14 / 38
14.説得
しおりを挟む
「さあ、パーティの用意をしよう。」
ルカ様は軍師としての仕事を終えると、颯爽と準備を整え始めた。
必要な食材を厨房に取りに行き、手際よく料理を作る。
テーブルに並べられる、美しい料理達。
「よし!できたぞ!」
ルカ様が嬉しそうに手を叩いた時、部屋のベルが鳴る。扉を開けると、クアイ様とアン、それからトンプソンが立っていた。
「来たわよ。ルネア。あら、そのドレス素敵ね!」
「ルカ様に買っていただいたの。」
私が着ているのは、淡いピンク色のドレス。ルカ様の手配で、髪の毛もセッティングしてもらっている。
「よく似合うわ。あら、いい匂い。」
エプロンを外したルカ様は私の腰に手を回す。
だから、皆の前でそんなことしないでくださいっ。
「よく来てくれたな。さあ、あがってくれ。」
来客はアンを含めて3人。
アン、クアイ様、トンプソンだ。
なぜトンプソンまで・・・?
「ルネアがルカ様の婚約になると聞いて心配でさ・・・。苦労はしてないか?」
と、トンプソンが私に尋ねる。
「ええ、何も大変なことはないわ。」
時々、刺客が襲ってくるだけ。
きちんと撃退してるわ。
「楽しく暮らしてるから、心配するな。」
そう言って私の手をぎゅっと握るルカ様。
「そうですか・・・」
トンプソンは納得できない顔で俯いた。
席につき、ルカ様が飲物を取りに行く。
「まあ!ルカ様にそんなことさせられません!私も行きます!」
と、アンがルカ様に着いていく。
私も行かなきゃ。立ち上がろうとした私をトンプソンが呼び止める。
「ルネア・・・!本当にルカ様の婚約者になっていいのか?」
「え・・・?」
いつもおちゃらけているトンプソンが珍しく真剣な顔をしている。
「女騎士だから、利用されているだけなんじゃないのか?」
トンプソンの言葉に私は首をかしげる。
それのどこがいけないのだろう。
「利用されていても構わないわよ。騎士であることが役に立つんだもの。」
騎士としてルカ様をお守りできる幸せを常々感じている。それ以上のものは望むつもりは無い。
トンプソンは首をふる。
「そうではなくてな・・・」
「そこまでにしなよ。トンプソン。ルカ様の前だよ?」
帰ってきたアンがトンプソンに声をかける。ルカ様は鋭い目でトンプソンを睨みつけていた。
「あの・・・申し訳ありません。ですが・・・」
確かにルカ様に失礼なことを言ったけれど、トンプソンは私を心配してくれたのだ。
「わかっている。さあ、食べよう。」
ルカ様はぎこちない笑みを浮かべて席に着いた。テーブルに緊張感が漂い、沈黙が走る。
「相変わらずルカの料理は上手いな。」
と、クアイ様。クアイ様はテーブルの緊迫感に気づく様子はなく、平然としている。
「え!このお料理、ルカ様が作ったんですか!すごーい!!」
アンが目を輝かせて料理を食べる。
「ルカ様が・・・。」
トンプソンがゴクリとつばを飲み込む。
「ルカ様は本当に料理がお上手なんですよ。私も毎日、感動してるんです。」
私の言葉にルカ様が嬉しそうにしている。
「それは、素敵ね。ルネアにぴったりかも。料理、苦手だもんね?」
「そうね・・・。一度、ルカ様の料理を手伝ったときに、焦がしてしまったの。いつも優しく教えてくれるルカ様も、今日は私に料理をさせてくれなかったわ。
側で応援していることが1番のお手伝いなのだそうよ。」
クアイ様とアンは声をあげて笑った。
「ずいぶん仲良くなったんだな。ルネアがルカに襲われてないかと心配していたんだがーー。」
「おい!クアイ!俺は何もしていないぞ?」
クアイ様の発言にルカ様が慌てて口を挟む。
「でも、キスくらいしたんでしょ?」
と、アンが恐ろしいことを言う。
「してないぞ!」
「してません!!」
ルカ様と声が揃う。
アンはいたずらっぽく笑って、頬杖をつく。
「婚約の約束をしてるんだもの。いいんじゃないですか?」
「そういうことは結婚するまでしないと決めているんだ!デザートを取ってくる!」
そう言うとルカ様は席を立ってキッチンに向かう。
「だいじょうぶよ。アン。ルカ様は私が望まないことを強要することは絶対ないわ。」
ルカ様の潔白をしっかり証言しておかなくては。
「分かってるわよ。二人が楽しそうだったから、少しからかっただけ。安心したわ。ルネアはちゃんとルカ様のことが好きなのね。」
思わず首をふる。
「好きじゃないわよ!」
あ・・・だめだ、アンに婚約を認めて貰うためには、私がルカ様を好きだと思われなきゃいけないんだった。
「あの、いえ・・・その、大好きってことよ・・・。」
恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「ルネア・・・俺もだよ。」
デザートを持ってキッチンから帰ってきたルカ様が私を後ろから抱きしめた。
ちょ、ちょっとルカ様!!顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。
アンに認めて貰う為に、言っただけですからね!
ルカ様は軍師としての仕事を終えると、颯爽と準備を整え始めた。
必要な食材を厨房に取りに行き、手際よく料理を作る。
テーブルに並べられる、美しい料理達。
「よし!できたぞ!」
ルカ様が嬉しそうに手を叩いた時、部屋のベルが鳴る。扉を開けると、クアイ様とアン、それからトンプソンが立っていた。
「来たわよ。ルネア。あら、そのドレス素敵ね!」
「ルカ様に買っていただいたの。」
私が着ているのは、淡いピンク色のドレス。ルカ様の手配で、髪の毛もセッティングしてもらっている。
「よく似合うわ。あら、いい匂い。」
エプロンを外したルカ様は私の腰に手を回す。
だから、皆の前でそんなことしないでくださいっ。
「よく来てくれたな。さあ、あがってくれ。」
来客はアンを含めて3人。
アン、クアイ様、トンプソンだ。
なぜトンプソンまで・・・?
「ルネアがルカ様の婚約になると聞いて心配でさ・・・。苦労はしてないか?」
と、トンプソンが私に尋ねる。
「ええ、何も大変なことはないわ。」
時々、刺客が襲ってくるだけ。
きちんと撃退してるわ。
「楽しく暮らしてるから、心配するな。」
そう言って私の手をぎゅっと握るルカ様。
「そうですか・・・」
トンプソンは納得できない顔で俯いた。
席につき、ルカ様が飲物を取りに行く。
「まあ!ルカ様にそんなことさせられません!私も行きます!」
と、アンがルカ様に着いていく。
私も行かなきゃ。立ち上がろうとした私をトンプソンが呼び止める。
「ルネア・・・!本当にルカ様の婚約者になっていいのか?」
「え・・・?」
いつもおちゃらけているトンプソンが珍しく真剣な顔をしている。
「女騎士だから、利用されているだけなんじゃないのか?」
トンプソンの言葉に私は首をかしげる。
それのどこがいけないのだろう。
「利用されていても構わないわよ。騎士であることが役に立つんだもの。」
騎士としてルカ様をお守りできる幸せを常々感じている。それ以上のものは望むつもりは無い。
トンプソンは首をふる。
「そうではなくてな・・・」
「そこまでにしなよ。トンプソン。ルカ様の前だよ?」
帰ってきたアンがトンプソンに声をかける。ルカ様は鋭い目でトンプソンを睨みつけていた。
「あの・・・申し訳ありません。ですが・・・」
確かにルカ様に失礼なことを言ったけれど、トンプソンは私を心配してくれたのだ。
「わかっている。さあ、食べよう。」
ルカ様はぎこちない笑みを浮かべて席に着いた。テーブルに緊張感が漂い、沈黙が走る。
「相変わらずルカの料理は上手いな。」
と、クアイ様。クアイ様はテーブルの緊迫感に気づく様子はなく、平然としている。
「え!このお料理、ルカ様が作ったんですか!すごーい!!」
アンが目を輝かせて料理を食べる。
「ルカ様が・・・。」
トンプソンがゴクリとつばを飲み込む。
「ルカ様は本当に料理がお上手なんですよ。私も毎日、感動してるんです。」
私の言葉にルカ様が嬉しそうにしている。
「それは、素敵ね。ルネアにぴったりかも。料理、苦手だもんね?」
「そうね・・・。一度、ルカ様の料理を手伝ったときに、焦がしてしまったの。いつも優しく教えてくれるルカ様も、今日は私に料理をさせてくれなかったわ。
側で応援していることが1番のお手伝いなのだそうよ。」
クアイ様とアンは声をあげて笑った。
「ずいぶん仲良くなったんだな。ルネアがルカに襲われてないかと心配していたんだがーー。」
「おい!クアイ!俺は何もしていないぞ?」
クアイ様の発言にルカ様が慌てて口を挟む。
「でも、キスくらいしたんでしょ?」
と、アンが恐ろしいことを言う。
「してないぞ!」
「してません!!」
ルカ様と声が揃う。
アンはいたずらっぽく笑って、頬杖をつく。
「婚約の約束をしてるんだもの。いいんじゃないですか?」
「そういうことは結婚するまでしないと決めているんだ!デザートを取ってくる!」
そう言うとルカ様は席を立ってキッチンに向かう。
「だいじょうぶよ。アン。ルカ様は私が望まないことを強要することは絶対ないわ。」
ルカ様の潔白をしっかり証言しておかなくては。
「分かってるわよ。二人が楽しそうだったから、少しからかっただけ。安心したわ。ルネアはちゃんとルカ様のことが好きなのね。」
思わず首をふる。
「好きじゃないわよ!」
あ・・・だめだ、アンに婚約を認めて貰うためには、私がルカ様を好きだと思われなきゃいけないんだった。
「あの、いえ・・・その、大好きってことよ・・・。」
恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「ルネア・・・俺もだよ。」
デザートを持ってキッチンから帰ってきたルカ様が私を後ろから抱きしめた。
ちょ、ちょっとルカ様!!顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。
アンに認めて貰う為に、言っただけですからね!
12
お気に入りに追加
1,059
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
愛するつもりなぞないんでしょうから
真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」
期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。
※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。
※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。
※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。
※おまけ更新中です。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
そう言うと思ってた
mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。
※いつものように視点がバラバラします。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる