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第十話:大切な人の危機
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「セラ様はお優しい方ですね。ですが、そんな貴方だからこそ、エドワーズ様の求婚を断ることができないのですよ。」
カイルはそう言うと、セラに一歩近づいて呪文を唱えた。
(捕らえられてしまうわ……!)
カイルは魔法を唱えセラを拘束しようとしている。普段ならば、互角に戦えるだろうが、今のセラには魔力が無い。隣の部屋にいるロージィとユリウスはセラの危機に気づいてくれるだろうか。
「私は優しくありません。現にこうして求婚を断っているではありませんか。王子が悲しんでも、まったく気にしませんよ。」
セラはまた一歩後ずさった。カイルの拘束魔法に抵抗できなくなっている。
(なぜ今日に限って……!)
「いいえ。私にはわかります。セラ様は大切な人が危機に陥っていると知れば、きっと求婚を断ることができないでしょう?」
(貴方に何がわかるの?)
「私に大切な人はいません。」
セラの魔力は魔物を引き寄せてしまう。自分の魔力せいでこれ以上誰も傷つけたくない。その一心で、セラはロージィとユリウス以外の人間との関わりを拒んできた。
「そうでしょうか?」
カイルは微笑みを浮かべたまま、セラに一歩近づいた。それからセラの耳に顔を寄せる。カイルの息が耳にかかり、背筋がぞわりとした。だが、魔法によって、セラは動けなくなっている。
カイルは丁寧な口調を止めて、セラにささやく。
「この部屋の隣にいるのは、ユリウスだろう?」
(ユリウスを知っているの……?)
「誰もいないわ。」
セラは嘘をつく。なぜカイルは、隣の部屋にユリウスがいると知っているのか。そして、ユリウスがセラにとって数少ない大切な存在だと気が付いている。
「君はユリウスが危機に瀕していると知っているのか?」
セラは大きく目を見開いた。
「ユリウスの危機……?」
セラはただカイルの言葉を繰り返し、ゆっくりと瞬きをした。
「知らなかったんだな。」
「ユリウスに何が起こっているの?」
「求婚に応じてくれないなら、教えることはできないな。」
セラはカイルを睨みつける。
「その情報で優位になったつもり?貴方から聞く必要はないわ。」
セラはぎゅっと拳を握り締める。
(ユリウスは私に隠していたのだわ。何とかして聞きださなくちゃ……。)
「だが、もしも求婚に応じれば、俺がユリウスを危機から助け出してやれるぞ?」
カイルが目を細めてセラを眺めた。
「そんなもの要らない。」
「いいのか?国王陛下は残忍な人間だ。ユリウスを傷つけたくなければ、セラは国王陛下の命令にしたがい、エドワーズ様と結婚するしかないんだ。」
セラは拳を握り締めた。ここで引くわけにはいかない。
「私は貴方達には従わないわ。ユリウスがどうなろうと、どうでもいいの。」
「本当に?」
本心は違う。セラはユリウスだけは、どうしても守りたかった。心臓がどくどくと音を立てている。それでも、エドワーズの求婚を受け入れてしまえば、彼らの思うつぼになってしまう。
「おいっ!カイル!二人で何を話しているんだ?」
しりもちをついたまま、エドワーズがカイルに尋ねる。カイルとセラの会話はエドワーズには聞こえていない。完全にのけ者だった。
「エドワーズ様がいかに素敵な方かということを、セラ様にお伝えしていたのです。」
カイルはしらじらしく嘘をつく。
「どんなに脅されても、私は、絶対に王子と結婚しません!」
セラは震える手をぎゅっと握って、二人の前で宣言した。
「なんだと?!僕は王子だぞ!!」
エドワーズが何やらわめいているが気にしない。問題はエドワーズでなく、カイル。そしてその後ろに控える国王だ。
カイルはやれやれと首を振った。
「セラ様のお気持ち、よくわかりました。今日のところはこれで失礼します。でも”大切な人”のことをよくお考えになってくださいね。」
セラは静かに息を飲みこむ。
「大切な人?!なんだそれは!!」
エドワーズはセラに詰め寄ろうとしたが、カイルに引き留められた。
「エドワーズ様は知らなくていい事ですよ。」
そう言うとカイルは、ひょいとエドワーズを持ち上げると魔法陣を作り出した。
「それではまたお会いしましょう、セラ様。」
「もう会うことはないわ!」
「いいえ、次はきっとセラ様から俺に助けを求めたくなるでしょう。」
そう言うとカイルは魔法を唱え、瞬間移動でどこかに消えてしまった。
カイルはそう言うと、セラに一歩近づいて呪文を唱えた。
(捕らえられてしまうわ……!)
カイルは魔法を唱えセラを拘束しようとしている。普段ならば、互角に戦えるだろうが、今のセラには魔力が無い。隣の部屋にいるロージィとユリウスはセラの危機に気づいてくれるだろうか。
「私は優しくありません。現にこうして求婚を断っているではありませんか。王子が悲しんでも、まったく気にしませんよ。」
セラはまた一歩後ずさった。カイルの拘束魔法に抵抗できなくなっている。
(なぜ今日に限って……!)
「いいえ。私にはわかります。セラ様は大切な人が危機に陥っていると知れば、きっと求婚を断ることができないでしょう?」
(貴方に何がわかるの?)
「私に大切な人はいません。」
セラの魔力は魔物を引き寄せてしまう。自分の魔力せいでこれ以上誰も傷つけたくない。その一心で、セラはロージィとユリウス以外の人間との関わりを拒んできた。
「そうでしょうか?」
カイルは微笑みを浮かべたまま、セラに一歩近づいた。それからセラの耳に顔を寄せる。カイルの息が耳にかかり、背筋がぞわりとした。だが、魔法によって、セラは動けなくなっている。
カイルは丁寧な口調を止めて、セラにささやく。
「この部屋の隣にいるのは、ユリウスだろう?」
(ユリウスを知っているの……?)
「誰もいないわ。」
セラは嘘をつく。なぜカイルは、隣の部屋にユリウスがいると知っているのか。そして、ユリウスがセラにとって数少ない大切な存在だと気が付いている。
「君はユリウスが危機に瀕していると知っているのか?」
セラは大きく目を見開いた。
「ユリウスの危機……?」
セラはただカイルの言葉を繰り返し、ゆっくりと瞬きをした。
「知らなかったんだな。」
「ユリウスに何が起こっているの?」
「求婚に応じてくれないなら、教えることはできないな。」
セラはカイルを睨みつける。
「その情報で優位になったつもり?貴方から聞く必要はないわ。」
セラはぎゅっと拳を握り締める。
(ユリウスは私に隠していたのだわ。何とかして聞きださなくちゃ……。)
「だが、もしも求婚に応じれば、俺がユリウスを危機から助け出してやれるぞ?」
カイルが目を細めてセラを眺めた。
「そんなもの要らない。」
「いいのか?国王陛下は残忍な人間だ。ユリウスを傷つけたくなければ、セラは国王陛下の命令にしたがい、エドワーズ様と結婚するしかないんだ。」
セラは拳を握り締めた。ここで引くわけにはいかない。
「私は貴方達には従わないわ。ユリウスがどうなろうと、どうでもいいの。」
「本当に?」
本心は違う。セラはユリウスだけは、どうしても守りたかった。心臓がどくどくと音を立てている。それでも、エドワーズの求婚を受け入れてしまえば、彼らの思うつぼになってしまう。
「おいっ!カイル!二人で何を話しているんだ?」
しりもちをついたまま、エドワーズがカイルに尋ねる。カイルとセラの会話はエドワーズには聞こえていない。完全にのけ者だった。
「エドワーズ様がいかに素敵な方かということを、セラ様にお伝えしていたのです。」
カイルはしらじらしく嘘をつく。
「どんなに脅されても、私は、絶対に王子と結婚しません!」
セラは震える手をぎゅっと握って、二人の前で宣言した。
「なんだと?!僕は王子だぞ!!」
エドワーズが何やらわめいているが気にしない。問題はエドワーズでなく、カイル。そしてその後ろに控える国王だ。
カイルはやれやれと首を振った。
「セラ様のお気持ち、よくわかりました。今日のところはこれで失礼します。でも”大切な人”のことをよくお考えになってくださいね。」
セラは静かに息を飲みこむ。
「大切な人?!なんだそれは!!」
エドワーズはセラに詰め寄ろうとしたが、カイルに引き留められた。
「エドワーズ様は知らなくていい事ですよ。」
そう言うとカイルは、ひょいとエドワーズを持ち上げると魔法陣を作り出した。
「それではまたお会いしましょう、セラ様。」
「もう会うことはないわ!」
「いいえ、次はきっとセラ様から俺に助けを求めたくなるでしょう。」
そう言うとカイルは魔法を唱え、瞬間移動でどこかに消えてしまった。
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