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第77章 御前会議
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吉之助たちが内藤新宿から浜屋敷に戻ったとき、日は完全に暮れていた。見れば、門番の詰め所に配下の駒木勇佑の顔が。ちょっと不機嫌そうだ。
「ひどいじゃないですか。先日に続いてまた置いてけぼりとは」
「すまん、すまん」
「とにかく、すぐに間部様の御用部屋に行って下さい。お陰で私まで・・・」
間部は文机の前に相変わらずの無表情、いつもの皺ひとつない裃姿で座っていた。冬場とは言え、内藤新宿との間を往復したわけで、吉竜ともに汗や泥で汚れている。間部の部屋はここだけ新築かと思うほど常に清潔だ。入室をためらっているとジロリと睨まれた。
「失礼します。お呼びとか」
「ええ、随分前に。狩野殿も島田殿も、すでに甲斐から出て来た頃の軽輩ではありません。せめて、行先ぐらいは告げて出て下さい」
「誠に申し訳ありませんでした」と、二人は揃って頭を下げた。
「ともかく、明日の四つ(ほぼ午前十時)に御成書院まで来るように。出羽守様が殿との会見を求めてきました。殿が意見をお求めです」
「ほう、出羽守様から動きましたか」
「狩野殿、何かご存知なのですか」
吉之助は、間部に将軍綱吉と出羽守の関係が悪化している可能性があり、御前様の指示を受けて川越藩の動きを探っていたことを話した。てっきり、熙子から綱豊へ、綱豊から間部に話が通っているものと思っていた。報告が遅れたことを併せて謝罪しておく。
「承知しました。では、今日も?」
「あっ、いや。本日は完全に別件です」
翌日、予定の時刻に御成書院での会議が始まった。出席者を身分順に並べると、甲府藩主・松平綱豊、正室・近衛熙子、江戸家老・安藤美作、熙子の側近・平松時子、用人・間部詮房、財務と渉外担当の中老二人、武官の代表格である番頭・鳴海帯刀。そして末席に、藩主直属の番士である狩野吉之助と島田竜之進。なお、政治顧問の新井白石は諸国遊歴中で欠席。
綱豊の丸顔には当惑の色が濃い。
「上様と出羽守が袂を分かったという話だが、本当なのか。詐略ではあるまいか。詮房、どうだ?」
「はっ。誠のことであると存じます。正式発表はまだですが、公方様のご長女・鶴姫様が身罷ったようにございます」
「な、なに?!」
綱豊だけでなく、熙子も知らなかったようだ。その他の者たちも一様に驚愕の顔になる。
「それはまずい。まずいぞ。病で臥せっているというだけで、予が鶴御成で狩った鶴の呪いだなどと言われていたのに」
「はい。先の六義園の謀略もそこに端を発したものと思われます」
すると、安藤家老が割って入った。
「しかし、それを理由に公方様が殿へのご不快の念を爆発させたとすれば、出羽守を頼むしかあるまい。不和どころか、より親密になるのではないか」
「うむ、そうだな」と綱豊。そこで熙子が、「狩野、調べたところを殿に報告せよ」と言ったので、一同の視線が吉之助に集まった。
「はっ、申し上げます。私の調べでは、公方様は、現在、桂昌院様の甥である側用人・本庄豊後守様を頼りにされているご様子。先の赤穂浪人の処分についても、公方様のご意思は豊後守様経由で幕閣に伝えられております。そして、公方様は関係者全員の極刑をお求めであったとのこと」
「それが、浪人たちは武士の礼をもって切腹。親族も遠島が数名あった他は、出家や他家へのお預け程度で済んだ。公方様のご希望とは随分と違う」
安藤の意見に綱豊も同意する。
「確かにな。予も、お照に頼まれ、特に連座となる親族については寛大な処分をと意見書を出していたが、正直、通るとは思っていなかった」
さらに吉之助が補足する。
「吉良屋敷襲撃の直後は浪人たちを賊徒とする見方が大勢でした。しかし、町衆を中心に同情論が出始め、現在は武家の中でも赤穂寄りの意見が増えています。今回、幕閣はその世論に配慮しました。そして、その様に幕府内をまとめたのが出羽守様であったことも分かっております。出羽守様の変心は明らかです」
「そうか。しかし、決めつけてよいものか。詮房、どうだ?」
「事は重大です。今少し状況を見るべきかと」
その時、吉之助は強い視線を感じた。熙子に睨まれている。上段に座る小柄な彼女と下段にいる大柄の吉之助は、吉之助が頭を上げていると目の高さがちょうど合うのだ。思わず視線を逸らしたが、そこで熙子が軽く咳払いをした。すると、彼女の脇に控えていた平松時子が、主の前に姿のよい青磁の湯呑を差し出した。合わせたように綱豊にも近習が茶を持ってくる。
綱豊が茶を一口飲んだところで吉之助は意を決し、わずかに膝を前に進めた。
「殿。恐れながらお尋ねします。殿が最近、公方様と直接お話になったのはいつのことでしょうか」
「さて、はっきり覚えておらぬが、二、三年前か。元々疎まれているところはあったが、それでも以前は、登城すれば黒書院に招かれ直に言葉を交わしていたのだ。しかし、近頃は儀式などの折に大広間でお会いするのみ。しかも御簾越しだ。あの距離では、中に本当にいらっしゃるのか、それすら分からん」
「公方様がお城の奥に引き籠って久しく、さらに鶴姫様、桂昌院様と病重く、ますます情緒不安定に、いえ、これは失礼を。ご不安が募っている由、そんな中・・・」
「側用人の職を桂昌院派に握られ、出羽守も尻に火が着いたということか」と安藤が継いだ。
「はい。出羽守様は、公方様の命として、殿と共倒れを強いられることを恐れているのでしょう」
「内匠頭の一件も大きいか」
綱豊の言葉に皆が頷く。
将軍の、正に鶴の一声で歴とした大名が詮議なしに即日切腹。その現実に、文治の世とは名ばかりであるということを、大名だけでなく江戸中の武士が思い知らされた。
「今は、側用人を通さなければ老中と雖も公方様のご意思を窺い知ることは出来ません。その仕組みは出羽守様ご自身が作り上げ、利用してきたものです。その怖さも一番ご存知でしょう」
間部はそう言って、小さくため息を吐いた。これは珍しい。
「自業自得とも言えるが、捨て置くことも出来まい。どうしたものか」
綱豊が表情を一層曇らせ、脇息に肘をあずけて考え込む。そこに熙子が横から手を伸ばした。彼女は微笑を湛え、むしろ楽しそうだ。
「殿、これこそ天与の好機。せっかく敵が二つに割れてくれたのです。君主の大度を示し、出羽守に手を差し伸べてやっては如何?」
「そうか。お照はそう思うか」
「はい」
「そうだな。うぅむ、それで、出羽守は一体何を求めているのだ?」
「ご自身の地位の保全でしょう」と間部。
「地位とは何だ? 大老格老中首座か、老中職か、それとも、大名として生き残れればよいのか」
これには安藤家老が間髪入れずに反応。
「大名の地位を保証してやれば十分でございます。殿の治政において老中職を続けられるとは、よもや出羽守も思いますまい」
安藤は譜代の名門一族の出であるから、成り上がりの柳沢には殊更厳しい。
吉之助が続けて言う。
「殿。出羽守様は、ご嫡子・吉里様を大事にしておられます」
「それがどうした?」
「恐らく、出羽守様のご決心は、ご子息の行く末を案じてのことでしょう。故に、将来における吉里様の家督相続と要職へのお取立てを約束すれば、必ず乗ってきます」
「なるほど。詮房、どう思う?」
「尤もと存じます」
「お照、これでよいか」
「概ねよろしいかと。ただ、少し足りませんね。向こうが腰を抜かすほどの好条件を用意しましょう。無論、それ相応の働きをしてもらいますけれど」
数日後、吉之助は熙子に呼ばれた。彼女は庭の東屋で例の如く夕景を眺めている。
「狩野、頼みましたよ」
「はっ。最善を尽くす所存ですが、交渉役はやはり間部様にお任せするべきではないでしょうか」
「向こうは江戸家老が出て来るらしい。長年出羽守を支えてきた懐刀とか。こちらが間部を出せば、腹の探り合いとなって話が進むまい。よく聞け。此度は交渉ではない。こちらの条件を向こうが呑むか否か、それだけです。故に、そなたの如き真っ直ぐな者がよい」
「ははっ」
「それだけ伝えておきたかったのです。下がってよい」
しかし、吉之助はその場を動かず、もう一度、深々と頭を下げた。
「御前様。僭越ながら、ひとつよろしいでしょうか」
「何です?」
「御前様におかれましては、近頃、間部様に対して何か含むところがあるご様子。言うまでもないことですが、間部様は殿の右腕。能力識見はもとより、人柄も信用に足ると存じます。そこはお間違えのないように」
「分かっています。わたくしとて間部のことは頼りにしておる。されど、下手をすれば間部が第二の柳沢になりかねない。殿が作る新しい政には、あの様な存在は要らぬのです」
吉之助は顔を上げぬまま後ずさりして東屋から離れた。何やら熙子の鳳眼と目を合わせるのが怖かったのだ。そして、彼女の言う新しい政が、新しい不和をもたらすものでないことを祈りつつ、志乃とおりんが待つ御長屋に帰って行った。
「ひどいじゃないですか。先日に続いてまた置いてけぼりとは」
「すまん、すまん」
「とにかく、すぐに間部様の御用部屋に行って下さい。お陰で私まで・・・」
間部は文机の前に相変わらずの無表情、いつもの皺ひとつない裃姿で座っていた。冬場とは言え、内藤新宿との間を往復したわけで、吉竜ともに汗や泥で汚れている。間部の部屋はここだけ新築かと思うほど常に清潔だ。入室をためらっているとジロリと睨まれた。
「失礼します。お呼びとか」
「ええ、随分前に。狩野殿も島田殿も、すでに甲斐から出て来た頃の軽輩ではありません。せめて、行先ぐらいは告げて出て下さい」
「誠に申し訳ありませんでした」と、二人は揃って頭を下げた。
「ともかく、明日の四つ(ほぼ午前十時)に御成書院まで来るように。出羽守様が殿との会見を求めてきました。殿が意見をお求めです」
「ほう、出羽守様から動きましたか」
「狩野殿、何かご存知なのですか」
吉之助は、間部に将軍綱吉と出羽守の関係が悪化している可能性があり、御前様の指示を受けて川越藩の動きを探っていたことを話した。てっきり、熙子から綱豊へ、綱豊から間部に話が通っているものと思っていた。報告が遅れたことを併せて謝罪しておく。
「承知しました。では、今日も?」
「あっ、いや。本日は完全に別件です」
翌日、予定の時刻に御成書院での会議が始まった。出席者を身分順に並べると、甲府藩主・松平綱豊、正室・近衛熙子、江戸家老・安藤美作、熙子の側近・平松時子、用人・間部詮房、財務と渉外担当の中老二人、武官の代表格である番頭・鳴海帯刀。そして末席に、藩主直属の番士である狩野吉之助と島田竜之進。なお、政治顧問の新井白石は諸国遊歴中で欠席。
綱豊の丸顔には当惑の色が濃い。
「上様と出羽守が袂を分かったという話だが、本当なのか。詐略ではあるまいか。詮房、どうだ?」
「はっ。誠のことであると存じます。正式発表はまだですが、公方様のご長女・鶴姫様が身罷ったようにございます」
「な、なに?!」
綱豊だけでなく、熙子も知らなかったようだ。その他の者たちも一様に驚愕の顔になる。
「それはまずい。まずいぞ。病で臥せっているというだけで、予が鶴御成で狩った鶴の呪いだなどと言われていたのに」
「はい。先の六義園の謀略もそこに端を発したものと思われます」
すると、安藤家老が割って入った。
「しかし、それを理由に公方様が殿へのご不快の念を爆発させたとすれば、出羽守を頼むしかあるまい。不和どころか、より親密になるのではないか」
「うむ、そうだな」と綱豊。そこで熙子が、「狩野、調べたところを殿に報告せよ」と言ったので、一同の視線が吉之助に集まった。
「はっ、申し上げます。私の調べでは、公方様は、現在、桂昌院様の甥である側用人・本庄豊後守様を頼りにされているご様子。先の赤穂浪人の処分についても、公方様のご意思は豊後守様経由で幕閣に伝えられております。そして、公方様は関係者全員の極刑をお求めであったとのこと」
「それが、浪人たちは武士の礼をもって切腹。親族も遠島が数名あった他は、出家や他家へのお預け程度で済んだ。公方様のご希望とは随分と違う」
安藤の意見に綱豊も同意する。
「確かにな。予も、お照に頼まれ、特に連座となる親族については寛大な処分をと意見書を出していたが、正直、通るとは思っていなかった」
さらに吉之助が補足する。
「吉良屋敷襲撃の直後は浪人たちを賊徒とする見方が大勢でした。しかし、町衆を中心に同情論が出始め、現在は武家の中でも赤穂寄りの意見が増えています。今回、幕閣はその世論に配慮しました。そして、その様に幕府内をまとめたのが出羽守様であったことも分かっております。出羽守様の変心は明らかです」
「そうか。しかし、決めつけてよいものか。詮房、どうだ?」
「事は重大です。今少し状況を見るべきかと」
その時、吉之助は強い視線を感じた。熙子に睨まれている。上段に座る小柄な彼女と下段にいる大柄の吉之助は、吉之助が頭を上げていると目の高さがちょうど合うのだ。思わず視線を逸らしたが、そこで熙子が軽く咳払いをした。すると、彼女の脇に控えていた平松時子が、主の前に姿のよい青磁の湯呑を差し出した。合わせたように綱豊にも近習が茶を持ってくる。
綱豊が茶を一口飲んだところで吉之助は意を決し、わずかに膝を前に進めた。
「殿。恐れながらお尋ねします。殿が最近、公方様と直接お話になったのはいつのことでしょうか」
「さて、はっきり覚えておらぬが、二、三年前か。元々疎まれているところはあったが、それでも以前は、登城すれば黒書院に招かれ直に言葉を交わしていたのだ。しかし、近頃は儀式などの折に大広間でお会いするのみ。しかも御簾越しだ。あの距離では、中に本当にいらっしゃるのか、それすら分からん」
「公方様がお城の奥に引き籠って久しく、さらに鶴姫様、桂昌院様と病重く、ますます情緒不安定に、いえ、これは失礼を。ご不安が募っている由、そんな中・・・」
「側用人の職を桂昌院派に握られ、出羽守も尻に火が着いたということか」と安藤が継いだ。
「はい。出羽守様は、公方様の命として、殿と共倒れを強いられることを恐れているのでしょう」
「内匠頭の一件も大きいか」
綱豊の言葉に皆が頷く。
将軍の、正に鶴の一声で歴とした大名が詮議なしに即日切腹。その現実に、文治の世とは名ばかりであるということを、大名だけでなく江戸中の武士が思い知らされた。
「今は、側用人を通さなければ老中と雖も公方様のご意思を窺い知ることは出来ません。その仕組みは出羽守様ご自身が作り上げ、利用してきたものです。その怖さも一番ご存知でしょう」
間部はそう言って、小さくため息を吐いた。これは珍しい。
「自業自得とも言えるが、捨て置くことも出来まい。どうしたものか」
綱豊が表情を一層曇らせ、脇息に肘をあずけて考え込む。そこに熙子が横から手を伸ばした。彼女は微笑を湛え、むしろ楽しそうだ。
「殿、これこそ天与の好機。せっかく敵が二つに割れてくれたのです。君主の大度を示し、出羽守に手を差し伸べてやっては如何?」
「そうか。お照はそう思うか」
「はい」
「そうだな。うぅむ、それで、出羽守は一体何を求めているのだ?」
「ご自身の地位の保全でしょう」と間部。
「地位とは何だ? 大老格老中首座か、老中職か、それとも、大名として生き残れればよいのか」
これには安藤家老が間髪入れずに反応。
「大名の地位を保証してやれば十分でございます。殿の治政において老中職を続けられるとは、よもや出羽守も思いますまい」
安藤は譜代の名門一族の出であるから、成り上がりの柳沢には殊更厳しい。
吉之助が続けて言う。
「殿。出羽守様は、ご嫡子・吉里様を大事にしておられます」
「それがどうした?」
「恐らく、出羽守様のご決心は、ご子息の行く末を案じてのことでしょう。故に、将来における吉里様の家督相続と要職へのお取立てを約束すれば、必ず乗ってきます」
「なるほど。詮房、どう思う?」
「尤もと存じます」
「お照、これでよいか」
「概ねよろしいかと。ただ、少し足りませんね。向こうが腰を抜かすほどの好条件を用意しましょう。無論、それ相応の働きをしてもらいますけれど」
数日後、吉之助は熙子に呼ばれた。彼女は庭の東屋で例の如く夕景を眺めている。
「狩野、頼みましたよ」
「はっ。最善を尽くす所存ですが、交渉役はやはり間部様にお任せするべきではないでしょうか」
「向こうは江戸家老が出て来るらしい。長年出羽守を支えてきた懐刀とか。こちらが間部を出せば、腹の探り合いとなって話が進むまい。よく聞け。此度は交渉ではない。こちらの条件を向こうが呑むか否か、それだけです。故に、そなたの如き真っ直ぐな者がよい」
「ははっ」
「それだけ伝えておきたかったのです。下がってよい」
しかし、吉之助はその場を動かず、もう一度、深々と頭を下げた。
「御前様。僭越ながら、ひとつよろしいでしょうか」
「何です?」
「御前様におかれましては、近頃、間部様に対して何か含むところがあるご様子。言うまでもないことですが、間部様は殿の右腕。能力識見はもとより、人柄も信用に足ると存じます。そこはお間違えのないように」
「分かっています。わたくしとて間部のことは頼りにしておる。されど、下手をすれば間部が第二の柳沢になりかねない。殿が作る新しい政には、あの様な存在は要らぬのです」
吉之助は顔を上げぬまま後ずさりして東屋から離れた。何やら熙子の鳳眼と目を合わせるのが怖かったのだ。そして、彼女の言う新しい政が、新しい不和をもたらすものでないことを祈りつつ、志乃とおりんが待つ御長屋に帰って行った。
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