【完結】王子様に婚約破棄された令嬢は引きこもりましたが・・・お城の使用人達に可愛がられて楽しく暮らしています!

五月ふう

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29.それから①

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それから一年後。

「まぁ、すっかり大きくなりましたね!予定日は一ヶ月後ですっけ?」

「ええ。今アルフ様と名前について考えているところなんですよ。」

ニューナは膨らんだお腹を押さえて、幸せそうに笑う。

ここはアルフとニューナの家。
ザルトル国に来てからもニューナとは親しい関係が続いていて、こうしてしょっちゅう遊びに来ている。

隣国ザルトル国に移住して一年立つので、こちらの生活にも随分慣れてきた。私はザルトル国第二王子フォックス様に誘われて、彼の秘書官として働いている。サイラス様は同僚としても恋人としても、私を助けてくれている。

一年前の事件の後、何とかフォックスの機嫌を直そうとしたデンバー国王は、ウルブスと私との婚約を穏便に成立させてくれた。また、国王の怒りに触れたウルブスは、謹慎状態で辺境の地に送られたそうである。

「そういえばフォックス様が、アルフの子供の名付け親になりたいと言っていましたね。」

「アルフ様から聞きました!とっても有難くはあるんですけれど・・・フォックス様に頼んだらどんな名前になるか予想がつかないじゃないですか・・・。」

「ふふふ。そうですね。」 

ニューナは頬に手を当てて困った顔をしている。

「だからアルフ様に断るように頼んでるんですが・・・だいじょうぶでしょうか。」

「私からもフォックス様に言っておきますね。たとえば代わりにほら・・・誕生のパーティを開くとか提案すれば、フォックス様はそちらに夢中になりますよ。」

「シエリ様がそう言ってくれると安心です。」

きっといざとなれば、サイラス様が止めてくれるだろうしね。フォックス様とアルフ様とサイラス様は身分差を感じさせないほど、本当に仲良しだ。

秘書官として同じ場所で働いているのだが、3人の掛け合いを見ているだけで楽しくなってしまう。

彼らのサポートのおかげで新しい国での生活を楽しく過ごしている。文化や言語の違いで戸惑うことはあるけれど、少しずつこの国に慣れてきた。

「もう一年が経つんですねぇ。」

ザルトル国での日々は風のように過ぎていく。デンバー国での引きこもっていた日々が遠い昔のように思える。

「ええ。シエリ様と一緒にザルトル国にいれて本当に嬉しいです。一人ぼっちでこの国に嫁ぐと思っていました。」

「私もですよ。ニューナ。いつもありがとうございます。」

二人で顔を見合わせて笑い合う。

「あ!アルフ様とサイラス様が帰って来ましたよ!」

今日は仕事のお休みの日。
サイラスとアルフは街に買い物に行くと二人で出かけていった。

いつもは私とニューナも一緒に付いていって、4人で買い物に行く事が多い。二人で何を買ったんだろう。

「ただいま。ニューナ。」

そう言って、アルフはニューナのおでこにキスをする。

「おかえりなさい。旦那様。」

照れくさそうにニューナがおでこをさすった。ザルトル国の距離の近さに慣れてきたけれどいまだにドキドキしてします。

「ただいま。シエリ。」

「おかえりなさい。サイラス様。」

荷物を置いたサイラスは、私を両手で抱きしめ頭を撫でた後、頬にキスした。

「えっと・・・。」

顔が真っ赤になっているのが分かる。ニューナの婚約者のアルフが言っていたけれど、サイラスはザイラス国の中でもスキンシップが多い方らしい。恥ずかしいが・・・嬉しい。

ザイラス国に来て大変なことは沢山あったけどそのたびに、サイラスとの仲が深まっているように感じる。

今日はサイラスに初めて出会ってから、ちょうど一年がたった日。彼は覚えているだろうか?

「さあ、帰ろう。シエリ。」

夕暮れ時。サイラスと手を繋ぐと、デンバー国から出た日のことを思い出す。
一ヶ月ぶりの外は冷たかったけれど、彼がそっと上着をかけてくれたんだったな。

「はい!」

上着を着て、ニューナとアルフに頭を下げる。
二人の子供が生まれてくるのが楽しみで仕方ない。

「ニューナ。今日はありがとうございます!また来ますね!」

「いつでも来てください。」

「気をつけてな。」

アルフとニューナの家をあとにし、私たちの家に向かう。

「サイラス様・・・私、本当に幸せです。」

「僕もだよ。シエリ。」

平穏で愛しい日々がずっと続いていきますように。
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