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49. 国王様と純愛
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「始めてアリスと出会ったのは、6歳か、5歳の時らしいが、はっきり覚えていない。とにかく物心ついた時からずっとアリスはずっとそばにいた。」
最初は戸惑いながらも、レオナルドは徐々に自分とアリスについて話し始めた。言葉に詰まることもあったが、しだいに滑らかに話せるようになっていく。リュカは黙って、レオナルドの言葉に耳を傾けていた。
「昔のアリスは…僕にとってすべてだったんだ。逆に、アリスにとっても僕がすべてだった。」
レオナルドは、母親を幼少期に亡くし、父親も気軽に話せる間柄ではなかった。広い城の中で、レオナルドは孤独な日々を送り、友達は一人もいなかった。周囲の人々からは異なる存在として扱われ、自分の弱さを示すことは許されない。
皇太子レオナルドが心を開ける唯一の存在は、アリスだけ。
だからこそ、レオナルドにとってアリスはなくてはならない人だった。彼にとって、アリスは自分の脆さを受け入れてくれる唯一の相手であり、アリスの存在が彼を保つ力だったのだろう。
「本当に、大切な人だったんだね。」
「……お前には、僕とアリスがどれほど強く結びついていたのか、わかるまい……。」
リュカはレオナルドがアリスに対してどれだけの想いを寄せていたかっわかった。レオナルドがアリスの名前を口にするたび、彼の顔には苦悩が浮かぶ。今にも泣きだしてしまうのではないかと心配になるほど。
ーーーーレオナルドがこんなに大切に思っていたのに、なんでアリスは城を去ってしまったんだろう?
リュカはレオナルドとアリスの間に何が起こったのか、何も知らない。
「だが、アリスは……僕を裏切ったんだ。外の世界に出た後アリスは……僕を見捨てた!」
再び、レオナルドの目に怒りが戻る。
「外の世界に出たアリスはおかしくなったんだ。二人でいることが幸せだったはずなのに!それなのに、アリスは僕以外の何かよくわからないものにとりつかれてしまった!」
レオナルドは頭をかきむしる。
ーーーーそうか、アリス様は外の世界で、私たちが苦しんでいることを知ったんだ…。
外の世界を知ったアリスと、知らないレオナルド。二人の間に亀裂が生まれるのは避けられなかったかもしれない。
「僕がどれだけの気持ちで、アリスの帰りを待ち焦がれていたか、分かっているか?それなのに…彼女は外の世界の人々を救いたいと言い出した!アリスを洗脳した者たちを、絶対に許さない!」
「レオナルド……。」
充血したレオナルドの目からは涙がこぼれ、顔は苦痛で歪んでいる。何年も前の出来事をレオナルドは今も憎しみと悲しみを抱えて、鮮明に覚えているのだろう。
ーーーーアリス様を待つ一週間が本当につらかったんだろうな。
リュカもまた、父親が姿を消した際には恐怖に震えながら待っていた。もし父親が帰ってきて、スウェルド兵を助けようと言ったなら、リュカも怒り心頭になっていただろう。
レオナルドはそれから、何が起こったのかを怒りを込めて語っていった。
どれだけ時間が経っても、アリスが元に戻ってくれなかった。彼女はレオナルドを置いて、外に出てしまうようになる。愛人のロゼッタが妊娠したことで、ようやく救われるかと思ったが、ロゼッタは嘘をついてた。そして、毒殺未遂事件が起こり、レオナルドはアリスを疑った。そして今、アリスは生きているかわからない。
ーーーーどうして……こんなにも二人はすれ違わなければいけなかったんだろう?
レオナルドの話を聞いて、リュカは胸が締め付けられる。確かにアリスは正しい選択をしたかもしれないけれど、レオナルドの孤独さにもっと気が付いてあげて欲しかった。
「アリスが、先に僕を裏切った……だから、僕はあいつを城から追い出してやったんだ……!」
レオナルドは苦悩に満ちた表情で叫んだ。悲痛な叫びに、思わずリュカの目から涙が零れ落ちた。
「……なぜお前が泣くんだ?」
最初は戸惑いながらも、レオナルドは徐々に自分とアリスについて話し始めた。言葉に詰まることもあったが、しだいに滑らかに話せるようになっていく。リュカは黙って、レオナルドの言葉に耳を傾けていた。
「昔のアリスは…僕にとってすべてだったんだ。逆に、アリスにとっても僕がすべてだった。」
レオナルドは、母親を幼少期に亡くし、父親も気軽に話せる間柄ではなかった。広い城の中で、レオナルドは孤独な日々を送り、友達は一人もいなかった。周囲の人々からは異なる存在として扱われ、自分の弱さを示すことは許されない。
皇太子レオナルドが心を開ける唯一の存在は、アリスだけ。
だからこそ、レオナルドにとってアリスはなくてはならない人だった。彼にとって、アリスは自分の脆さを受け入れてくれる唯一の相手であり、アリスの存在が彼を保つ力だったのだろう。
「本当に、大切な人だったんだね。」
「……お前には、僕とアリスがどれほど強く結びついていたのか、わかるまい……。」
リュカはレオナルドがアリスに対してどれだけの想いを寄せていたかっわかった。レオナルドがアリスの名前を口にするたび、彼の顔には苦悩が浮かぶ。今にも泣きだしてしまうのではないかと心配になるほど。
ーーーーレオナルドがこんなに大切に思っていたのに、なんでアリスは城を去ってしまったんだろう?
リュカはレオナルドとアリスの間に何が起こったのか、何も知らない。
「だが、アリスは……僕を裏切ったんだ。外の世界に出た後アリスは……僕を見捨てた!」
再び、レオナルドの目に怒りが戻る。
「外の世界に出たアリスはおかしくなったんだ。二人でいることが幸せだったはずなのに!それなのに、アリスは僕以外の何かよくわからないものにとりつかれてしまった!」
レオナルドは頭をかきむしる。
ーーーーそうか、アリス様は外の世界で、私たちが苦しんでいることを知ったんだ…。
外の世界を知ったアリスと、知らないレオナルド。二人の間に亀裂が生まれるのは避けられなかったかもしれない。
「僕がどれだけの気持ちで、アリスの帰りを待ち焦がれていたか、分かっているか?それなのに…彼女は外の世界の人々を救いたいと言い出した!アリスを洗脳した者たちを、絶対に許さない!」
「レオナルド……。」
充血したレオナルドの目からは涙がこぼれ、顔は苦痛で歪んでいる。何年も前の出来事をレオナルドは今も憎しみと悲しみを抱えて、鮮明に覚えているのだろう。
ーーーーアリス様を待つ一週間が本当につらかったんだろうな。
リュカもまた、父親が姿を消した際には恐怖に震えながら待っていた。もし父親が帰ってきて、スウェルド兵を助けようと言ったなら、リュカも怒り心頭になっていただろう。
レオナルドはそれから、何が起こったのかを怒りを込めて語っていった。
どれだけ時間が経っても、アリスが元に戻ってくれなかった。彼女はレオナルドを置いて、外に出てしまうようになる。愛人のロゼッタが妊娠したことで、ようやく救われるかと思ったが、ロゼッタは嘘をついてた。そして、毒殺未遂事件が起こり、レオナルドはアリスを疑った。そして今、アリスは生きているかわからない。
ーーーーどうして……こんなにも二人はすれ違わなければいけなかったんだろう?
レオナルドの話を聞いて、リュカは胸が締め付けられる。確かにアリスは正しい選択をしたかもしれないけれど、レオナルドの孤独さにもっと気が付いてあげて欲しかった。
「アリスが、先に僕を裏切った……だから、僕はあいつを城から追い出してやったんだ……!」
レオナルドは苦悩に満ちた表情で叫んだ。悲痛な叫びに、思わずリュカの目から涙が零れ落ちた。
「……なぜお前が泣くんだ?」
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