4 / 30
4.王子は渡さない
しおりを挟む「マリィさん・・・何か御用ですか?。」
この城に来た当初は、マリィに対して憤りを感じたことがあった。でも今はもうどうでも良くて、関わりたくない思いが強い。
「あらぁ、話しかけちゃいけないの?私たち、同じ男を愛する者同士でしょ?」
「は、はぁ。」
正直なところ、もうウルブス様に対してなんの感情も抱いていない。私に干渉せず、好きにさせてくれるならば、マリィさんと愛し合っていていいと思っている。
「ねぇ、シエリ。貴方いつまでこの城にいるつもりなの?」
マリィが私を睨みつけて、鋭い口調で尋ねる。
「いつまでと、言われましても・・・。私は一応ウルブス様の婚約者なので、彼と婚約破棄するまではここにいると思います。」
とにかくマリィを刺激しないよう、言葉を選ぶ。普段は私がいても、まるで存在していないかのように振る舞うマリィ。今日はなぜ、こんなに突っかかってくるのだろう?
「馬鹿ね、シエリ。貴方はここにいるべきではないってわからないの?!」
「えーと・・・。」
「ウルブス様が愛しているのは私なの!貴方は愛されていない邪魔者。そうでしょ?さっさと城を出て行ってよ!」
私はぼうっとマリィを見つめる。
「貴方がいなくなれば、私はウルブス様の王妃になれるの!!」
マリィの言葉に私は肩をすくめる。
ウルブスが私を婚約者にしたのは、そうする利益があるからだ。私が城を立ち去ったところで、マリィがウルブス王子の婚約者になれるとは思えない。
「マリィさん。残念ですが、私を婚約者にすると決めたのはウルブス様本人なのですよ。・・・もしも、私とウルブス様を婚約破棄させたいならば、彼に直接話してください。」
城を離れるのは、少し寂しいけれどウルブスと婚約破棄できるのは・・・正直嬉しい。
怒りに顔を赤らめるマリィは私に詰め寄った。
「違うわ!!シエリの父に頼まれて、仕方なく婚約したのだとウルブス様は言っていた!!」
必死のマリィに私はそっと微笑んだ。
それはウルブスの嘘だ。
父上は本当は私を違う貴族の男性に嫁がせようとしていたけれど、ちょうどウルブス様から婚約のお手紙が届いたのだ。
"よくやったシエリ!!王子から求婚の手紙がとどいたぞ!!"
父が大喜びで褒めてくれたから、良く覚えている。
「そうですか・・・。マリィさん、お怒りになるのは分かります。でも、私にはなんの決定権もないのですよ。分かってください。」
マリィに対しても、憐れみの気持ちが湧いてきた。ウルブスは私だけじゃなくて、マリィのこともある意味で利用しているのだ。
「なによ!良い人ぶって!!さっさと城から出ていきなさいよ!!」
マリィは激昂し聞く耳を持ってくれない。
どうしたら良いかな。あまり、騒ぎを大きくしたくないんだけどな。
マリィの怒鳴り声で、もうすでに多くの人がその場に集まっていた。
「ね、マリィさん。一度部屋に帰りましょ?」
そう言ってそっとマリィの背中に触れたとき、
「キャーーー!!」
と叫んで、マリィがその場に倒れ込んだ。
「え?」
待って待って。私、まだマリィさんに触れてもいないんだけど。そんなふうに倒れ込んだら、まるで私が彼女を倒したように見えるんじゃ・・・。
「何が起こっているんだ?!」
タイミングの悪いことに、ウルブス王子が現れる。
「ウルブス様っ!!私っ、シエリに乱暴されたんですっっ。」
大粒の涙を流して、マリィがウルブス王子にすがりついた。
「シエリ!!何をしているんだ!!」
そんな怒鳴られても・・・。
自作自演ですって。
30
お気に入りに追加
1,709
あなたにおすすめの小説

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?
satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません!
ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。
憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。
お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。
しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。
お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。
婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。
そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。
いきなりビックネーム過ぎませんか?

隣国の王子に求愛されているところへ実妹と自称婚約者が現れて茶番が始まりました
歌龍吟伶
恋愛
伯爵令嬢リアラは、国王主催のパーティーに参加していた。
招かれていた隣国の王子に求愛され戸惑っていると、実妹と侯爵令息が純白の衣装に身を包み現れ「リアラ!お前との婚約を破棄してルリナと結婚する!」「残念でしたわねお姉様!」と言い出したのだ。
国王含めて唖然とする会場で始まった茶番劇。
「…ええと、貴方と婚約した覚えがないのですが?」

【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります
禅
恋愛
妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。
せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。
普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……
唯一の味方は学友のシーナのみ。
アリーシャは幸せをつかめるのか。
※小説家になろうにも投稿中

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる