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51. 国王様と痛み
しおりを挟むーーーーレオナルドには、窓の外がどう映っているのかな?
次の村に向かう一本道を馬車は進んでいる。
「もう少しで、休憩の村につきそうだね。」
遠くに村が見えてきた。
「疲れた……もう休みたい。」
レオナルドは弱音を漏らす。
たぶん村には、貧しい人たちが沢山住んでいるだろう。それはレオナルドが生まれて初めて見る風景だ。
ーーーー初めて村に着いた時、レオナルドは何を思うのかな?
レオナルドはリュカの父親を捜してくれると約束してくれたレオナルド。やっぱり彼は、わがままなだけの王じゃないとリュカは感じる。
「楽しみだね。」
ーーーーねえ、レオナルド。この国を救うのは貴方じゃないかな。
◇◇◇
ーーーー馬鹿なやつ。
レオナルドは横目でちらりとリュカを見た。急に泣き出すかと思えば、名前を呼ばれて笑顔になる。
「もうすぐ村に着くよ。」
窓の外を覗くリュカをレオナルドはぼんやりと見つめる。手を伸ばし、彼女の銀色の髪に触れる。
「なーに?」
リュカは首を傾げた。当初の警戒心はなくなっている。
”ただのレオナルドだよ”
リュカにとってレオナルドは王ではないのだという。
ーーーー平民のくせに。
レオナルドの心には腹立たしさと戸惑いと、ほんの少しの嬉しさが入り混じっている。リュカは不思議な女だ。レオナルドは過去を思い出して、怒りに支配されることはよくある。そうなると、怒りをコントロールする方法がレオナルドにはわからない。だが、リュカと一緒にいると、不思議と怒りが収まるのだ。その理由はわからない。
ーーーーリュカが、馬鹿だからだ。
「陛下。今日の休憩場所につきました。」
兵士の言葉にレオナルドははっとする。
ーーーー僕は王だ。
顔をしかめ、レオナルドは馬車を降りた。
馬車から出ると、だんだんと太陽は沈みかけていた。冷たい風が吹き、リュカが体を震わせている。
国王が村に訪れているにも関わらず、村人たちはレオナルドを睨みつけている。彼らの服は泥に汚れていて、家々は壊れそうなほど痛んでいる。
レオナルドは息を飲み込んだ。どこからか、臭いにおいがする。やつれた村人たちの目は怒りに燃え、敵意が滲むような視線を向けている。
ーーーー頭が痛い……。
レオナルドは頭を押さえてうずくまった。そこに広がっているのは、彼が今まで見たことのなかった世界だ。
『ねえ、レオナルド!お城の外に行きましょう。食べるものが無くて、苦しんでいる人たちが沢山いるのよ!』
昔、アリスに言われた言葉が頭をよみがえる。城の外に出ていく彼女を必死になって止めた時だったと思う。彼女は、レオナルドにそう訴えたのだ。
ーーーー僕は知らない……!僕は何も悪くない!
レオナルドはその場にうずくまり、目をつぶった。頭が割れるよな痛みに襲われ、吐き気がする。うずくまったレオナルドの背中を、リュカがそっとさすった。
「なぜあいつらは僕を睨む……?!僕は何もしていない……。」
頭を押さえて、レオナルドはうめく。
「レオナルドが……貴族で、国王だから。みんな……重い税で苦しんでいるからだよ。」
淡々とリュカが言った。
ーーーー裏切者!!ついさっき、僕はお前にとって王ではないといったではないか!
レオナルドは拳を握り締めた。
「僕は何も決めていない!フィリップス公爵がそうすると決めただけだ!」
「そうかもしれないけれど、レオナルドはスウェルド国の国王なんだよ。」
「うるさい!うるさい!うるさい!!どうすればいいんだよ!?とにかく僕は、これ以上あの目で見られたくない!どうすればあいつらは……僕を恨まなくなるんだよ?!」
頭が痛くてたまらない。村人たちからの視線には堪えるのは苦痛だ。
ーーーー僕は悪くない!僕のせいじゃない!
「良い方法があるよ。レオナルド。」
優しい声で、リュカがレオナルドの名前を呼ぶ。レオナルドは閉じていた目を開き、リュカを見つめた。
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