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21.部屋からでてくれ!

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次の日の朝。私は緊張と共に目を覚ました。

サイラスに手紙とプレゼントが届いただろうか・・・。今になって、恥ずかしくなってくる。じっとしていられなくて、朝から縫い物を始める。

「おはようございます!シエリ様!」

ニ食事を手に部屋に入ってきたニューナの表情は明るい。

「ニューナ・・・その・・・サイラス様に渡せましたか・・・?」
 
ニューナは食事をテーブルにおくと私に向き直り、大きくうなずいた。

「シエリ様、嬉しいお知らせです!サイラス様が城に来て、シエリ様にお会いになるそうです!」

驚いて手に持っていた針を落としてしまう。

「え?サイラス様が本当に・・・?」

「はい、シエリ様。サイラス様と今日、会えるのですよ!」

わたしは細かく首をふる。

「で・・・でも・・・私への面談はウルブス王子が全て拒否しているんじゃ・・・?」

サイラスは私にとって救いであり勇気の源だ。あの夜を思い出すと心が踊る。彼に会うことができれば、どんなに幸せだろう。

だが、ウルブスが面会を許すとは思えなかった。 

「それが私にもよく分からないのですが、だいじょうぶだそうです!婚約者様が言っていたので間違いないです!」

ニュースが胸を張って答えた。
彼女の婚約者はサイラスの友人らしいが、なにか策があるのだろうか。

「そ・・・そうなのですか。」

「ええ!ですからとびきりお洒落しましょう!」

一度部屋を出たニューナは、薄ピンクの可愛らしいドレスと化粧道具を持ってきた。

「シエリ様が好きな人に会うんですって!!」

そう言って、レレナも部屋に駆けつける。

「ち、違いますよ!!」

ニューナとレレナは顔を見合わせる。

「好きじゃないんですか?」

とレレナが首をかしげる。

「す、すす、好きかどうかなんて・・・一度会っただけではわからないですし!!友達なのですよ!」

言葉が上手く出てこないが、なんとか取り繕う。

「ふふ。あまりシエリ様をいじめないのよ、レレナ。さあ、ドレスアップしましょう!」

そう言うとニューナはすぐに私の身仕度を整えてくれた。

「まぁ・・・。ありがとうございます。ニューナ。レレナ。」

私は鏡を見て、自分自身を見つめた。
美しいドレスにきれいに結われた髪。まるで自分じゃないみたいだ。

酷い噂を流されて、サイラスに会うのが怖くなっていた。だけど、二人のおかげで恐れが少し小さくなった。

「楽しみです。」

私は心を踊らせて、サイラスを部屋で待っていた。だが、先に部屋に来たのは望んでいないあの男だった。


   ◇◇◇

ドンドンドン!!

「シエリ!!なぁ、君に会いたいんだ。部屋を出てきてくれないか?!」

ドアの向こうで、ウルブスの声が聞こえた。サイラスが来るのを待っていた私はため息をつく。

貴方のことはお呼びじゃないんですけどね。クッションの上でくつろぎながら、ウルブスの声を聞こえないふりをする。

ガチャガチャガチャッ

ウルブスがドアノブを回し、部屋に無理やりはいろうとしている。

「聞いてるんだろ?シエリ!頼むよ! 」

その声にはいつもより余裕がない。

「お引取り・・・ください。」

「・・・なぁ、シエリ、君が望むことをなんでも一つ叶えよう。だから今だけ部屋を出てきてくれないか?」

ウルブスは、私を説得してなんとか部屋に入ろうとしている。

"望むことを叶える"だなんて、信用するだけ馬鹿だ。だってこの人は、私の"望むこと"を考えようとすらしないんだから。

「い・・・いやです!」

「・・・くそっ。」

部屋の中に入れてなるもんか。
ウルブスはまだ諦めずに部屋の前でぶつぶつと呟いている。なぜ今日はこんなにもしつこいんだろう。

「なにか好きな食べ物はないのか?好きな本は?なんでも持ってこさせる!だから部屋を出てくれ!」

次は物で釣る作戦ですか。

「出ません!なぜ今日は・・・そんなに必死なのですか・・・?」

「今日はザルトル国の王子がくる・・・なぜだか知らんが、僕と君に会いたいと向こうの第二王子が言っているんだよ!」

「ザルトル国・・・。」

サイラスはザルトル国の騎士。もしかして王子と一緒に彼が来るのかもしれない。

「ザルトル国の支援がこの国にとってどれだけ大事が知っているだろ?!頼むよ!君を連れていかなければ、僕が父上に怒られるんだ!」

ウルブスの言葉に笑いを押さえるため口を押さえる。いつもは余裕綽々で私を見下しているのに、今日はやけに焦っている。

「・・・だから?」

ぽつりと呟くと、ウルブスがさらに焦るのが分かった。

「シエリ、なぁ君が大好きだ。本当に悪かった!君の望みは何でも叶える!これから絶対に幸せにする!一緒に外に出て、この隣国の王子と会ってくれないか?」

ウルブスはドアを叩きながら、そう喚き散らす。

彼の"大好き"も"幸せにする"も、到底信じる気にはなれないけれど・・・

ザルトル国の王子と共に大好きな人が待っているのかもしれない。

私はそっとドアを開けた。

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