【完結】王子様に婚約破棄された令嬢は引きこもりましたが・・・お城の使用人達に可愛がられて楽しく暮らしています!

五月ふう

文字の大きさ
上 下
1 / 30

1.王子様は愛人と一緒です

しおりを挟む


「どういうことですか・・・?私は、ウルブス様の婚約者としてここに来たはずで・・・。その女性は・・・?」

ここはデンバー国本宮殿。第二王子ウルブスの部屋。

私が婚約するはずのウルブスは、見知らぬ女と手を繋いで、私を待っていた。

私はデンバー国有数の名家の一人娘シエリ・ウォルターン。17歳。華やかなドレスに圧倒的に負ける地味な顔。どんくさい私は、これまで異性に見向きもされなかった。   

それなのに、急にウルブスに婚約を申し込まれるなんて、最初からおかしいとは思ってたんだ。

でもまさか城に来た初日に、愛人と一緒にお出迎えされるなんてね・・・。

「よく来てくれたね。シエリ。
 "婚約者"として君を歓迎するよ。」

爽やかな笑顔を浮かべて、ウルブスが私に言うがーー言葉に行動が伴っていない。

なぜ婚約者を愛人と一緒に部屋で待っているの?

「えっと、彼女は・・・?」

私がちらりと目線を向けると、女性はにっこりと微笑んだ。
 
「彼女はマリィ。僕の愛する人だよ。」

柔らかい癖のある茶髪。
整った顔立ちのウルブスは悪びれもなく私に言った。彼は隣にたつ金髪の女性の腰に手を回している。

ちょっと待ってくださいな。
私、今から貴方と結婚するはずでは?

「あ、あの・・・?それではこの婚約は・・・?」

だめだ、上手く言葉が出てこない。
気が弱くて、緊張しい。
言いたいことを言えない私。
ウルブス王子との婚約も、自分の意志でなく、両親が決めたことだ。

「ああ、安心してくれ。婚約破棄してくれ、なんて言うつもりはないよ。」

「・・・そう、ですか。」

それは、良いこと・・・?
ウォルターン家にとっては間違いなく良いことなんだろうけど。父には二度と帰ってくるなと言われて、私は城に来た。

王族とのつながりは、貴族にとって大切なことだから。

「君はただ、僕の婚約者として何も言わずに、この城で平和に暮らしていればいいだけさ。」

つまり、愛人がいても文句をつけずにお飾りの妻のままでいろと言うわけですか。

"王子の婚約者"として城にやって来たのに、王子の部屋には彼の愛人がいた。
これ以上惨めなことがあるだろうか。

怒りと悲しみが同時に込み上げてくる。

「シエリ、わかったかい?」

有無を言わせないウルブスの口調に、私はつい頷いてしまった。

「は、はい。」

きっと、ウルブスは私が言い返せないだろうと最初から分かっていたんだ。だから、私を彼の婚約者に選んだ・・・。

「だいじょうぶ。公の場では君を愛する妻として大切に扱うよ。特に君の父上に心配させるようなことはしないと誓う。」

「あ、ありがとうございます。」

なぜ、私はお礼を言っているのだろう。
ウルブス王子は優しい口調で、最低なことを言っているのに。

彼が必要なのは、身分が高いが文句をつけない大人しい女。私は、彼に利用されるだ
けだ。

「良かったわね。シエリちゃん。」

ウルブスの愛人であるマリィが目を細めて私に言った。

金髪に豊満な体つきのマリィ。目を見張るほどの美人だ。社交界では見たことがないから、きっと平民の女性だろう。

「良かった・・・?そもそも、なぜ貴方がここにいるのですか?」

ふいに怒りが込み上げてきた。
あまりにも、私を馬鹿にしすぎだ。
愛人がいるならせめて、私に気づかれない努力くらいしたらいいのに。

マリィは私をあざ笑った。

「ウルブスが貴方に会うよう私に頼んだの。彼は私を愛していることを隠しておくつもりはなかったのよ。誠実だと思わない?」

怒りで顔が熱くなってくるのが分かる。
どこが誠実なの?

「お、思いません!」

勇気を振り絞って言うと、ウルブスは私を睨みつけた。

「マリィを虐めるのはやめてくれないか?君は優しい子だと聞いていたんだが・・・見込み違いだったかな。

これ以上何か言ったら、従者への態度を理由に婚約破棄させてもらうよ。」

「そんな・・・」

シエリは言葉に詰まり、呆然とウルブスを見つめた。

地味でどんくさい私だって、幸せな未来を夢見ていたのに。目の前が真っ暗になっていく。

「わかったらさっさと部屋を出ていってくれ。用があるときは僕から声をかける。君から僕の部屋には何があっても入ってはいけないよ。」

ウルブスは私にそう言い放った。

「ふふふふっ。」

マリィの笑い声が部屋に響く。

「さ、早く出ていって?」

マリィが私の腕を掴んで、外へと追い出す。彼女の爪が肌に食い込んで痛い・・・。

バタンッ

閉じられたドアを私は呆然と見つめていた。
    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。 昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。 入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。 その甲斐あってか学年首位となったある日。 「君のことが好きだから」…まさかの告白!

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?

satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません! ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。 憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。 お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。 しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。 お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。 婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。 そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。 いきなりビックネーム過ぎませんか?

婚約破棄されたショックで前世の記憶を取り戻して料理人になったら、王太子殿下に溺愛されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 シンクレア伯爵家の令嬢ナウシカは両親を失い、伯爵家の相続人となっていた。伯爵家は莫大な資産となる聖銀鉱山を所有していたが、それを狙ってグレイ男爵父娘が罠を仕掛けた。ナウシカの婚約者ソルトーン侯爵家令息エーミールを籠絡して婚約破棄させ、そのショックで死んだように見せかけて領地と鉱山を奪おうとしたのだ。死にかけたナウシカだが奇跡的に助かったうえに、転生前の記憶まで取り戻したのだった。

隣国の王子に求愛されているところへ実妹と自称婚約者が現れて茶番が始まりました

歌龍吟伶
恋愛
伯爵令嬢リアラは、国王主催のパーティーに参加していた。 招かれていた隣国の王子に求愛され戸惑っていると、実妹と侯爵令息が純白の衣装に身を包み現れ「リアラ!お前との婚約を破棄してルリナと結婚する!」「残念でしたわねお姉様!」と言い出したのだ。 国王含めて唖然とする会場で始まった茶番劇。 「…ええと、貴方と婚約した覚えがないのですが?」

【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります

恋愛
 妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。  せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。  普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……  唯一の味方は学友のシーナのみ。  アリーシャは幸せをつかめるのか。 ※小説家になろうにも投稿中

処理中です...