【完結】王子様に婚約破棄された令嬢は引きこもりましたが・・・お城の使用人達に可愛がられて楽しく暮らしています!

五月ふう

文字の大きさ
上 下
26 / 30

26.たとえお前が王子であろうとも

しおりを挟む
「サイラス様!」

ウルブスの剣から私を守ってくれたのは、サイラス様だった。

「邪魔をするな!!」

ウルブスは剣を重たそうに持ち上げて、もう一度サイラスに向けて振り下ろした。

「サイラス様!!!」

サイラスはウルブスの剣を片手で受け止め、右足でウルブスを蹴りつける。

「ぐあぁあ!」

サイラスは怒りに震えて、ウルブスを見下ろし、

「シエリをこれ以上傷つけるのは許さない!」

と叫んだ。

「お前には・・・関係ないだろ!!」

ウルブスは体を起こし、再び襲いかかろうとした。しかし、サイラスはウルブスの剣を軽々と受け止める。サイラスは私を守りながらウルブスの攻撃を防ぎ、反撃し続けた。

「今のうちに逃げろ!シエリ!」

「はい!」

「おい!!待てシエリ!!」

部屋を出た私をウルブスが追いかけようとしてくる。だが、サイラスの剣はウルブスが逃れることを許さない。

サイラスの剣の腕はウルブスを上回っている。ウルブスはぎりぎりと奥歯を噛みしめ、部下たちに叫んだ。

「お前たち、何をぼんやり見ている!!僕に加勢し、その女を捕まえろ!!」

「はっ!」

サイラスの部下たちも、彼を攻撃しようとしたが、サイラスの腕は優れていて、部下たちを圧倒している。

「サイラス様!!」

部屋を出ても激しい剣の打ち合い続き、サイラスとウルブスの戦いの場は城のロビーに移行した。城のみんなが何事かと彼らの戦いを見ている。

三対一になろうとも、サイラスの圧倒的有利は変わらない。サイラスは簡単にウルブスと騎士たちの剣をさばきながら、何とか戦いを終わらせようとしている。しかし、ウルブスの怒りは収まらず、彼はますます狂暴になっていた。

「許さない!!なぜ皆、僕の邪魔をするんだ!!」

ウルブスの怒りは頂点に達していたが、明らかに疲れの色が見えた。
荒い息で剣を振り上げたウルブスの剣をサイラスがはじき飛ばし、ウルブスを組み敷く。

「離せっ。」

「シエリを傷つける奴を自由にするわけにはいかない!たとえお前が王子であろうとも・・・!」

サイラスがそう叫んだ時

「何をしている!!」

そこに現れたのはデンバー国王と・・・ザルトル国第二王子フォックスである。

「おーい。サイラスー。大丈夫か~??」

フォックスはのん気にサイラスに向かって手をふり笑う。

「無事、悪い王子から、好きな人を救い出せたみたいだな。」

へ・・・?

「おい!!!フォックス!!」

サイラスは顔を真っ赤にして、フォックスを呼び捨てする。
あれ・・・?フォックス様って王子なのでは・・・?

「父上!!助けてください!!この騎士に突然襲い掛かられました・・・!」

サイラスに捕らえられたままのウルブスは涙目で、デンバー国王に訴える。
デンバー国王は腕を組んだままウルブスを睨みつけると、息子を怒鳴りつけた。

「馬鹿者・・・!」
   
「え・・・?」

ウルブスは呆然とした顔で目を見開いた。

「ウルブス・・・お前がシエリ嬢とザルトル国の騎士に切りかかったことはすでに報告されているのだぞ!!」

「で・・ですが、シエリを本当に傷つける気はなかったですし・・・この男はただの騎士ではないですか!なぜ僕を味方してくれないのですか!父上!!」

「ただの騎士なら・・・一方的に命を奪ってもいいってことかい?」

フォックスは笑みを浮かべたまま、ウルブスに尋ねた。だがその目は笑っていない。

「そ・・そういうことでは・・・。」

「ちなみにその騎士サイラス・リングイットはザルトル国公爵家の一人息子。殺してたら大問題になるとこだったね。ウルブス?」

こ・・・公爵家の方だったんですね。サイラス様・・・。



   ◇◇◇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

隣国の王子に求愛されているところへ実妹と自称婚約者が現れて茶番が始まりました

歌龍吟伶
恋愛
伯爵令嬢リアラは、国王主催のパーティーに参加していた。 招かれていた隣国の王子に求愛され戸惑っていると、実妹と侯爵令息が純白の衣装に身を包み現れ「リアラ!お前との婚約を破棄してルリナと結婚する!」「残念でしたわねお姉様!」と言い出したのだ。 国王含めて唖然とする会場で始まった茶番劇。 「…ええと、貴方と婚約した覚えがないのですが?」

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...