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28.大好きです
しおりを挟むウルブスがデンバー国王と共にその場を離れると、サイラスは私の方にまっすぐ歩いてきた。
「シエリ。」
サイラスが優しい笑顔で私の名前を呼ぶ。
「ケガはないか?」
あれだけ激しい戦闘を繰り広げていたのに、サイラスは全く息が上がっていない。
「はい。サイラス様こそ・・・お怪我はありませんか?」
「ああ。あんなへっぽこ野郎には負けないさ。遅くなってすまなかった。怖かっただろう?」
「・・・いいえ。」
実のところ、心臓の動悸は収まっていない。
サイラスが来てくれていなかったら、どうなっていたんだろ。
私の強がりに気が付いたのだろうか。サイラスは私に近づくと
「抱きしめて・・・いいかい?」
と尋ねた。
「・・・はい。」
サイラスは大きな体に包まれて、心がじんわりと温かくなる。
「本当は・・・怖かったです・・・。」
サイラスの肩に顔をうずめて呟くと、彼は私の頭を撫ででくれた。
「よく、ウルブスに負けなかったね。シエリは勇敢だ。」
ああ。いけない。
私の涙が、サイラスの騎士服を汚してしまう。
「サイラス様が・・・迎えに来てくれると言ってくれたから・・・。あなたのおかげです・・・。」
私を抱きしめるサイラスの力が強まる。
「君を守れて、本当に良かったよ。
シエリ・・・君に初めて会った時から、僕は君に惹かれていた。」
サイラスの声が耳に響く。
「私も・・・です。」
心臓がドクンドクンと音を立てている。
あれ・・・これって夢なのかな?
サイラスがゆっくりと体を離し、まっすぐに私を見つめる。
「僕は・・・君が好きだ。
僕と一緒にザイラス国に来てくれますか?」
時が止まったみたい。
窓から差し込む夕日がサイラスの横顔を照らしている。
「はい・・・!私も大好きです。」
サイラスが身をかがめて私に手を差し出す。
「さぁ、行こうか。シエリ。」
差し出された手を繋ぐ。
「はい・・・!」
◇◇◇
「ここが、シエリの部屋?」
「はい!一か月間、ここに引きこもっておりました!」
カバンを取りに部屋に戻ると、サイラスが興味深そうに部屋を眺めていた。
早めにお部屋を掃除しておいてよかった。
あとはこのお部屋にお別れを言って、旅立つだけだ。
「この部屋にもう戻ってこないと思うと・・・少し寂しいですね。」
だ
そう言うと、サイラス様は私の頬に触れた。
「本では読んだが・・・素敵な日々だったんだね。」
「は・・・はい・・・。あの・・・サイラス様?」
サイラスは両手で私の顔を挟んで、身をかがめた。
「君と一緒なら、どこにいても幸せな日々を過ごせそうだ。」
そう言って、サイラスはゆっくりと私の唇に触れたのでした。
◇◇◇
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