8 / 27
第七話:突然の求婚
しおりを挟む
「僕と結婚しろ!セラ・スチュワート!」
ドアが開くなり、その男はセラにそう言った。この男が先ほど気色の悪い手紙を送ってきた王子エドワーズなのだろう。
(なんて横暴な人なんだろう。)
セラは冷めた目で王子エドワーズを眺めた。 エドワーズは長身に黒髪。金色の瞳。まさに「王子様」という言葉が似あう風貌だ。彼の立ち振る舞いからは、王族の品格や上品さはまるで感じられないけど。
「まあ……。」
セラは一人、部屋の中央に立っていた。青いドレスに着替え、髪を簡単に一つにまとめている。王子を迎え入れるにはもっと着飾るべきかもしれないが、求婚を断るためにわざわざおしゃれをするつもりにはなれなかった。
「僕がお前を妃にしてやる!」
ぼんやりとその場に立ち尽くすセラにエドワーズは言葉を繰り返す。
(妃にしてやる……?)
セラは眉をしかめた。
ここは客人を迎え入れるための部屋。天井、壁、床も真っ白できれいに掃除されている。部屋の隅には、ソファや椅子が配置され、客人を迎える準備が整っていた。
”俺も一緒にいた方がいいのではないか?!”
手紙を受け取った後、ユリウスはなぜかセラと一緒にいると主張したが断わった。事態がややこしくなるに違いないからだ。ユリウスは心配症が過ぎるところがある。今頃、ユリウスは隣の部屋でロージィと共に聴き耳を立てているだろう。
「おいっ!返事は!」
エドワーズがセラをせかす。
「えーと……その……一体なぜ私との結婚を望まれるのでしょうか?」
「お前が魔力を持っているからだ!」
王族でさえ、魔力だけが目的なのかと心底呆れてしまう。セラはエドワーズのことを何も知らないし、エドワーズも同じだ。彼が知っているのは、セラが優秀な魔法使いだということだけ。
最近では魔力を持った赤子の生まれる確率が下がっているという噂を聞く。わざわざこんな田舎までセラを求婚しにくるのだ。きっとこの王子も焦っているのだろう。あまり角を立てずに、穏便に帰ってもらわなくては。
「さあ、城に行くぞ!」
王子エドワーズはもう婚約が成立したかのような口ぶりだ。セラは何も返事をしていない。だが、セラが求婚に対して喜んでいないことを察してくれないようだ。
(どうしたらいいかしら。)
今までに何度か魔力目当ての貴族の男に求婚されたことがあるが、ここまで下手な求婚は初めてだった。自分が王子だから求婚を断られるわけがないと思っているのだろうか。
「お城に行くことはできません。」
「なぜだ?!」
エドワーズはセラを睨みつけたまま動かない。むしろ傍にいる側近の男が少し慌てた顔をしている。
(王子は少し頭が悪そうね。)
少しこの無礼な王子をからかいたくなった。王子という地位があれば、全ての願いをかなえると勘違いしている王様は少々痛い目を見る必要がありそうだ。
「初めまして。私はセラ・スチュワートと申します。ところであなた様はどちら様ですか?」
わざと丁寧な口調でセラは尋ねた。求婚する前に名前を名乗れと、暗にエドワーズに伝える。
「俺はっ!ロマリア国第一王子エドワーズ・ロマリアだ!先ほど手紙を送ったであろうっ!」
エドワーズはものすごい勢いで言い放った。
(さあ、どうやって追い返そうかしら?)
セラは目を細めて考えを巡らせる。
ドアが開くなり、その男はセラにそう言った。この男が先ほど気色の悪い手紙を送ってきた王子エドワーズなのだろう。
(なんて横暴な人なんだろう。)
セラは冷めた目で王子エドワーズを眺めた。 エドワーズは長身に黒髪。金色の瞳。まさに「王子様」という言葉が似あう風貌だ。彼の立ち振る舞いからは、王族の品格や上品さはまるで感じられないけど。
「まあ……。」
セラは一人、部屋の中央に立っていた。青いドレスに着替え、髪を簡単に一つにまとめている。王子を迎え入れるにはもっと着飾るべきかもしれないが、求婚を断るためにわざわざおしゃれをするつもりにはなれなかった。
「僕がお前を妃にしてやる!」
ぼんやりとその場に立ち尽くすセラにエドワーズは言葉を繰り返す。
(妃にしてやる……?)
セラは眉をしかめた。
ここは客人を迎え入れるための部屋。天井、壁、床も真っ白できれいに掃除されている。部屋の隅には、ソファや椅子が配置され、客人を迎える準備が整っていた。
”俺も一緒にいた方がいいのではないか?!”
手紙を受け取った後、ユリウスはなぜかセラと一緒にいると主張したが断わった。事態がややこしくなるに違いないからだ。ユリウスは心配症が過ぎるところがある。今頃、ユリウスは隣の部屋でロージィと共に聴き耳を立てているだろう。
「おいっ!返事は!」
エドワーズがセラをせかす。
「えーと……その……一体なぜ私との結婚を望まれるのでしょうか?」
「お前が魔力を持っているからだ!」
王族でさえ、魔力だけが目的なのかと心底呆れてしまう。セラはエドワーズのことを何も知らないし、エドワーズも同じだ。彼が知っているのは、セラが優秀な魔法使いだということだけ。
最近では魔力を持った赤子の生まれる確率が下がっているという噂を聞く。わざわざこんな田舎までセラを求婚しにくるのだ。きっとこの王子も焦っているのだろう。あまり角を立てずに、穏便に帰ってもらわなくては。
「さあ、城に行くぞ!」
王子エドワーズはもう婚約が成立したかのような口ぶりだ。セラは何も返事をしていない。だが、セラが求婚に対して喜んでいないことを察してくれないようだ。
(どうしたらいいかしら。)
今までに何度か魔力目当ての貴族の男に求婚されたことがあるが、ここまで下手な求婚は初めてだった。自分が王子だから求婚を断られるわけがないと思っているのだろうか。
「お城に行くことはできません。」
「なぜだ?!」
エドワーズはセラを睨みつけたまま動かない。むしろ傍にいる側近の男が少し慌てた顔をしている。
(王子は少し頭が悪そうね。)
少しこの無礼な王子をからかいたくなった。王子という地位があれば、全ての願いをかなえると勘違いしている王様は少々痛い目を見る必要がありそうだ。
「初めまして。私はセラ・スチュワートと申します。ところであなた様はどちら様ですか?」
わざと丁寧な口調でセラは尋ねた。求婚する前に名前を名乗れと、暗にエドワーズに伝える。
「俺はっ!ロマリア国第一王子エドワーズ・ロマリアだ!先ほど手紙を送ったであろうっ!」
エドワーズはものすごい勢いで言い放った。
(さあ、どうやって追い返そうかしら?)
セラは目を細めて考えを巡らせる。
11
お気に入りに追加
982
あなたにおすすめの小説
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。
竜王の花嫁は番じゃない。
豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」
シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。
──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。
追放された令嬢は愛し子になりました。
豆狸
恋愛
「婚約破棄した上に冤罪で追放して悪かった! だが私は魅了から解放された。そなたを王妃に迎えよう。だから国へ戻ってきて助けてくれ!」
「……国王陛下が頭を下げてはいけませんわ。どうかお顔を上げてください」
「おお!」
顔を上げた元婚約者の頬に、私は全体重をかけた右の拳を叩き込んだ。
なろう様でも公開中です。
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
この罰は永遠に
豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」
「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」
「……ふうん」
その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。
なろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる