【完結】王子様に婚約破棄された令嬢は引きこもりましたが・・・お城の使用人達に可愛がられて楽しく暮らしています!

五月ふう

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20.会いに行くよ(サイラス視点)

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アルフに連れられてレストランに行くと、一人の女性がそこに待っていた。

「初めまして!アルフ様の婚約者のニューナと言います!シエリ様のメイドをしています!」

猫のような大きな目を持つニューナ。
アルフが彼女の腰に手を回すと、ニューナの頬が赤く染まった。

「右のでかい男がサイラス。左の細いやつが・・・フォックスだ。」

「まあ!フォックス様も騎士様ですか?」

ニューナに尋ねられたアルフが視線をそらす。フォックスがザルトル国の王子だと言うことを伝えるか、迷っているのだろう。

「ああ!俺はアルフとサイラスの同僚だ。暇だから酒を飲みに来ただけだから、気にしないでくれ。」

フォックスはヘラヘラと笑って、席についた。無理やりにでもフォックスをおいてくればよかった。シエリがウルブスの婚約者だと知ったら・・・この男はさらに面白がるに違いない。

「そうですか。」

ニューナは困った顔で、アルフの顔を見た。シエリはデンバー国王子の婚約者。あまり多くの人に、聞かせたくない話だろう。

「あー、まあ。フォックスのことは気にしないでくれ。ああ見えて、信頼出来るやつだから。」 

「アルフ様がそう言うのならだいじょうぶですね。」

ニューナが顔をほころばせる。
仲良さそうで・・・羨ましいな。

「サイラス様。」

ニューナは僕を真っ直ぐに見つめた。

「アルフ様から、シエリ様とサイラス様は両想いだと伺っています。」

「あ・・・いやっ。僕たちはただの友人でっ、その友人を救いたいと思っているだけてで・・・。」

しどろもどろになって、楽しそうに婚約者と手をつなぐアルフを睨みつける。お前は何を言ったんだ?!

「わかりました。」

僕を見て、ニューナがにっこりと笑う。
それはなんの笑みなんだ?!

「これは、シエリ様からのサイラス様へのプレゼントと手紙です。」

僕はニューナからハンカチを受け取った。そこには美しい刺繍が施されている。

そのハンカチをサイラスは大切に両手で包んだ。どんな思いで、このハンカチを刺繍してくれたのだろう。彼女への愛情が溢れてくる。

ハンカチの下にある手紙を取り出して、僕は読み始めた。

『サイラス様へ。

この手紙を読む頃には、あなたが私のハンカチを受け取っていることでしょう。あなたの優しさと思いやりに心からの感謝を伝えたくてプレゼントを送ります。

サイラス様と別れたあの日、私はウルブス王子に捕まり、お城で監視されていました。その間に王子は私の"誤った"噂を流してしまいまったのです。サイラス様にも届いているかもしれませんね。

でも、私は諦めるつもりはありません。
真実を明らかにするために、私はかつて書いた文書を世間に公表するつもりです。

それによって、この国にいられなくなったとしても、私は王子の支配に従わないと決めたのです。叶うならばサイラス様には・・・私のことを信じていてほしいのです。大切な友達ですから。

全てが終わって、笑顔でまたサイラス様に会えるよう願っています。お体にお気をつけてお過ごしください。

シエリより』

手紙を読み終えるとシエリの思いを知った僕はーー彼女を助けたいという思いが一層強くなった。

「シエリ・・・。」

僕の後ろから、フォックスが無遠慮に手紙を覗き込んでくる。

「サイラス様。シエリ様は誰よりも優しいお方です。ですがご自分のことになると・・・酷く不器用な方でして。

どうかシエリ様をお助けくださいませんか?」

ニューナがゆっくりと頭を下げる。

「もちろんだ。それにしても・・・ニューナはシエリを慕っているのだな。」

シエラの噂は街中に広がっている。それをニューナが知らないはずはない。

「ええ。城の人間は皆、シエリ様のことが大好きです。」

「なぜ?」

フォックスが首をかしげる。

「お部屋から出られない状況が続いていても、シエリ様はいつも明るくて・・・シエリ様のそばにいると皆元気をもらえるのです。」

「ふーん。良い人そうだな。サイラスは女運が悪いから心配していたが、今回はだいじょうぶそうだ。」

「心配してくれてたんだな。」

「当然だろ。」

そう言うとフォックスは、俺の肩を二度
叩いた。

「明日、会いにいくか。」

フォックスの言葉に、ニューナが首をふる。

「それが・・・シエリ様への面会は、ウルブス王子によって全て拒否されているのです。」

「だいじょうぶ。俺が会いたいと言えば、ウルブスは通してくれるさ。奴とは知り合いだからね。」

ザルトル国の王子の要求をウルブスが断ることはないだろう。デンバー国よりザルトル国は経済的に豊かで大きい国だ。

今回の長期滞在は、デンバー国とザルトル国で経済同盟を結ぶかどうかの調査が目的。デンバー国の人間は、フォックスをできるだけ上機嫌にしたいはずだ。

「フォックス様は何者ですか?」

ニューナが戸惑いの表情を浮べて、アルフに尋ねている。

「明日には分かるよ。シエリ様には、明日サイラスが会いに行くと伝えておいてね。」

待っていてくれ。シエリ。
君に会いに行くよ。



   ◇◇◇
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