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4 どうしても祝いたいんだ
しおりを挟むある日の俺は、メルから必死で誕生日を聞き出そうとしていた。いつもどおりのお昼休憩。俺は相変わらずメルに会いに来ていた。
「今日はマフィンだよ!」
メルが自慢げにマフィンというお菓子を俺に差し出した。
「かわいい、、、!なぜメルはこんなにもお菓子作りが得意なんだ?」
普通、この国の貴族の女性は自らキッチンに立つことは殆ど無い。だがメルは、次から次へと美味しいお菓子を作り出す。
「才能かな。」
メルは照れくさそうに笑う。かわいい、かわいい、かわいい。メルに触れたくて、思わず手を伸ばすも俺はその手をぎゅっと握った。
メルに俺が愛してる、と思わせてはいけないのだ。メルから、俺を愛してると言わせなくてはいけない。
「ほい。」
メルは俺が出した手にマフィンを持たせた。無邪気な顔で笑わないでくれ。勿論、俺の中の葛藤をメルは知るはずもない。
今日の俺は、一つ聞きたいことがあってここに来たのだ。
「なぁ。メル。」
「ん?」
「メルの誕生日を教えてくれないか?」
俺がメルと出会ってから、2ヶ月近くが経つが未だメルの誕生日を知らなかった。これまでもそれとなく尋ねて来たのだが、メルは口を割ろうとしない。今日こそ、メルの誕生日を知りたいのだ。
「誕生日~??良いよ。アレックスは知らなくて。私、誕生日を祝ってほしくないし。」
メルが顔を顰めて言った。
「俺がどうしても祝いたいんだ。メルの特別な日だから。」
君の特別になりたいから。
「嫌だ。私、自分の誕生日が嫌いなの。」
メルは頑なに、自分の誕生日を俺に教えようとしなかった。なぜメルは、自分の誕生日を祝ってほしくないのだろう。
(俺はまだメルについて知らないことが多すぎる、、、。)
◇◇◇
メルの両親に聞けば、メルの誕生日を知ることはできただろう。だけどそれは、ルール違反だと思ったから、やめた。
(メルは誕生日が嫌いなんだ。)
俺は、メルがなぜ誕生日が嫌いなのかを話してくれる"いつか"をじっくり待つことにした。
誕生日は特別だが、別にその日だけが特別なわけじゃない。それはなぜか。俺にとってメルと一緒にいられる毎日は全て特別なものだからだ。
つまり俺は、毎日記念日を設定してメルを祝うことにした。
次の日、俺は言った。
「今日はメルがポニーテールにした記念日!だから今日はその記念に、メルにネックレスをプレゼンするよ!」
「は、はあ。」
宝石類はメルに不評だったので、また次のプレゼントを考えよう。
その次の日。
「今日は俺がメルと出会って66日記念日だ!だから今日は、綺麗なバラの花束を持ってきた!」
「うっっ。」
花はもっと処理に困るからやめてと言われた。そうか、、なかなかプレゼントとは難しいものだな。
そして、その一週間後。
「今日は空に虹が出た記念日だ!メルにこの素敵ななタオルをプレゼントするよ!」
「うれしい、、、けどさぁぁあ!」
さらに一ヶ月後。
「おめでとう!今日はメルと出会って100日記念日だ!」
そう言って石鹸を差し出すとメルは机に両手をついて立ち上がった。
「いい加減にして!!毎日毎日、記念日記念日!!もう、プレゼントはいらないよ!」
「だ、だがメルの誕生日が分からないんだ。もし今日が、メルの誕生日かもしれないと思うと、いても立ってもいられなくなるんだよ、、、!」
メルは目を見開いて、俺をじっと見つめた。だって、そうじゃないか?いつメルの誕生日が来ても、毎日祝っていたら問題ない。
メルは大きくため息をつくと、呆れたように笑った。
「しょうがないなぁ、、、。特別に、アレックスに誕生日を教えるよ。そうしたらこのプレゼント攻撃をやめてくれる?」
俺は深くうなずいた。
「12月25日よ。教えてあげるけど、他の人に言ったらだめだよ?」
メルの言葉に胸が高まった。二人だけの、秘密だと、、、?!
「誰にも言わないと約束する。」
「よろしい!」
◇◇◇
結局、誕生日当日、あまりにも盛大にメルの誕生日を祝いすぎて、東宮殿の人々にばれてしまうことになるのだが、、、。
「もう!!」
怒りながらも許してくれるメルは、本当は誕生日を祝ってほしかったんじゃないかって、俺は思うんだ。
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