上 下
3 / 4

一番大切なのです

しおりを挟む
(カムイ様を殺そうとしていたのは、ルムノだったんだ!!)

私の心は怒りでいっぱいだった。

私はルムノの部屋の前から屋根裏部屋に戻っていた。私に与えられた部屋はこの寒くて汚い屋根裏部屋である。アストラがここに来たことも、私がアストラの部屋に呼ばれたことも一度も無かった。

(とにかく、カムイ様に毒が入った食事を食べさせてはいけない。でも、食材を用意するためにはお金がいる、、、。私にそんなお金ないわ、、、。でも待って、そうだわ!)

私は押入れの中にしまった指輪を取り出した。ハートの宝石がついた綺麗な指輪。この指輪はまだ家が落ちぶれていなかった頃、誕生日に父に買ってもらったものだ。

(これだけは、どんなに貧しくても絶対に手放さないと誓っていたけれど、でもそんなこと言っている場合じゃないわ。)

これを売ったところで、一人で生きていけるほど大きなお金は到底得られないだろう。だが、しばらくカムイ様の食事を用意するくらいのお金は、手元に確保できるはずだ。

(カムイ様は、絶対に私が守ってみせる。)

  
   ◇◇◇


「この家の人間に渡されたものを、絶対に食べないでください。」

次の日、私はカムイ様に事情を説明した。カムイ様は少し驚いていたがすぐに納得してくれた。

「私が全部カムイ様のご飯を作ります。カムイ様が元気になるように、栄養のある美味しい料理を作りますから、、、!」

「リュカ、、、。」

「だから絶対にいなくならないでくださいね。お願いです。カムイ様。」


  ◇◇◇


「なぜ、、死なないの?!カムイ!!」

ルムノは爪を噛んでそう呟いた。本来ならば、カムイは転落事故で死んでいるはずだったのに、あいつはまだ生きている。せっかく事故に見せかけて殺せるはずだったのに。

その後、医者の助言を聞いて毒を食事に混ぜたが、カムイに死ぬ気配はない。すでに事故から半年が経とうとしていた。

夫はあんなに簡単に死んだのに、カムイはなぜあれほどにしぶといのだろう。ルムノは腹が立って仕方がなかった。

「ルムノさん。」

「え?!」

振り返るとそこに立っていたのはカムイだった。病気でベットから起き上がれなかったはずなのに、なぜこの男は立ち上がっているのだ?!

「なぜ驚いているのですか?息子が元気になったのです。本来ならば喜ぶはずの場面ですよね?」

カムイの横にはアストラの婚約者であるリュカが立っている。無論、リュカのような没落貴族の娘を大切なアストラと結婚させるつもりは無かった。カムイを殺す際に利用できると思って、貧乏な娘を買ったのだ。

だがカムイが死ななかったために、婚約破棄の予定が遅れてしまっていた。

「驚いただけよ。元気になって嬉しく思うわ。」

今すぐにでも、死んでほしい。

「僕を殺そうとしたのは貴方なのに?」

カムイはルムノを睨みつけている。カムイは決してルムノのことを母と呼ばなかった。ルムノもカムイを息子と思ったことは一度もない。

「な!!母親になんてことを言うの?!」

「残念だけど、証拠は全て残っていますよ、ルムノさん。」

カムイが家のドアを開けると、そこには大勢の警察が控えていた。

「ルムノ・ノックス!!お前を殺人未遂容疑で逮捕する!!」

なぜ?!私の計画は完璧だったはずなのに?!誰が私の人生の計画を狂わせたの?!


  ◇◇◇
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖夜は愛人と過ごしたい?それなら、こちらにも考えがあります

法華
恋愛
貴族の令嬢であるメイシアは、親同士の政略によってランディと婚約していた。年明けには結婚が迫っているというのに、ランディは準備もせず愛人と過ごしてばかり。そんな中迎えたクリスマス、ランディはメイシアが懸命に用意した互いの親族を招いてのパーティーをすっぽかし、愛人と過ごすと言い出して......。 そんなに協力する気がないなら、こちらにも考えがあります。最高のプレゼントをご用意しましょう。 ※四話完結

「本当の自分になりたい」って婚約破棄しましたよね?今さら婚約し直すと思っているんですか?

水垣するめ
恋愛
「本当の自分を見て欲しい」と言って、ジョン王子はシャロンとの婚約を解消した。 王族としての務めを果たさずにそんなことを言い放ったジョン王子にシャロンは失望し、婚約解消を受け入れる。 しかし、ジョン王子はすぐに後悔することになる。 王妃教育を受けてきたシャロンは非の打ち所がない完璧な人物だったのだ。 ジョン王子はすぐに後悔して「婚約し直してくれ!」と頼むが、当然シャロンは受け入れるはずがなく……。

婚約破棄?本当によろしいのですか?――いいでしょう、特に異論はありません。~初めて恋を願った彼女の前に現れたのは――~

銀灰
恋愛
令嬢ウィスタリアは、ある日伯爵のレーゼマンから婚約破棄の宣告を受ける。 レーゼマンは、ウィスタリアの妹オリーブに誑かされ、彼女と連れ添うつもりらしい。 この婚約破棄を受ければ、彼に破滅が訪れることを、ウィスタリアは理解していた。 しかし彼女は――その婚約破棄を受け入れる。 見限ったという自覚。 その婚約破棄を受け入れたことで思うところがあり、ウィスタリアは生まれて初めて、無垢な恋を願う。 そして、そこに現れたのが――。

3年も帰ってこなかったのに今更「愛してる」なんて言われても

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢ハンナには婚約者がいる。 その婚約者レーノルドは伯爵令息で、身分も家柄も釣り合っている。 ところがレーノルドは旅が趣味で、もう3年も会えていない。手紙すらない。 そんな男が急に帰ってきて「さあ結婚しよう」と言った。 ハンナは気付いた。 もう気持ちが冷めている。 結婚してもずっと待ちぼうけの妻でいろと?

あんな妹とそんなに結婚したいなら、どうぞご自由に。

法華
恋愛
貴族クインシーは、政略結婚で婚約させられた婚約者サラ・エースワットを冤罪まで被せて婚約破棄し、サラの妹ミシェルと婚約した。 だが、そこまでして手に入れたミシェルはどうしようもなく問題のある女だった。 クインシーはサラを取り戻そうとするが、サラは既に他の貴族と結婚してしまっていた。 ※三話完結

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

私より幼馴染を大事にする男と婚約破棄したら、王子様と結婚して幸せになれました

法華
恋愛
リゼ・リィンカーネーションの婚約者オッズ卿は、彼女より幼馴染からの呼び出しを優先してばかり。それどころか、まるで恋人同士かのようにいちゃついている。リゼはそんな婚約者に愛想を尽かして、婚約破棄を突きつける。行き場所のない彼女を拾ったのは、なんとこの国の第三王子だった。彼のもとでリゼは精神を立て直し、愛を育んでいく。 ※五話完結

婚約者とその幼なじみの距離感の近さに慣れてしまっていましたが、婚約解消することになって本当に良かったです

珠宮さくら
恋愛
アナスターシャは婚約者とその幼なじみの距離感に何か言う気も失せてしまっていた。そんな二人によってアナスターシャの婚約が解消されることになったのだが……。 ※全4話。

処理中です...