡取りは私だけですので婿を貰わ無ければなりません。ですので、私のお母様の親友の伯爵夫人の息子と幼い時に婚約を結びました。 ですけれど、婚約者殿は私の事がお嫌いな様でドタキャンしたり、仮病を使ったりと私の事がお嫌いなご様子。 14歳で貴族の学校に通うことになりましたが婚約者殿は私と話して下さらない。 挙句の果てには婚約破棄を望まれるし....... 私は悲しいです

幼馴染の婚約者は奪われ婚約破棄となりました。

五月ふう
恋愛
「ごめん、アンダーソン。  私やっぱり  貴方と婚約破棄するわ。」 私はソファーの上に正座をした。 私の名前はリリィ・ストラス。 ストラス家の次女で、 皇太子アンダーソンの許嫁だ。 ソファーに足を投げ出して、 本を読んでいたアンダーソンは ぱたんと本を閉じた。 「なんで?」

親からの寵愛を受けて育った妹は、私の婚約者が欲しいみたいですよ?

久遠りも
恋愛
妹は、私と違って親に溺愛されて育った。 そのせいで、妹は我儘で...何でも私のものを取るようになった。 私は大人になり、妹とは縁を切って、婚約者と幸せに暮らしていた。 だが、久しぶりに会った妹が、次は私の婚約者が欲しい!と言い出して...? ※誤字脱字等あればご指摘ください。 ※ゆるゆる設定です。

優柔不断も大概になさいませ

mios
恋愛
優柔不断の殿下を支えてきた公爵令嬢マリアは、殿下から、断罪され、国外追放を言い渡される。

【短編】王子を妊娠した姫は婚約破棄され、破滅の人生を進むことになりました。

五月ふう
恋愛
「その花束を君に渡して、  君にプロポーズしようと  思ってたのに、  レナードが君を  横から奪ったんだ!」 「ジョージ、、、  貴方がいつ私に告白したとしても、  私は応えられなかった。」 「なぜ?」 「それは、  私がレナードを好きだからよ。  分かって、ジョージ。」 「僕には何も分からないよ?!  僕は皇太子で、  レナードは皇太子になれなかった。  それなのになぜ、  僕ではなく  レナードを好きになるんだよ?!」 ジョージは私の両肩を強く掴んだ。 「ジョージ、、  私は友人として、  貴方を尊敬してるわ。  だけど、私は  レナードが好きなの、、!」 「そんなの、理由になってない、、!    君は僕を好きになるべきなのに!!」 「ごめんなさい、ジョージ。」 「だめだ、、、。  そんなこと許さない!」 ジョージは 私の首を強く締めた。 「ジョージ!!  ねぇ、離して!!  誰か!助けて!」 破滅の道は始まっていた。 私は好きになる人を間違えたのかもしれない。

処理中です...