11 / 14
11 隠し通路
しおりを挟む
そして、私は隠し通路の中にいた。ドノバル王を助けるためには、まずはドノバル王に会わなくてはいけない。
私はそのための隠し通路を知っていた。アトラスやヒィナに見つかったら危険だから一人で行こうと思っていたのだが、レブロムがついてきてしまった。
「レブロムは着いてくること無かったのに。」
「サクラを一人で行かせられるわけ無いだろ。」
狭い隠し通路の中を、レブロムは身をかがめて歩いている。この隠し通路は私が今は亡き王妃様のカノル様に教えてもらった道だ。この通路は、ドノバル様の部屋にも通じている。
結婚前夜、私はこの隠し通路を使って外に出ようとしていたのだ。
「ドノバル様は、私の言葉を信じてくださるかしら?」
私はこれから、アトラスとヒィナを陥れるための策を講じる。だが、それにはドノバル様の協力と私を信じてもらうことが必要だった。
"アトラスとヒィナがドノバル王に毒を入れていたとしたら"絶対に私が食い止めてやる。
「信じてくれるよ。父上は、本当にサクラを娘のようにかわいがっているんだから。」
私もドノバル様を本当の父親のように思っているんだ。ドノバル様をこのままアトラスとヒィナに殺されてしまうわけにはいかない。
「この上が、ドノバル様の寝室よ。」
私はアトラスの耳元で囁いた。私は耳をすまして、部屋の様子をうかがった。どうかアトラスとヒィナに見つかりませんように。
私はゆっくり、秘密扉を開けた。
◇◇◇
「ドノバル様。」
私はドノバル様の枕元に顔を寄せて囁いた。ドノバル様は微かに身じろぎをすると、薄く目を開けた。
「サ、サクラ、。」
ドノバル様は見る影もなくやつれている。これがアトラスとヒィナのせいだとしたら、絶対に許せない。
「私が絶対にドノバル様を助けます。そのために、一つだけ、お頼みしたいことがあるのですー。」
◇◇◇
ドノバル様の部屋から戻った私はアトラスの食事担当のメイドを呼び、一つ頼み事をした。
「アトラスの食事を出すのを、ドノバル様より少し遅らせてくれないかしら?」
「わかりました。サクラ様の頼みならば。」
「ありがとう。」
◇◇◇
そして、私の作戦が始まった。ドノバル様を救うための、私の作戦。
「ドノバル様の食事と、アトラスの食事を入れ替える。」
私はゆっくりとレブロムに言った。
「ドノバル様が体調を崩されたタイミングを考えても、ヒィナがドノバル様に毒を持っている可能性が高いわ。少しづつ体を蝕むような毒よ。」
ドノバル様がどれほど体調が悪くとも、王の食事は誰よりも豪華にしなくてはならない習わしだった。他の貴族と、ドノバル様の食事を入れ替えることはできない。だが、皇太子であるアトラスの食事とドノバル様の食事は同一のものである。
「ヒィナが一人になって、毒を盛った後に食事を入れ替えるのよ。」
「そんなことできるのか?」
「もちろん、全ての食事を入れ替えることなんてできないわ。ただ、お汁物だけ、ならどうかしら?」
ドノバル様はお汁物だけしか、ほとんど口にすることができていないとメイドが言っていた。ならば、そこにヒィナが毒を含ませている可能性は高い。隠し通路からならば、ドノバル様とアトラスの食事を入れ替えることは可能だ。
「やってみせるわ。ドノバル様を救うためだもの。」
私はあくまでドノバル様の食事とアトラスの食事を入れ替えるだけで、アトラスに毒を盛るわけではない。
この作戦が失敗するならば、アトラスとヒィナはドノバル王に毒を持っていなかったっていう、証明になるだけ。それが失敗したら、また次の作戦を考えればいいのよ。
◇◇◇
私はそのための隠し通路を知っていた。アトラスやヒィナに見つかったら危険だから一人で行こうと思っていたのだが、レブロムがついてきてしまった。
「レブロムは着いてくること無かったのに。」
「サクラを一人で行かせられるわけ無いだろ。」
狭い隠し通路の中を、レブロムは身をかがめて歩いている。この隠し通路は私が今は亡き王妃様のカノル様に教えてもらった道だ。この通路は、ドノバル様の部屋にも通じている。
結婚前夜、私はこの隠し通路を使って外に出ようとしていたのだ。
「ドノバル様は、私の言葉を信じてくださるかしら?」
私はこれから、アトラスとヒィナを陥れるための策を講じる。だが、それにはドノバル様の協力と私を信じてもらうことが必要だった。
"アトラスとヒィナがドノバル王に毒を入れていたとしたら"絶対に私が食い止めてやる。
「信じてくれるよ。父上は、本当にサクラを娘のようにかわいがっているんだから。」
私もドノバル様を本当の父親のように思っているんだ。ドノバル様をこのままアトラスとヒィナに殺されてしまうわけにはいかない。
「この上が、ドノバル様の寝室よ。」
私はアトラスの耳元で囁いた。私は耳をすまして、部屋の様子をうかがった。どうかアトラスとヒィナに見つかりませんように。
私はゆっくり、秘密扉を開けた。
◇◇◇
「ドノバル様。」
私はドノバル様の枕元に顔を寄せて囁いた。ドノバル様は微かに身じろぎをすると、薄く目を開けた。
「サ、サクラ、。」
ドノバル様は見る影もなくやつれている。これがアトラスとヒィナのせいだとしたら、絶対に許せない。
「私が絶対にドノバル様を助けます。そのために、一つだけ、お頼みしたいことがあるのですー。」
◇◇◇
ドノバル様の部屋から戻った私はアトラスの食事担当のメイドを呼び、一つ頼み事をした。
「アトラスの食事を出すのを、ドノバル様より少し遅らせてくれないかしら?」
「わかりました。サクラ様の頼みならば。」
「ありがとう。」
◇◇◇
そして、私の作戦が始まった。ドノバル様を救うための、私の作戦。
「ドノバル様の食事と、アトラスの食事を入れ替える。」
私はゆっくりとレブロムに言った。
「ドノバル様が体調を崩されたタイミングを考えても、ヒィナがドノバル様に毒を持っている可能性が高いわ。少しづつ体を蝕むような毒よ。」
ドノバル様がどれほど体調が悪くとも、王の食事は誰よりも豪華にしなくてはならない習わしだった。他の貴族と、ドノバル様の食事を入れ替えることはできない。だが、皇太子であるアトラスの食事とドノバル様の食事は同一のものである。
「ヒィナが一人になって、毒を盛った後に食事を入れ替えるのよ。」
「そんなことできるのか?」
「もちろん、全ての食事を入れ替えることなんてできないわ。ただ、お汁物だけ、ならどうかしら?」
ドノバル様はお汁物だけしか、ほとんど口にすることができていないとメイドが言っていた。ならば、そこにヒィナが毒を含ませている可能性は高い。隠し通路からならば、ドノバル様とアトラスの食事を入れ替えることは可能だ。
「やってみせるわ。ドノバル様を救うためだもの。」
私はあくまでドノバル様の食事とアトラスの食事を入れ替えるだけで、アトラスに毒を盛るわけではない。
この作戦が失敗するならば、アトラスとヒィナはドノバル王に毒を持っていなかったっていう、証明になるだけ。それが失敗したら、また次の作戦を考えればいいのよ。
◇◇◇
33
お気に入りに追加
529
あなたにおすすめの小説
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど
ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。
でも私は石の聖女。
石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。
幼馴染の従者も一緒だし。
虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる
珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて……
ゆっくり更新になるかと思います。
ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m
何でも欲しがる妹を持つ姉が3人寄れば文殊の知恵~姉を辞めます。侯爵令嬢3大美女が国を捨て聖女になり、幸せを掴む
青の雀
恋愛
婚約破棄から玉の輿39話、40話、71話スピンオフ
王宮でのパーティがあった時のこと、今宵もあちらこちらで婚約破棄宣言が行われているが、同じ日に同じような状況で、何でも欲しがる妹が原因で婚約破棄にあった令嬢が3人いたのである。その3人は国内三大美女と呼ばわれる令嬢だったことから、物語は始まる。
前世の記憶を持つ守護聖女は婚約破棄されました。
さざれ石みだれ
恋愛
「カテリーナ。お前との婚約を破棄する!」
王子殿下に婚約破棄を突きつけられたのは、伯爵家次女、薄幸のカテリーナ。
前世で伝説の聖女であった彼女は、王都に対する闇の軍団の攻撃を防いでいた。
侵入しようとする悪霊は、聖女の力によって浄化されているのだ。
王国にとってなくてはならない存在のカテリーナであったが、とある理由で正体を明かすことができない。
政略的に決められた結婚にも納得し、静かに守護の祈りを捧げる日々を送っていたのだ。
ところが、王子殿下は婚約破棄したその場で巷で聖女と噂される女性、シャイナを侍らせ婚約を宣言する。
カテリーナは婚約者にふさわしくなく、本物の聖女であるシャイナが正に王家の正室として適格だと口にしたのだ。
婚約破棄から聖女~今さら戻れと言われても後の祭りです
青の雀
恋愛
第1話
婚約破棄された伯爵令嬢は、領地に帰り聖女の力を発揮する。聖女を嫁に欲しい破棄した侯爵、王家が縁談を申し込むも拒否される。地団太を踏むも後の祭りです。
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる