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3.手繋ぎ
しおりを挟む「王子様、、、!」
ルネアは小さい声で呟くと、目を見開いた。
右手をルネアに向かって差し出すと、ルネアはおずおずと俺の手を握った。
「お初にお目にかかります、ルカ様。私はルネア。騎士団第二隊員です。」
握ったルネアの手は冷え切っている。
俺はその手を軽く引いた。
「じゃ、行こう。ルネア。俺の部屋に案内するよ。」
昼間は暖かくなってきた時期とはいえ、まだまだ夜は冷え込む。俺は早く温かい部屋に戻りたい。
「ルカ様?冗談ですよね?」
引かれた手の勢いで立ち上がったルネアは焦った声を出す。
「冗談では無いさ。俺は何部屋か持ってるから、遠慮せずに泊まりなよ。」
「わ、私なんかが、殿下の部屋に泊まるなんてできません!」
ルネアは大きく首を振る。
「そうだよ、ルカ!お前が女を連れ込んだら大騒ぎになるだろ!」
「だが、ルネアはただの女じゃない。腕の立つ女騎士なんだろ?」
クアイは押し黙った。俺が何が言いたいのか、分かったらしい。
(女だろうと、生き延びるためなら利用してやる。)
俺は真っ直ぐにルネアの目を見つめた。
大空を思わせる青い瞳に吸い込まれそうになる。
「なぁ。ルネア。俺は何も無償で君を部屋に泊めようとしてるわけじゃない。」
ルネアがゆっくりと瞬きをした。
「騎士としての君の腕を見込んで頼んでいるんだ。側にいて、俺の命を守ってくれないか?」
「殿下の命を?」
『騎士として』その言葉を聞いてルネアの目の色が変わった。
「ああ。俺は命を狙われている。だからこそ、ルネアの力を借りたいんだ。」
クアイが俺の肩を掴んで耳元で囁く。
「おいっ!ルネアを巻き込むのか?」
俺はクアイの手を避けた。
「どうする?」
ルネアはまっすぐに俺を見た。
「詳しくお話を聞いてもよろしいですか?」
さて。上手く引っかかったか。
「ああ、勿論だ。詳しいことは俺の部屋で話そう。」
「おい!ルカ!」
うるさいクアイを連れて、俺はルネアと自分の部屋に向かった。
手を繋いでの歩く俺とルネアを、城の人間が不審な目で見る。
「殿下!手を話してください!」
「この城は道に迷いやすいんだ。良いだろ。」
(俺はただルネアを部屋に住まわせるわけじゃない。)
手を繫ぐのは、そのための前準備だ。部屋にたどり着くとすぐに、ルネアは尋ねた。
「じ、事情を説明していただけますか?」
◇◇◇
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