【短編】浮気を疑われ婚約破棄されましたが、それらは全て双子の妹の仕業でした。

2.嫉妬深い双子の妹

「許さないから、、、！ノア、、貴方のせいよ、、、！」

シャーロットと浮気をしていたと訴える男から、いつシャーロットとデートをしたのか、詳細を尋ねた。すると、いつもシャーロットが一人でピアノの練習をしている時間に限って、デートをしているのだ。

それはシャーロットが、身の潔白を証明できない時間だ。そのタイミングを狙って、シャーロットのふりをする人間はノア以外あり得なかった。

「まあ、、自分の裏切りを人のせいにするなんて、なんて酷い人なの、、、。」

ノアはそう言って、哀れっぽく泣いた。するとますます、シャーロットの味方をする人間はいなくなってしまう。元々、シャーロットは人付き合いが下手で、友達が多いのはノアだった。

（なぜ誰も私を信じてくれないの？）

だれも、シャーロットのことを信じてくれないまま数日が過ぎた。


　　　◇◇◇


（ノアのせいで、、、ルカを失ってしまった、、、）

シャーロットはピアノの椅子に座り黙って涙を流した。人に誤解されやすいシャーロットにとって、ルカは心の支えだった。

口数が多いわけじゃないけれど、シャーロットのことをそっと見守ってくれていたのだ。ルカとの婚約破棄が決まってから、あんなに打ち込んでいたピアノも弾けなくなってしまった。

「ルカ、、、。」

シャーロットが小さく元婚約者の名前を読んだ時。

「呼んだ？」

その声に、シャーロットはゆっくりと振り返った。

「ルカ！！」

「遅くなって、ごめん。」

ルカはにっこりと笑って、優しく私を抱きしめてくれた。

「な、なんで？だって私達、婚約破棄になったんじゃ、、、？」

目を瞬かせるシャーロットの頬にルカは優しく触れた。

「そんなの両親が勝手に言ってるだけさ。俺は最初からシャーロットを疑って無かったよ。」

「なぜ？」

ルカ以外だれも、シャーロットのことを信じてはくれなかった。ピアノしか脳がない性格の悪い女。それがシャーロットに貼られたレッテルだった。

ルカはふんわりと笑った。

「あの男がいつシャーロットと浮気をしたか、俺も聞いたんだけどさ、残念だけどその日俺がシャーロットの側で昼寝をしていたんだよ。」

「え？」

「あのクソ妹の誤算さ。シャーロットが一人でいると思いこんで、あの男と浮気していたのさ。」

確かにルカは音もなくソファーの上に寝転び昼寝をしていることがある。一見では、私が一人でいるように見えるだろう。

「だけどだいじょうぶ。俺と君の両親にはきちんと説明してきた。シャーロットにすり替われる人間なんて、一人しかいないだろう？」

「ルカ、、、！」

そうして、ノアの嘘はルカによって暴かれたのであった。

　　　◇◇◇

「全部シャーロットのせいよ！！シャーロットが私に意地悪するから！！」

全ての嘘がバレてもノアはそう言い続けた。双子の姉シャーロットに恐ろしいほどのコンプレックスを抱いていたノアは、自分の不幸を全てシャーロットのせいだと思いこんでいた。

「狡いわ！！なんであんたばっかり！！」

ノアの部屋の中から、金髪のウィッグが見つかった時も、ノアは泣き喚いていた。

だが、事態はそれだけでは終わらなかった。ノアはシャーロットの名を語って、複数人の男性と交際をしていたのだ。ノアに騙されていた男性達は、ノアを天才ピアニストシャーロットだと勘違いしていたため、かなりの額をノアに貢いでいた。

「金を返せ！！」

事実を知った男性達はノアを訴え、多額の慰謝料や金銭の返金を要求したという。お金に困った両親はノアを家から追い出し、ノアと絶縁してしまったと噂に聞いた。

「行こう。シャーロット。」

「はい！旦那様！！」

その頃にはシャーロットはルカと結婚して、家族との縁を切っていたので詳しいことはよく知らない。

ルカの支援の元、努力を続けたシャーロットは国を代表するピアニストになった。今では、各国にシャーロットのファンができ世界中で演奏会を開いている。

そして、昼寝をしてばかりのように思えたルカは優秀な成績で学校を卒業し、今では政府の要職についている。

もともと、夜遅くまで勉強をしていたルカはシャーロットのピアノを聞いて昼寝をすることで体を休ませていたのだ。

そうして、ルカとシャーロットの幸せな人生はいつまでも続いて行くのだった。