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13 自分で生きていけるな

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「リーシャ、、君、、歩けたのか、、、。」

私が屋敷を出ると、呆然とリーシャを見つめるアレックスがいた。リーシャは慌ててしゃがみ込むと、アレックスに手を伸ばした。

「違うの!!本当は歩けないんだけど、火事だって言うから、、、!」

その言い訳は苦しいよ、リーシャ。あんたはアレックスにずっと嘘をついていたんだ。アレックスだって、流石に怒り狂うからね、、て、あれ?

不思議なことにアレックスは満面の笑みを浮かべていた。

「歩けるようになったのか!!リーシャ!!」

アレックスはリーシャと目線を合わせた。リーシャは愕然とした顔でアレックスを見ている。

「本当に嬉しいよ!!良かったなぁ!リーシャ!!」

私は頭を抱えた。アレックスはどれだけお人好しなんだ、、、。もう、リーシャも後に引けなくなったようで、正直に白状した。

「え、ええ。最近、少しずつ歩けるようになってきたの。」

本当に最近か?怪しいけどね。

「これでようやく、リーシャも自分で生きていけるな、、、。」

リーシャがアレックスに縋りついた。

「い、いえっ!!貴方がいないと生きていけないわ!アレックス!!今は必死だったから歩けたけど、まだすごく痛いの!!」

この期に及んでこの女は、、、。

「いい加減にしなさい。リーシャ。いつまでアレックスを縛り付ける気?私はあんたが、勢いよく走ってくのをちゃんと見てたんだからね。」

「うるさいっっ!」 


  ◇◇◇


嘘がバレたこの女は、結局痛い目を見ることになった。アレックスは穏便に宮殿を出て行って貰うとしたのだが、王室がリーシャに激怒したのだ。

これまではリーシャは、アレックスを救って足が動かないことを口実に、王室のお金で豪遊していた。リーシャは実は最初から、歩けない状態にはなっていなかった。だが、アレックスに責任を負わせて自分が一番の存在になるためにずっと嘘をついていたのだ。

王室はリーシャに今までリーシャを養ってきたお金を請求した上で、リーシャを屋敷から追い出したのだ。無一文で宮殿を追い出されたリーシャがどうなったのかは、よく知らない。噂では、貧困のあまり体を売ってどこかの風俗にいると聞いたけど、実際のところはどうなんだろうね。


  ◇◇◇

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