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14.説得

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「さあ、パーティの用意をしよう。」

ルカ様は軍師としての仕事を終えると、颯爽と準備を整え始めた。

必要な食材を厨房に取りに行き、手際よく料理を作る。

テーブルに並べられる、美しい料理達。

「よし!できたぞ!」

ルカ様が嬉しそうに手を叩いた時、部屋のベルが鳴る。扉を開けると、クアイ様とアン、それからトンプソンが立っていた。

「来たわよ。ルネア。あら、そのドレス素敵ね!」

「ルカ様に買っていただいたの。」

私が着ているのは、淡いピンク色のドレス。ルカ様の手配で、髪の毛もセッティングしてもらっている。

「よく似合うわ。あら、いい匂い。」

エプロンを外したルカ様は私の腰に手を回す。

だから、皆の前でそんなことしないでくださいっ。

「よく来てくれたな。さあ、あがってくれ。」

来客はアンを含めて3人。
アン、クアイ様、トンプソンだ。

なぜトンプソンまで・・・?

「ルネアがルカ様の婚約になると聞いて心配でさ・・・。苦労はしてないか?」

と、トンプソンが私に尋ねる。

「ええ、何も大変なことはないわ。」

時々、刺客が襲ってくるだけ。
きちんと撃退してるわ。

「楽しく暮らしてるから、心配するな。」

そう言って私の手をぎゅっと握るルカ様。

「そうですか・・・」

トンプソンは納得できない顔で俯いた。

席につき、ルカ様が飲物を取りに行く。

「まあ!ルカ様にそんなことさせられません!私も行きます!」

と、アンがルカ様に着いていく。

私も行かなきゃ。立ち上がろうとした私をトンプソンが呼び止める。

「ルネア・・・!本当にルカ様の婚約者になっていいのか?」  

「え・・・?」
  
いつもおちゃらけているトンプソンが珍しく真剣な顔をしている。

「女騎士だから、利用されているだけなんじゃないのか?」

トンプソンの言葉に私は首をかしげる。
それのどこがいけないのだろう。

「利用されていても構わないわよ。騎士であることが役に立つんだもの。」

騎士としてルカ様をお守りできる幸せを常々感じている。それ以上のものは望むつもりは無い。

トンプソンは首をふる。

「そうではなくてな・・・」

「そこまでにしなよ。トンプソン。ルカ様の前だよ?」

帰ってきたアンがトンプソンに声をかける。ルカ様は鋭い目でトンプソンを睨みつけていた。

「あの・・・申し訳ありません。ですが・・・」

確かにルカ様に失礼なことを言ったけれど、トンプソンは私を心配してくれたのだ。

「わかっている。さあ、食べよう。」

ルカ様はぎこちない笑みを浮かべて席に着いた。テーブルに緊張感が漂い、沈黙が走る。

「相変わらずルカの料理は上手いな。」

と、クアイ様。クアイ様はテーブルの緊迫感に気づく様子はなく、平然としている。

「え!このお料理、ルカ様が作ったんですか!すごーい!!」

アンが目を輝かせて料理を食べる。

「ルカ様が・・・。」

トンプソンがゴクリとつばを飲み込む。

「ルカ様は本当に料理がお上手なんですよ。私も毎日、感動してるんです。」

私の言葉にルカ様が嬉しそうにしている。

「それは、素敵ね。ルネアにぴったりかも。料理、苦手だもんね?」

「そうね・・・。一度、ルカ様の料理を手伝ったときに、焦がしてしまったの。いつも優しく教えてくれるルカ様も、今日は私に料理をさせてくれなかったわ。
側で応援していることが1番のお手伝いなのだそうよ。」  

クアイ様とアンは声をあげて笑った。

「ずいぶん仲良くなったんだな。ルネアがルカに襲われてないかと心配していたんだがーー。」

「おい!クアイ!俺は何もしていないぞ?」

クアイ様の発言にルカ様が慌てて口を挟む。

「でも、キスくらいしたんでしょ?」

と、アンが恐ろしいことを言う。

「してないぞ!」

「してません!!」

ルカ様と声が揃う。

アンはいたずらっぽく笑って、頬杖をつく。

「婚約の約束をしてるんだもの。いいんじゃないですか?」

「そういうことは結婚するまでしないと決めているんだ!デザートを取ってくる!」

そう言うとルカ様は席を立ってキッチンに向かう。

「だいじょうぶよ。アン。ルカ様は私が望まないことを強要することは絶対ないわ。」

ルカ様の潔白をしっかり証言しておかなくては。

「分かってるわよ。二人が楽しそうだったから、少しからかっただけ。安心したわ。ルネアはちゃんとルカ様のことが好きなのね。」

思わず首をふる。

「好きじゃないわよ!」

あ・・・だめだ、アンに婚約を認めて貰うためには、私がルカ様を好きだと思われなきゃいけないんだった。

「あの、いえ・・・その、大好きってことよ・・・。」

恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

「ルネア・・・俺もだよ。」

デザートを持ってキッチンから帰ってきたルカ様が私を後ろから抱きしめた。

ちょ、ちょっとルカ様!!顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。

アンに認めて貰う為に、言っただけですからね!

 
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