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12.脅しには負けませんから!
しおりを挟むサイラスと別れて、城に向かっている途中だった。突如、後ろから怒鳴り声が聞こえた。
「あそこだ!!つかまえろ!!」
振り返るとそこにいたのは・・・ウルブス。彼は、10人以上の護衛を連れている。
「待て!!シエリ!!」
ウルブスは激しい怒りを露わにして駆け寄ってきた。目の下には大きなクマができて、憔悴した様子だ。私を探していたの・・・?
「待ちません・・・!」
なんとか逃げ出そうとしたが、あっけなくウルブスの部下に捕まってしまった。
「なぜ俺の許可なく城を離れた?!今までどこにいたのだ?!」
ウルブスは怒り狂っている。
これは、心配?
いいえ。自分の支配下にいたはずの女が思い通りに動かない恐怖ね。
「城に戻るぞ!!」
ウルブスは私の腕を掴み、無理やり引っ張ろうとする。
「や、やめてください!!」
抵抗すると、ウルブスは驚いた顔をした。
もうウルブスの言う通り動くつもりはない。この男に利用されて人生を終えるのなら・・・サイラス様に一万回振られる人生のほうが幸せだ。
「もう、あなたの言うことは聞きません!離してください!」
「うるさい・・・。ああ、わかった!婚約破棄は取り消しにしてやるよ。それが望みなんだろ?!」
この男は何を言っているのだろう。
私をなめるのもいい加減にしてほしい。
「婚約破棄はします・・・!あなたの浮気にはもう我慢できないのです!」
ウルブスは怒りの炎を灯した目で私を睨みつけたが、私も負けずに睨み返した。
「お前は私のものだ。」
「は?」
「まだシエリは俺の婚約者なのだから、俺のものだろう?」
婚約者を自分の所有物だと思うその考え方が気に食わない。
城に連れ戻された私は必死で国王の部屋の方に向かうが・・・
「どこに行くつもりだ?」
ウルブスに引き戻されてしまう。
「どこだっていいでしょう・・・?!」
なんとかウルブスから逃れようとしたが、力でかなうはずもない。
城に戻った私は、ウルブスの居室に連れて行かれた。ベッドに投げ出された私はなんとか受け身をとる。
「シエリ・ウォルターン。」
ウルブスは怒りを隠すことなく、私を睨みつけて言った。
「お前は私のものだ。どこに行こうと無駄だ。僕が決めたことを逆らうことは絶対に許さない。」
「な・・・!」
今まで無関心だったくせに、急に婚約者面ですか・・・?信じられない。
「お前が城を抜け出した理由は何だ?お前が俺のことを言いふらすためだろう?」
ウルブスは自分に愛人がいると言いふらされることを恐れているんだ。
彼に従うしかないと思い込んでいたけれど・・・思ったよりも、私の父の力は強いのかもしれない。
「いけま・・・せんか?事実でしょう?」
私は小さく笑ってみせた。
まだサイラスから貰った勇気が残っている。
「なんだと・・・?」
「もう、貴方には我慢の限界です、脅しには・・・絶対に屈しませんから!」
そう言うと、ウルブスは私に覆いかぶさってくる。
「お前が一言でも俺のことを言いふらせば、お前の家族に危害を加えるぞ!」
ウルブスはさらなる脅しの言葉を吐き捨てた。
「お前の家族を守りたければ、大人しくしていろ!!」
ウルブスの脅しは恐ろしい。
だけど・・・貴方は本当には私の父に危害なんてくわえられないんでしょう?怯えてるものね。
「貴方は・・・嘘つきです!」
そう言って思い切り、ウルブスの肩をおし返す。油断していたウルブスは大きく体勢を崩した。その隙をついて私は自分の部屋へと逃げ込む。
「あなたがどんなに脅してきても、私は負けませんから!!」
部屋の内側から鍵をかけた。ウルブスが入ってこられないように。
「くそっ。」
ウルブスが合鍵を取りに行っている間に、私はドアの前に大きくて重い箱を置く。必死でドアの前に物を積み重ね、ドアが開かないように固定する。
「ちっ!!なんで開かないんだよ!!おい!!開けろ!!」
ウルブスがドアを叩いて叫んでいる。
「お前は私のものだ!わかってるのか!シエリ!」
「私は・・・私のものです!ウルブス様には従いませんから!」
そうして、私は部屋に引きこもることになったのだった。
◇◇◇
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