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あんたがいなければ、私はあの人と婚約してたの!!

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「ひまだなぁ。」


今日は王室主催の感謝祭パーティ。


ホールには沢山の貴族が

集まっていた。



会場には優雅な音楽が流れている。


貴族達は皆、ダンスをしたり

お喋りをしたり、

楽しそうにしている。




そんな中私は一人、

壁にもたれかかって

ぼんやりとパーティを見ていた。




私の名前はハルカ・フォーフォード。

この会場でたった一人の平民である。







「あんなところで一人、



 壁に寄りかかって、

 みっともないわぁ。」



私の前を通り過ぎたサリーナ嬢が

これみよがしにそう言った。



サリーナ嬢はこの国の上級貴族である。

私のことを、

こうやってチクチク虐めてくるのだ。





このやろう。

私に聞こえるように言ってるな?



「何か言いましたか?」



サリーナ嬢は

足を止めて振り返ると


私を憎々しげに見た。




「そんなところで壁に寄りかかって、


 みっともないと言ったの。」







「すいませんね。



 アレフルドがいなくて、


 暇なもので。」




アレフルドは私の婚約者だ。


そして、

この国の王子でもある。



「アレフルド、なんて、

 気安く呼ばないで頂戴!! 」



サリーナ嬢は、

ヒステリックに叫んだ。




「アレフルドは私の婚約者です。


 最も親しい間柄なのですから、



 呼び捨てして当然でしょ?」



私は正式なアレフルドの

婚約者だ。



貴方にそんな無礼を言われるような

立場じゃないんだけど?




「平民のくせに


 偉そうに!!」



貴方はホント

お決まりのセリフしか言えないのね。


サリーナ嬢。


「平民だから、

 アレフルドは私を



 愛してくれたのかもしれませんよ?」

私は戯けて答えた。





サリーナ嬢は

ワイングラスを片手に

わなわなと震えている。



「貴方さえいなければ!!


 私が王子の婚約者だったのに!!」



サリーナ嬢は

そう叫ぶと


私に向かって


グラスを投げつけた。



あっぶな!


間一髪、ワイングラスは避けたものの、


ワインが


私の髪に飛び散った。




ぽたぽたと、

私の髪からワインが落ちていく。




あんなに和やかだった会場は、

シンと静まりかえっていた。




みんなが私達の修羅場を見ている。



ねぇ、

誰か助けてくれても


いいんじゃない?



私が、

濡れた髪を押えて

あたりを見渡すも、



誰も私と目を合わせようとはしなかった。



私は、

サリーナ嬢を睨みつけて

その場をあとにした。






--------------------------------------



「ハルカ。


 俺がいない間に、

 ごめんな。




 サリーナに、酷いことされたね。」

アレフルドは

私の頭を優しく撫でて言った。





王子アレフルドの寝室。



パーティ会場を後にし、



シャワーを浴びた私は

ベットの上に座って俯いていた。





アレフルドが

ゆっくりと私を抱きしめた。




「怖かったね。」



アレフルドの胸に

顔を埋める。


じわじわと涙が溢れてきた。




「平民であることは、


 そんなに悪いことですか、、?」




初めてアレフルドと出会ったとき、

私は彼が王子だと知らなかった。




彼は貴族の身分を隠していたのだ。



ただ純粋に、

人としてアレフルドを

好きになっただけなのに。





「そんなこと、


 絶対にないよ。

  

 ハルカ。

 僕の可愛い天使。」



アレフルドは

私の頬を両手で挟んだ。




「サリーナに、


 何らかの罰を与えようか、、?」

アレフルドは

尋ねた。



罰なんて、

よくわからないのです。



自分の言葉一つで、


誰かの運命が変わるのが怖かった。



私はアレフルドの胸に

頭をぐりぐりした。



「まだ、今はもう少し考えます。」



少し、時間がほしいのだ。


あんなふうにいじめられても
 
強くいられる自分になるために。




そうじゃなきゃ、

アレフルドの側には、


いられないのかもしれない。





------------------------------------



「この馬に、


 何か細工することはできない?



 馬術会の途中で、


 馬が暴れ出して


 乗っている人が死んじゃうような、


 そんな細工よ。」



パーティから数日だったある夜。


令嬢サリーナは

馬小屋をお忍びで訪れていた。




馬小屋の管理人は

眉を顰めた。




「まぁ、


 できなくはないですが、、。」



サリーナは

管理人の手に

大量の金貨を握らせた。



「ね、これでお願い。



 ハルカが乗る馬に、



 当日細工をして頂戴。



 あの子を殺したいの。」




サリーナはにやりと笑った。




------------------------------------





「馬術会、楽しみだねぇ!


 アレフルド!!」



私は大きく伸びをした。


今日は馬術会が開かれる日だ。



実家で馬を飼っていたのもあって、

私はずっと馬術会を楽しみにしていた。



馬に乗る爽快感は

何者にも変えられない。



「君は本当に馬が好きだね。



 ほら、


 ここが馬小屋だよ。



 君の馬も用意されてるはずさ。」



アレフルドが

嬉しそうに私の手を引いた。




馬小屋の前には

一人の管理人が

私達を待っていた。




「さぁ、

 頼んでいたハルカの馬を



 見せておくれ。」 

アレフルドは

管理人に声をかけた。



「こちらです。



 お嬢様。」



管理人が

引いてきたのは、


真っ白い牝馬。




凛々しい顔付きで、


とっても可愛い。


私は、

馬に触れた。



「ヒヒン!!」


馬は顔を振って

鳴いた。


 

可愛い、可愛いんだけど、、。




「なんかこのお馬さん、


 体調が悪そうだなぁ。」



なんとなくの勘だけど、

この子には

乗らないほうが良い気がする、、。





管理人は

焦った顔で私を見た。




「いいえ!


 そんなことはありません。



 この子はハルカ様のために



 連れてきた子ですし、



 とってもおとなしい子です。」



そうはいっても。

体調が悪い馬に乗るのは、


危ないし。



「ごめんなさい。


 でも、


 違う子を連れてきてもらってもいい?」



管理人は

渋々うなずいた。



「わかりました。」






------------------------------------


「金はもう、


 使っちまったしな、、。



 まぁ、良い。



 あの馬を、あのお嬢様に


 渡せば良いんだ。」


管理人は呟いた。



--------------------------------------



「あー!気持ちいい!」


私は一人、

馬を走らせていた。



お城には、

居場所がなくて、

ずっと寂しかった。




だけど、

こうして馬を走らせていると

何もかも忘れられる気がする。




その時。




「きゃーーーー!!!」


という、

女性の叫び声がした。


私は手綱を引いて、

叫び声の方に急いだ。




叫び声は、

サリーナだ。



さっき管理人に勧められた白い馬が、


サリーナを乗せたまま暴れている。



だから、

あの馬は危ないって


いったのに!



私は馬を並走させ、


必死で手を伸ばした。




「サリーナ!!!



 捕まって!!」 


この先には、

崖が待っている。


このまま進んだら、

サリーナの命が危ない。




「サリーナ!!


 早く!!」



サリーナの手を掴み、


なんとか自分の馬に、

乗りうつらせた。





サリーナは

肩で息をしている。




「なんで、、、



 なんであんたに、


 助けられたの、、。」




サリーナは、

ぽろぽろと涙を流した。




「あんたなんか、


 だいっきらいなのに。」


------------------------------------



後日、

この事件に関する調査が行われた。



管理人は、

自らの罪を自白し、

同時にサリーナの罪も明らかになった。




管理人、サリーナともに、

殺害未遂容疑で逮捕され、


収監されることとなった。



一方の私は、

サリーナを救った武勇伝が

民衆に伝わり、

大きな人気を博すことになったのだった。










    
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