【完結】王子様に婚約破棄された令嬢は引きこもりましたが・・・お城の使用人達に可愛がられて楽しく暮らしています!

五月ふう

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4.王子は渡さない

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「マリィさん・・・何か御用ですか?。」

この城に来た当初は、マリィに対して憤りを感じたことがあった。でも今はもうどうでも良くて、関わりたくない思いが強い。

「あらぁ、話しかけちゃいけないの?私たち、同じ男を愛する者同士でしょ?」

「は、はぁ。」

正直なところ、もうウルブス様に対してなんの感情も抱いていない。私に干渉せず、好きにさせてくれるならば、マリィさんと愛し合っていていいと思っている。

「ねぇ、シエリ。貴方いつまでこの城にいるつもりなの?」

マリィが私を睨みつけて、鋭い口調で尋ねる。

「いつまでと、言われましても・・・。私は一応ウルブス様の婚約者なので、彼と婚約破棄するまではここにいると思います。」

とにかくマリィを刺激しないよう、言葉を選ぶ。普段は私がいても、まるで存在していないかのように振る舞うマリィ。今日はなぜ、こんなに突っかかってくるのだろう?

「馬鹿ね、シエリ。貴方はここにいるべきではないってわからないの?!」

「えーと・・・。」

「ウルブス様が愛しているのは私なの!貴方は愛されていない邪魔者。そうでしょ?さっさと城を出て行ってよ!」

私はぼうっとマリィを見つめる。

「貴方がいなくなれば、私はウルブス様の王妃になれるの!!」

マリィの言葉に私は肩をすくめる。
ウルブスが私を婚約者にしたのは、そうする利益があるからだ。私が城を立ち去ったところで、マリィがウルブス王子の婚約者になれるとは思えない。

「マリィさん。残念ですが、私を婚約者にすると決めたのはウルブス様本人なのですよ。・・・もしも、私とウルブス様を婚約破棄させたいならば、彼に直接話してください。」

城を離れるのは、少し寂しいけれどウルブスと婚約破棄できるのは・・・正直嬉しい。

怒りに顔を赤らめるマリィは私に詰め寄った。

「違うわ!!シエリの父に頼まれて、仕方なく婚約したのだとウルブス様は言っていた!!」
 
必死のマリィに私はそっと微笑んだ。

それはウルブスの嘘だ。
父上は本当は私を違う貴族の男性に嫁がせようとしていたけれど、ちょうどウルブス様から婚約のお手紙が届いたのだ。

"よくやったシエリ!!王子から求婚の手紙がとどいたぞ!!"

父が大喜びで褒めてくれたから、良く覚えている。

「そうですか・・・。マリィさん、お怒りになるのは分かります。でも、私にはなんの決定権もないのですよ。分かってください。」

マリィに対しても、憐れみの気持ちが湧いてきた。ウルブスは私だけじゃなくて、マリィのこともある意味で利用しているのだ。

「なによ!良い人ぶって!!さっさと城から出ていきなさいよ!!」

マリィは激昂し聞く耳を持ってくれない。
どうしたら良いかな。あまり、騒ぎを大きくしたくないんだけどな。

マリィの怒鳴り声で、もうすでに多くの人がその場に集まっていた。

「ね、マリィさん。一度部屋に帰りましょ?」

そう言ってそっとマリィの背中に触れたとき、

「キャーーー!!」

と叫んで、マリィがその場に倒れ込んだ。

「え?」

待って待って。私、まだマリィさんに触れてもいないんだけど。そんなふうに倒れ込んだら、まるで私が彼女を倒したように見えるんじゃ・・・。

「何が起こっているんだ?!」

タイミングの悪いことに、ウルブス王子が現れる。

「ウルブス様っ!!私っ、シエリに乱暴されたんですっっ。」

大粒の涙を流して、マリィがウルブス王子にすがりついた。

「シエリ!!何をしているんだ!!」

そんな怒鳴られても・・・。
自作自演ですって。
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