3 / 30
3.王子は誰のもの?
しおりを挟む
「シエリ様は本当に優しいですよねぇ。」
「本当になぁ。愛人のことで傷ついただろうに、あんなに穏やかでいられるなんてさ。信じられんよ。」
「本当に、あの王子は見る目が無いわよね。マリィなんかより、シエリ様のほうがよっぽど美しくて素敵な方なのに・・・。」
ある日の夕方。キッチンで料理を作るシェフとメイドはシエリについて話していた。
ウルブス王子の婚約者として城にやってきた、ウォルターン家の令嬢シエリ。城の使用人達は皆、シエリに親しみを持っていた。
ウォルターン家というと、デンバー国で五本の指に入る有力貴族。特に、シエリの父の代になってからは、ウォルターン家は急速に力をつけていた。
それにも関わらず、シエリは決して偉ぶることなく、いつも優しい。日々、厨房に来て皿を洗い、庭の掃除を手伝うシエリのことを、皆が慕っていた。
「シエリ様が幸せになればいいのだけれど。」
「なーに。今にウルブス様もシエリ様の美しさと優しさにあっという間に惚れ込むさ。」
「そう?私はシエリ様にもっと良い人がいると思うけどねぇ。」
◇◇◇
使用人達の評価が高まる一方で、この状況を快く思わない女がいた。
「何よ!ずいぶん図太い女ね!!」
ウルブスの愛人マリィは爪を噛み、悪態をついた。
「ウルブス様の王妃になるのは私よ・・・!」
愛人のままでいるつもりはない。
シエリを城から追い出して、自分こそが王妃になるのだと、マリィは強く望んでいた。
シエリを追い出すため、何度か彼女に嫌がらせをこころみたマリィだったが・・・
「残念だけど、シエリ様に手出しはさせないわ!」
ニューナを中心とするメイド達に邪魔され失敗続きだった。
「なんなの!!あの女!!」
水の入ったバケツを床にたたきつけ、マリィは地団駄を踏んだ。本当はこの水でシエリの服を水浸しにしてやろうと目論んでいたのだが・・・部屋に入ろうとしたところをニューナに見つかり、鍵をかけられてしまった。
「もうこうなったら、直接追い出してやるわ!!今に見てなさい!」
◇◇◇
「うーん!いい天気ね!」
いつものようにメイド服を着たシエリは大きく伸びをした。ウルブスと婚約してからもう2ヶ月が経っているが、初日以外では彼と言葉を交わしたのは数回だけだ。
それも、パーティに出席し仲が良いふりをする必要があったときに限る。普段は姿を見かけることすらない。
自分がウルブスの婚約者であることすら、忘れてしまいそうだったのだが・・・突如平穏を邪魔する女が現れた。
「あらぁ。シエリちゃんじゃないの。そんな薄汚れた服を来て、ウルブスの婚約者として恥ずかしくないのぉ?」
そう言って、庭に現れたのはウルブスの愛人、マリィだった。
ピンク色の派手なドレスに大きく空いた胸元。美しいが、怖い印象を与える。私は思わず後退りした。
「本当になぁ。愛人のことで傷ついただろうに、あんなに穏やかでいられるなんてさ。信じられんよ。」
「本当に、あの王子は見る目が無いわよね。マリィなんかより、シエリ様のほうがよっぽど美しくて素敵な方なのに・・・。」
ある日の夕方。キッチンで料理を作るシェフとメイドはシエリについて話していた。
ウルブス王子の婚約者として城にやってきた、ウォルターン家の令嬢シエリ。城の使用人達は皆、シエリに親しみを持っていた。
ウォルターン家というと、デンバー国で五本の指に入る有力貴族。特に、シエリの父の代になってからは、ウォルターン家は急速に力をつけていた。
それにも関わらず、シエリは決して偉ぶることなく、いつも優しい。日々、厨房に来て皿を洗い、庭の掃除を手伝うシエリのことを、皆が慕っていた。
「シエリ様が幸せになればいいのだけれど。」
「なーに。今にウルブス様もシエリ様の美しさと優しさにあっという間に惚れ込むさ。」
「そう?私はシエリ様にもっと良い人がいると思うけどねぇ。」
◇◇◇
使用人達の評価が高まる一方で、この状況を快く思わない女がいた。
「何よ!ずいぶん図太い女ね!!」
ウルブスの愛人マリィは爪を噛み、悪態をついた。
「ウルブス様の王妃になるのは私よ・・・!」
愛人のままでいるつもりはない。
シエリを城から追い出して、自分こそが王妃になるのだと、マリィは強く望んでいた。
シエリを追い出すため、何度か彼女に嫌がらせをこころみたマリィだったが・・・
「残念だけど、シエリ様に手出しはさせないわ!」
ニューナを中心とするメイド達に邪魔され失敗続きだった。
「なんなの!!あの女!!」
水の入ったバケツを床にたたきつけ、マリィは地団駄を踏んだ。本当はこの水でシエリの服を水浸しにしてやろうと目論んでいたのだが・・・部屋に入ろうとしたところをニューナに見つかり、鍵をかけられてしまった。
「もうこうなったら、直接追い出してやるわ!!今に見てなさい!」
◇◇◇
「うーん!いい天気ね!」
いつものようにメイド服を着たシエリは大きく伸びをした。ウルブスと婚約してからもう2ヶ月が経っているが、初日以外では彼と言葉を交わしたのは数回だけだ。
それも、パーティに出席し仲が良いふりをする必要があったときに限る。普段は姿を見かけることすらない。
自分がウルブスの婚約者であることすら、忘れてしまいそうだったのだが・・・突如平穏を邪魔する女が現れた。
「あらぁ。シエリちゃんじゃないの。そんな薄汚れた服を来て、ウルブスの婚約者として恥ずかしくないのぉ?」
そう言って、庭に現れたのはウルブスの愛人、マリィだった。
ピンク色の派手なドレスに大きく空いた胸元。美しいが、怖い印象を与える。私は思わず後退りした。
34
お気に入りに追加
1,709
あなたにおすすめの小説

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。

隣国の王子に求愛されているところへ実妹と自称婚約者が現れて茶番が始まりました
歌龍吟伶
恋愛
伯爵令嬢リアラは、国王主催のパーティーに参加していた。
招かれていた隣国の王子に求愛され戸惑っていると、実妹と侯爵令息が純白の衣装に身を包み現れ「リアラ!お前との婚約を破棄してルリナと結婚する!」「残念でしたわねお姉様!」と言い出したのだ。
国王含めて唖然とする会場で始まった茶番劇。
「…ええと、貴方と婚約した覚えがないのですが?」

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?
satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません!
ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。
憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。
お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。
しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。
お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。
婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。
そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。
いきなりビックネーム過ぎませんか?
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります
禅
恋愛
妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。
せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。
普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……
唯一の味方は学友のシーナのみ。
アリーシャは幸せをつかめるのか。
※小説家になろうにも投稿中

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる