上 下
1 / 1

覚えときなさいよ?

しおりを挟む




「お兄ちゃんの子供

 できちゃったんだ。」



義理の妹のウルノは 

にっこりと笑ってそう言った。



ある小高い丘の上、

私、ルリィは義理の妹である

ウルノを睨みつけた。



私がザックと結婚したのは、

ほんの一ヶ月前のことだ。






少し婚期を逃していた私を心配して、

親がザックを紹介してくれたのだ。



ザックは物腰が柔らかく、

優しい雰囲気だったので、 


まぁ、この人なら幸せになれるだろうと


思っていた。



この家に来るまでは。



「どうするつもりよ?」

私は、ウルノに尋ねる。




この家にお嫁に来た私を待っていたものは



妹を溺愛する兄と、

そんな兄にベッタリな妹だった。



見た目もよく、優しいザックが

今まで結婚できなかった理由が、

よくわかった。




あぁ、ほんとうにやらかした。



「産むよ?


 当然でしょう。」


にっこり笑ってそういう

ウルノにも、

正直何も思わなかった。

 

流石に、

妊娠するとは

思っていなかったけど。

 
 

けど、

この兄妹ならそれくらい

してしまうかも、

とは内心思っていた。





「そう。」



さぁ、離婚しよう。



もう話はいいでしょ?


私が家に帰ろうと、

歩き出したその時。



ウルノが私の肩を

ガッツリ掴んだ。




なによ?



「お義姉さんに

 恨みは無いんだけど。



 この子のせいで、


 お兄ちゃんを離婚に追い込んだ、


 ていう事実を作るのがいやなの。」




そうは言っても、

じゃあどうするつもりなのよ。



私はウルノの手を

肩から避けようとするも、



その力があまりにも強くて、

剥がせない。



じりじりと、

ウルノが私の体を押してくる。



この丘は、

反対側は崖になっていて、

落ちたら命はない。



「ちょっと、待って!!

 一回話をしよ??


 

 私、ここから出ていくから!


 ね、私を崖の方に押すのはやめて?」





崖の方に私を押してくるウルノを

なんとか押止めようとするも、


全然止まらない。


待って?


この子怪力すぎじゃない?



落ちる、崖から落ちるって!


必死に抵抗するも、

崖のヘリまで追い込まれた。




「待って!!



 誰か!!



 ねぇ!

 助けて!!」



叫ぶが、

返事は無い。



この場所は民家から少し

離れた場所にある。  




声が聞こえていて助けに来ないのか、


それとも


純粋に声が聞こえていないのか。




「ごめんなさいね。
  

 お義姉さん。」



にっこり笑ったウルノ。



「私を殺してみなさい。


 絶対に呪ってやるわ。


 後悔するわよ?!」




「私、幽霊なんか


 信じてないの。」




ドンッッ    



強い力に押され



私の体は、

崖に突き落とされた。




「ばいばい、お義姉さま」



ウルノは落ちたルリィの様子を

見ようともせず、

家に帰っていった。


-------------------------------------------


姿を消したルリィを

ザックや、義理の母は探そうとも

しなかった。




ウルノが偽装した

私の手紙には、


他に好きな人ができたから


この家を出ると、書いてあったらしい。



「それなら、


 しょうがないよね、



 お兄ちゃん。」


ウルノはにっこりと笑った。





------------------------------------------



「あーらら。


 油断してるわね。」



私、ルリィは

深く被った帽子を少し上げて、

ウルノの様子を見た。




「復讐するのは


 幽霊だけとは限らないのよ?」


ふふ、と笑う私に

幼馴染のアイビィは

呆れたように笑った。




「殺されかけたってのに


 君は、


 ずいぶん楽しそうだね。」



「まぁ、


 殺されるのは

 予想してたしね。」



実はあの日、

私は万全の対策をして、

ウルノの誘いに乗っていた。



兄にべったりのウルノは、


いつか私を殺しに来るだろうとは

薄々気づいていた。




だから、
  
ウルノと二人になるときは、


絶対に誰かに助けてもらえるように

準備していたのだ。




あの日も、

ウルノに見えないよう、

腰に紐をくくりつけ、


崖の下にはアイビィに待機してもらっていた。



加えて、 

もしも

ウルノが賊を雇って

私を襲ってきたときのために、


3人くらいの傭兵にも、


こっそり控えてもらっていたのだ。



あのときほしかったのは、

ウルノが私を殺そうとする

写真だ。


「ほんと、

 いい写真が撮れたわ。」



私は写真をぺらぺらとめくった。




「さっさとこれを


 国軍に提出して、


 逮捕してもらっちゃいましょう。」


殺されかけたっていうのに、

この程度で済ます私は

ほんとうに優しいな。




「あんまりむちゃすんなよ?


 俺が毎回助けれるわけじゃ


 ないんだから 。」



浮かれる私にアイビィが言った。




「は~い。」 



馬鹿ね、ウルノ。


だから後悔するって、

いったでしょ?




------------------------------------------



そしてウルノは

殺人未遂容疑で逮捕され、

二十年間牢屋に閉じ込められることと

なった。




子供は取り上げられ、

養子として、

他の家で育てられるらしい。



そして、

ザックも近親相姦罪によって、

職を失ったのだった。




-------------------------------------------






「で、お前はこれから


 どうすんの?」


アイビィが

私に尋ねた。




確かに、

もう実家にも帰りづらいし、

かと言ってもう結婚は


こりごりだ。



「まぁ、気ままに旅するよ。」




「俺も行っていい?」

と、アイビィ。



「もの好きねぇ。



 いいよ?


 命の保証はしないけどさ。」



しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です

岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」  私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。  しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。  しかも私を年増呼ばわり。  はあ?  あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!  などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。  その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

婚約者の姉から誰も守ってくれないなら、自分の身は自分で守るまでですが……

もるだ
恋愛
婚約者の姉から酷い暴言暴力を受けたのに「大目に見てやってよ」と笑って流されたので、自分の身は自分で守ることにします。公爵家の名に傷がついても知りません。

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

処理中です...