22 / 30
22.そのお言葉をお返しします!
しおりを挟む
「やっと出てきたか。」
ドアが空いた瞬間、ウルブスの態度が急変する。私はウルブスを睨みつけ、
「また・・・引きこもってもいいんですよ?」
ボソリと呟く。
ウルブスは私に背を向けて思い切り顔をしかめた。はっきり見えてますよ、ウルブス様。
「シ・・・シエリ。」
また私の機嫌を取るのは大変だと思ったのか、ウルブスは無理やり笑顔を作った。
「もし、ザルトル国の王子に会って君が嫌な思いをするようなことがあったら、僕が必ず守ってみせるから、心配するな。」
「はぁ。」
ウルブスは酷い噂を流したことで私がどれだけ苦しかったかわからないんだろうか。どれだけ言葉を重ねたって・・・馬鹿らしいだけだ。
「マリィにも同じことを・・・言ったんでしょう・・・?」
「・・・黙れ。」
ウルブスは低い声で言った。
一ヶ月前は、彼に脅されるとどうしていいか分からなかった。今だって手は震えている。だけど・・・
「私を苦しめているのは・・・いつだってウルブス様ですよ・・・。」
もう、大人しいだけの自分じゃいたくない。言いたいことはなんだって言うと決めていた。
「・・・嫌な女め・・・。」
何を言っても、今のウルブスは私のご機嫌取りをするしかない。今がチャンスと、心の中で呟く。
「・・・そのお言葉を・・・そっくりウルブス様にお返しします・・・!」
◇◇◇
「あちらがザルトル国の第二王子フォックス様だ!失礼のないようにな!」
ウルブスに念をおされ貴賓室に入る。
「久しぶりだなぁ!ウルブス!」
そこには、ザルトル国王子フォックスと二人の騎士が待っていた。立ちあがった騎士をみて、私の心はじんわりと熱くなった。
サイラス様がいらっしゃる。
「久しぶりです。フォックス。お変わりないようで何よりです。」
「ああ。君は婚約したんだってな!」
「ええ。彼女がシエリ・ウォルターン。僕の婚約者です。」
私はごくりと息を飲み込んで、フォックスに挨拶をする。
「お初にお目にかかります。私、シエリ・ウォルターンと申します。本日はお会いできて大変光栄です。」
「初めまして。シエリ。」
フォックスはにっこりと微笑んで、私と握手してくれた。私の噂を知っているのだろうか。彼は大きな目で私をじっと見つめた。
「フォックス様・・・。」
あまりにも私を凝視していたからか、ザルトル国の騎士がフォックスをたしなめた。
「ああ。すまん。あまりにも綺麗だったから、つい見てしまった。素敵な方と婚約したんだな。」
そう言ってフォックスがウルブスの肩に手を回す。
「はい。シエリを見ていると自然に笑みがこぼれます。」
まんざらでも無さそうに、ウルブスが笑う。さっきまで憎しみを込めて睨みつけていたくせに。
「そうか、そうか。そしたら、少し男二人で話そうぜ。少し部屋を出て城を見学しよう!」
「え・・・?フォックスは私達から婚約後の生活について助言をもらいたいと聞いていますが・・・。」
ウルブスが戸惑った顔でフォックスを見る。私達から婚約生活のアドバイスなんてできるはずもないのに・・・。
「まあまあ、行こうぜ!」
フォックスは強引にウルブスを連れて部屋を出ていった。
ドアが空いた瞬間、ウルブスの態度が急変する。私はウルブスを睨みつけ、
「また・・・引きこもってもいいんですよ?」
ボソリと呟く。
ウルブスは私に背を向けて思い切り顔をしかめた。はっきり見えてますよ、ウルブス様。
「シ・・・シエリ。」
また私の機嫌を取るのは大変だと思ったのか、ウルブスは無理やり笑顔を作った。
「もし、ザルトル国の王子に会って君が嫌な思いをするようなことがあったら、僕が必ず守ってみせるから、心配するな。」
「はぁ。」
ウルブスは酷い噂を流したことで私がどれだけ苦しかったかわからないんだろうか。どれだけ言葉を重ねたって・・・馬鹿らしいだけだ。
「マリィにも同じことを・・・言ったんでしょう・・・?」
「・・・黙れ。」
ウルブスは低い声で言った。
一ヶ月前は、彼に脅されるとどうしていいか分からなかった。今だって手は震えている。だけど・・・
「私を苦しめているのは・・・いつだってウルブス様ですよ・・・。」
もう、大人しいだけの自分じゃいたくない。言いたいことはなんだって言うと決めていた。
「・・・嫌な女め・・・。」
何を言っても、今のウルブスは私のご機嫌取りをするしかない。今がチャンスと、心の中で呟く。
「・・・そのお言葉を・・・そっくりウルブス様にお返しします・・・!」
◇◇◇
「あちらがザルトル国の第二王子フォックス様だ!失礼のないようにな!」
ウルブスに念をおされ貴賓室に入る。
「久しぶりだなぁ!ウルブス!」
そこには、ザルトル国王子フォックスと二人の騎士が待っていた。立ちあがった騎士をみて、私の心はじんわりと熱くなった。
サイラス様がいらっしゃる。
「久しぶりです。フォックス。お変わりないようで何よりです。」
「ああ。君は婚約したんだってな!」
「ええ。彼女がシエリ・ウォルターン。僕の婚約者です。」
私はごくりと息を飲み込んで、フォックスに挨拶をする。
「お初にお目にかかります。私、シエリ・ウォルターンと申します。本日はお会いできて大変光栄です。」
「初めまして。シエリ。」
フォックスはにっこりと微笑んで、私と握手してくれた。私の噂を知っているのだろうか。彼は大きな目で私をじっと見つめた。
「フォックス様・・・。」
あまりにも私を凝視していたからか、ザルトル国の騎士がフォックスをたしなめた。
「ああ。すまん。あまりにも綺麗だったから、つい見てしまった。素敵な方と婚約したんだな。」
そう言ってフォックスがウルブスの肩に手を回す。
「はい。シエリを見ていると自然に笑みがこぼれます。」
まんざらでも無さそうに、ウルブスが笑う。さっきまで憎しみを込めて睨みつけていたくせに。
「そうか、そうか。そしたら、少し男二人で話そうぜ。少し部屋を出て城を見学しよう!」
「え・・・?フォックスは私達から婚約後の生活について助言をもらいたいと聞いていますが・・・。」
ウルブスが戸惑った顔でフォックスを見る。私達から婚約生活のアドバイスなんてできるはずもないのに・・・。
「まあまあ、行こうぜ!」
フォックスは強引にウルブスを連れて部屋を出ていった。
44
お気に入りに追加
1,714
あなたにおすすめの小説

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

隣国の王子に求愛されているところへ実妹と自称婚約者が現れて茶番が始まりました
歌龍吟伶
恋愛
伯爵令嬢リアラは、国王主催のパーティーに参加していた。
招かれていた隣国の王子に求愛され戸惑っていると、実妹と侯爵令息が純白の衣装に身を包み現れ「リアラ!お前との婚約を破棄してルリナと結婚する!」「残念でしたわねお姉様!」と言い出したのだ。
国王含めて唖然とする会場で始まった茶番劇。
「…ええと、貴方と婚約した覚えがないのですが?」

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み

異世界転移聖女の侍女にされ殺された公爵令嬢ですが、時を逆行したのでお告げと称して聖女の功績を先取り実行してみた結果
富士とまと
恋愛
公爵令嬢が、異世界から召喚された聖女に婚約者である皇太子を横取りし婚約破棄される。
そのうえ、聖女の世話役として、侍女のように働かされることになる。理不尽な要求にも色々耐えていたのに、ある日「もう飽きたつまんない」と聖女が言いだし、冤罪をかけられ牢屋に入れられ毒殺される。
死んだと思ったら、時をさかのぼっていた。皇太子との関係を改めてやり直す中、聖女と過ごした日々に見聞きした知識を生かすことができることに気が付き……。殿下の呪いを解いたり、水害を防いだりとしながら過ごすあいだに、運命の時を迎え……え?ええ?
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。
ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる