32 / 94
第30章 勅額火事
しおりを挟む
御前様・近衛熙子の言う通り、治にいて乱を忘れず、の心構えは大事だが、徳川の覇権が確立してほぼ百年。地方の大名が反乱を起こし、江戸に攻め寄せるという状況はなかなか考えにくい。江戸の町にとって具体的な脅威と言えば、まずは火事であった。
「ご苦労様でした。水戸の御老公のご様子について、何か分かりましたか」
「夏風邪だそうです。ただ、ご病状は昨年より軽く、すでにご本復。今は日々歴史書の編纂に精を出しておられる、とのことです」
「そうですか。それは重畳」
季節は巡る。元禄十一年(一六九八年)九月六日、吉之助は、朝一番で水戸藩上屋敷に出向いた。表向きは水戸藩主に宛てた主君・松平綱豊の残暑見舞いを届けるためだが、真の目的は、体調を崩していると伝わる先代・徳川光圀の様子を探ることにあった。
光圀は綱豊の最大の後援者であるが、すでに齢七十。その健康状態は、甲府藩の面々にとって、主の将来を左右する重大事なのだ。
ちなみに、黄門とは、中納言の中国における呼称である。光圀はすでに隠居しているので前中納言。それに対して、綱豊は現役の権中納言。従って、綱豊こそ甲府黄門と呼ばれてもよさそうなものだが、黄門と言えば、やはり水戸なのである。
吉之助と間部が話していると、竜之進が戻ってきた。同時に、昼九つ(ほぼ正午)を告げる増上寺の鐘が、ゴ~ン、ゴ~ンと鳴り始める。
「お疲れさん」
「ええ。ほんと、疲れましたよ。内藤家のご隠居に延々と出羽守様の悪口を聞かされ・・・」
竜之進の言葉が終わらぬ内に、増上寺の鐘に被る形で、カンカンという短く鋭い金属音が聞こえてきた。
「うん? 火事ですか。距離はありそうだけど」
ところが、そうこうしている内に金属音がいくつも重なり、さらに増え続けた。
「結構近い音もあるぞ。これは只事ではない」
「しまった! 殿はお城だ。こんな時にお側を離れるとは」
「間部様、それをここで悔いても始まりません。とにかく、火事の状況を確かめましょう」と、吉竜両名が同時に立ち上がる。
そこに廊下をドスドスと踏み鳴らしながら、江戸家老の安藤美作がやって来た。
「間部! いるか」
「はっ。すぐに状況を確認し・・・」
「それはいい。すでに番方から十名ほど市中に放った。それより、御成書院に行くぞ。御前様がお呼びだ。狩野、島田、お前たちも来い!」
安藤美作は、日頃は何事も間部任せの昼行燈だが、彼の出身母体である安藤一族は、有能な武将や行政官を多数輩出してきた譜代の名門だ。いざとなれば頼りになる。
吉之助らが御成書院に着くと、すでに綱豊の正室・近衛熙子が上段之間の中央にいた。彼女の前には数枚の地図が広げられ、番頭の鳴海帯刀が何やら説明している。
「皆々、大儀。こちらへ。間部。今、殿のお側には誰が?」と熙子。
「はっ、本日は中老の・・・」と間部が言いかけたとき、藩士が一人駆け込んできた。彼は書院に面する廊下に片膝を付き叫んだ。
「ご注進! 火元は、京橋近辺でございます」
「どこ?」
「この辺りです」と、鳴海が地図上を指す。
「なるほど。よい。直答を許す。それで、鎮火の目途は?」
「不明でございます。ただ、火勢、極めて強く、北に向かって燃え広がっております」
「北、とな。こちらか」と、熙子が扇の尻で地図上をなぞる。どことなく楽しそうだ。
「そうなると、神田の辺りが大きな被害を受けそうですな」と、安藤も地図を覗き込む。
「神田川で止まってくれるかしら?」
「そうあって欲しいですが、楽観は出来ません」
「分かりました。美作殿、殿がお帰りになるまで、屋敷の指揮を頼みます。全藩士を招集し、警戒を。間部、そなたはすぐにお城へ行きなさい。殿をお助けするのです」
「かしこまりました」
「狩野吉之助、島田竜之進」
「はっ」
熙子にいきなり名を呼ばれた二人が、驚いて姿勢を正す。
「二人は殿直属の番士でしたね。ならば、とりあえず神田川の線まで、狩野は、こちら、お城の西側を、島田は東側を見てきなさい。火の状況だけでなく、殿が出陣する場合に備え、進出経路や陣所に相応しい場所など、必要なことを調べてくるのです」
「かしこまりました」と両名。
「よろしい。そして、鳴海は番方の長として人員と装備の・・・」
すると、間部がわずかに膝を前に進めた。顔が青い。
「ご、御前様。お言葉を遮る無礼をお許し下さい」
「何です?」
「恐れながら、御前様には、殿がご出陣されるとお考えですか」
「そうです」
「重々ご承知のことと存じますが、火消しは月番老中指揮の下、担当の大名が当たります。勝手な行動は取れません。我らは、まず、この浜屋敷の周囲を・・・」
時代劇などでよく見る町火消はまだない。この時代、市中の消火活動は、六万石以下の大名で編成される大名火消が担っていた。
「分かっています。されど、明暦の大火のときも、最初は半時(一時間)もあれば鎮火すると思われていて、結局、丸二日間燃え続けたというではありませんか。此度とてどうなるか。最悪に備えるべきです。空騒ぎに終われば、それはそれで結構」
そこで熙子は、鳳眼を輝かせて一座を見回した。皆、思わず姿勢を正す。
「よいか。それぞれ、殿の御ため、使命を果たすのです。さあ、行きなさい」
「ははっ」
熙子に励まされて書院を出ると、横で竜之進が呟いた。
「見事なご采配だ。御前様には驚かされるばかりですよ」
「まったくだ」
すると、間部が補足説明してくれた。
「御前様は、日頃から和漢の史書や軍記物を愛読しておられます。漢の高祖(劉邦)を助けた留侯(張良)がお好きなようです」
張良、字は子房。帷幕にあって策を巡らし、勝ちを千里の外に決したという天才軍師。彼は、ほとんど流民集団とも言える劉邦軍の中で、唯一、筋目正しい貴族の出であった。熙子が好むのももっともだ。
「御前様の軍師気取りはともかく、あのご指示は正しい。一同、気を引き締めてかかれ」と、安藤が締めた。
吉之助と竜之進が偵察を終え、浜屋敷の御成書院に戻ったのは、一時(二時間)後のことであった。すでに綱豊も城から戻り、熙子と並んで上段にいる。
「お照、よくやってくれた。そなたの手配りのお陰ですぐに出陣できるぞ」
「当然のことです。それで、殿のお役目は?」
「うむ。寛永寺の守護だ。先日落成したばかりの諸堂はもちろん、帝から賜った勅額を守らねばならぬ。しかし、思ったより火の勢いが強く、大名火消だけでは手が足りぬ。そこで、徳川の聖地たる寛永寺は、御三家を含む我ら一門衆でお守りすることになったのだ」
「その指揮官に殿が?」
興奮を隠し切れない熙子に対し、間部が城内での協議の流れを説明した。
「はい。当初、御三家筆頭の尾張様を頭にという話でしたが、紀州様が難色を。それならと紀州様を立てようとしたところ、当然、尾張様が納得しません。それで、水戸様と会津様が間に立ち、公方様の甥御である殿を指揮官に仰ぐことで決着しました」
「素晴らしい。やはり、殿には天運が・・・」
「お照、すでに神田一帯は火の海だ。多くの者が家を焼かれ、死者も出ている。喜んでいる場合ではないぞ」
「これは、わたくしとしたことが、大変失礼いたしました」と殊勝に述べる熙子。しかし、彼女の鳳眼はますます光を増し、一瞬だが、不敵な笑みをも浮かべたように見えた。
「ご苦労様でした。水戸の御老公のご様子について、何か分かりましたか」
「夏風邪だそうです。ただ、ご病状は昨年より軽く、すでにご本復。今は日々歴史書の編纂に精を出しておられる、とのことです」
「そうですか。それは重畳」
季節は巡る。元禄十一年(一六九八年)九月六日、吉之助は、朝一番で水戸藩上屋敷に出向いた。表向きは水戸藩主に宛てた主君・松平綱豊の残暑見舞いを届けるためだが、真の目的は、体調を崩していると伝わる先代・徳川光圀の様子を探ることにあった。
光圀は綱豊の最大の後援者であるが、すでに齢七十。その健康状態は、甲府藩の面々にとって、主の将来を左右する重大事なのだ。
ちなみに、黄門とは、中納言の中国における呼称である。光圀はすでに隠居しているので前中納言。それに対して、綱豊は現役の権中納言。従って、綱豊こそ甲府黄門と呼ばれてもよさそうなものだが、黄門と言えば、やはり水戸なのである。
吉之助と間部が話していると、竜之進が戻ってきた。同時に、昼九つ(ほぼ正午)を告げる増上寺の鐘が、ゴ~ン、ゴ~ンと鳴り始める。
「お疲れさん」
「ええ。ほんと、疲れましたよ。内藤家のご隠居に延々と出羽守様の悪口を聞かされ・・・」
竜之進の言葉が終わらぬ内に、増上寺の鐘に被る形で、カンカンという短く鋭い金属音が聞こえてきた。
「うん? 火事ですか。距離はありそうだけど」
ところが、そうこうしている内に金属音がいくつも重なり、さらに増え続けた。
「結構近い音もあるぞ。これは只事ではない」
「しまった! 殿はお城だ。こんな時にお側を離れるとは」
「間部様、それをここで悔いても始まりません。とにかく、火事の状況を確かめましょう」と、吉竜両名が同時に立ち上がる。
そこに廊下をドスドスと踏み鳴らしながら、江戸家老の安藤美作がやって来た。
「間部! いるか」
「はっ。すぐに状況を確認し・・・」
「それはいい。すでに番方から十名ほど市中に放った。それより、御成書院に行くぞ。御前様がお呼びだ。狩野、島田、お前たちも来い!」
安藤美作は、日頃は何事も間部任せの昼行燈だが、彼の出身母体である安藤一族は、有能な武将や行政官を多数輩出してきた譜代の名門だ。いざとなれば頼りになる。
吉之助らが御成書院に着くと、すでに綱豊の正室・近衛熙子が上段之間の中央にいた。彼女の前には数枚の地図が広げられ、番頭の鳴海帯刀が何やら説明している。
「皆々、大儀。こちらへ。間部。今、殿のお側には誰が?」と熙子。
「はっ、本日は中老の・・・」と間部が言いかけたとき、藩士が一人駆け込んできた。彼は書院に面する廊下に片膝を付き叫んだ。
「ご注進! 火元は、京橋近辺でございます」
「どこ?」
「この辺りです」と、鳴海が地図上を指す。
「なるほど。よい。直答を許す。それで、鎮火の目途は?」
「不明でございます。ただ、火勢、極めて強く、北に向かって燃え広がっております」
「北、とな。こちらか」と、熙子が扇の尻で地図上をなぞる。どことなく楽しそうだ。
「そうなると、神田の辺りが大きな被害を受けそうですな」と、安藤も地図を覗き込む。
「神田川で止まってくれるかしら?」
「そうあって欲しいですが、楽観は出来ません」
「分かりました。美作殿、殿がお帰りになるまで、屋敷の指揮を頼みます。全藩士を招集し、警戒を。間部、そなたはすぐにお城へ行きなさい。殿をお助けするのです」
「かしこまりました」
「狩野吉之助、島田竜之進」
「はっ」
熙子にいきなり名を呼ばれた二人が、驚いて姿勢を正す。
「二人は殿直属の番士でしたね。ならば、とりあえず神田川の線まで、狩野は、こちら、お城の西側を、島田は東側を見てきなさい。火の状況だけでなく、殿が出陣する場合に備え、進出経路や陣所に相応しい場所など、必要なことを調べてくるのです」
「かしこまりました」と両名。
「よろしい。そして、鳴海は番方の長として人員と装備の・・・」
すると、間部がわずかに膝を前に進めた。顔が青い。
「ご、御前様。お言葉を遮る無礼をお許し下さい」
「何です?」
「恐れながら、御前様には、殿がご出陣されるとお考えですか」
「そうです」
「重々ご承知のことと存じますが、火消しは月番老中指揮の下、担当の大名が当たります。勝手な行動は取れません。我らは、まず、この浜屋敷の周囲を・・・」
時代劇などでよく見る町火消はまだない。この時代、市中の消火活動は、六万石以下の大名で編成される大名火消が担っていた。
「分かっています。されど、明暦の大火のときも、最初は半時(一時間)もあれば鎮火すると思われていて、結局、丸二日間燃え続けたというではありませんか。此度とてどうなるか。最悪に備えるべきです。空騒ぎに終われば、それはそれで結構」
そこで熙子は、鳳眼を輝かせて一座を見回した。皆、思わず姿勢を正す。
「よいか。それぞれ、殿の御ため、使命を果たすのです。さあ、行きなさい」
「ははっ」
熙子に励まされて書院を出ると、横で竜之進が呟いた。
「見事なご采配だ。御前様には驚かされるばかりですよ」
「まったくだ」
すると、間部が補足説明してくれた。
「御前様は、日頃から和漢の史書や軍記物を愛読しておられます。漢の高祖(劉邦)を助けた留侯(張良)がお好きなようです」
張良、字は子房。帷幕にあって策を巡らし、勝ちを千里の外に決したという天才軍師。彼は、ほとんど流民集団とも言える劉邦軍の中で、唯一、筋目正しい貴族の出であった。熙子が好むのももっともだ。
「御前様の軍師気取りはともかく、あのご指示は正しい。一同、気を引き締めてかかれ」と、安藤が締めた。
吉之助と竜之進が偵察を終え、浜屋敷の御成書院に戻ったのは、一時(二時間)後のことであった。すでに綱豊も城から戻り、熙子と並んで上段にいる。
「お照、よくやってくれた。そなたの手配りのお陰ですぐに出陣できるぞ」
「当然のことです。それで、殿のお役目は?」
「うむ。寛永寺の守護だ。先日落成したばかりの諸堂はもちろん、帝から賜った勅額を守らねばならぬ。しかし、思ったより火の勢いが強く、大名火消だけでは手が足りぬ。そこで、徳川の聖地たる寛永寺は、御三家を含む我ら一門衆でお守りすることになったのだ」
「その指揮官に殿が?」
興奮を隠し切れない熙子に対し、間部が城内での協議の流れを説明した。
「はい。当初、御三家筆頭の尾張様を頭にという話でしたが、紀州様が難色を。それならと紀州様を立てようとしたところ、当然、尾張様が納得しません。それで、水戸様と会津様が間に立ち、公方様の甥御である殿を指揮官に仰ぐことで決着しました」
「素晴らしい。やはり、殿には天運が・・・」
「お照、すでに神田一帯は火の海だ。多くの者が家を焼かれ、死者も出ている。喜んでいる場合ではないぞ」
「これは、わたくしとしたことが、大変失礼いたしました」と殊勝に述べる熙子。しかし、彼女の鳳眼はますます光を増し、一瞬だが、不敵な笑みをも浮かべたように見えた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
融女寛好 腹切り融川の後始末
仁獅寺永雪
歴史・時代
江戸後期の文化八年(一八一一年)、幕府奥絵師が急死する。悲報を受けた若き天才女絵師が、根結いの垂髪を揺らして江戸の町を駆け抜ける。彼女は、事件の謎を解き、恩師の名誉と一門の将来を守ることが出来るのか。
「良工の手段、俗目の知るところにあらず」
師が遺したこの言葉の真の意味は?
これは、男社会の江戸画壇にあって、百人を超す門弟を持ち、今にも残る堂々たる足跡を残した実在の女絵師の若き日の物語。最後までお楽しみいただければ幸いです。
南町奉行所お耳役貞永正太郎の捕物帳
勇内一人
歴史・時代
第9回歴史・時代小説大賞奨励賞受賞作品に2024年6月1日より新章「材木商桧木屋お七の訴え」を追加しています(続きではなく途中からなので、わかりづらいかもしれません)
南町奉行所吟味方与力の貞永平一郎の一人息子、正太郎はお多福風邪にかかり両耳の聴覚を失ってしまう。父の跡目を継げない彼は吟味方書物役見習いとして南町奉行所に勤めている。ある時から聞こえない正太郎の耳が死者の声を拾うようになる。それは犯人や証言に不服がある場合、殺された本人が異議を唱える声だった。声を頼りに事件を再捜査すると、思わぬ真実が発覚していく。やがて、平一郎が喧嘩の巻き添えで殺され、正太郎の耳に亡き父の声が届く。
表紙はパブリックドメインQ 著作権フリー絵画:小原古邨 「月と蝙蝠」を使用しております。
2024年10月17日〜エブリスタにも公開を始めました。

【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原
糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。
慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。
しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。
目指すは徳川家康の首級ただ一つ。
しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。
その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。

キャサリンのマーマレード
空原海
歴史・時代
ヘンリーはその日、初めてマーマレードなるデザートを食べた。
それは兄アーサーの妃キャサリンが、彼女の生国スペインから、イングランドへと持ち込んだレシピだった。
のちに6人の妻を娶り、そのうち2人の妻を処刑し、己によく仕えた忠臣も邪魔になれば処刑しまくったイングランド王ヘンリー8世が、まだ第2王子に過ぎず、兄嫁キャサリンに憧憬を抱いていた頃のお話です。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
三国志 群像譚 ~瞳の奥の天地~ 家族愛の三国志大河
墨笑
歴史・時代
『家族愛と人の心』『個性と社会性』をテーマにした三国志の大河小説です。
三国志を知らない方も楽しんでいただけるよう意識して書きました。
全体の文量はかなり多いのですが、半分以上は様々な人物を中心にした短編・中編の集まりです。
本編がちょっと長いので、お試しで読まれる方は後ろの方の短編・中編から読んでいただいても良いと思います。
おすすめは『小覇王の暗殺者(ep.216)』『呂布の娘の嫁入り噺(ep.239)』『段煨(ep.285)』あたりです。
本編では蜀において諸葛亮孔明に次ぐ官職を務めた許靖という人物を取り上げています。
戦乱に翻弄され、中国各地を放浪する波乱万丈の人生を送りました。
歴史ものとはいえ軽めに書いていますので、歴史が苦手、三国志を知らないという方でもぜひお気軽にお読みください。
※人名が分かりづらくなるのを避けるため、アザナは一切使わないことにしました。ご了承ください。
※切りのいい時には完結設定になっていますが、三国志小説の執筆は私のライフワークです。生きている限り話を追加し続けていくつもりですので、ブックマークしておいていただけると幸いです。

江戸情話 てる吉の女観音道
藤原 てるてる
歴史・時代
この物語の主人公は、越後の百姓の倅である。
本当は跡を継いで百姓をするところ、父の後釜に邪険にされ家を出たのであった。
江戸に出て、深川で飛脚をして渡世を送っている。
歳は十九、取り柄はすけべ魂である。女体道から女観音道へ至る物語である。
慶応元年五月、あと何年かしたら明治という激動期である。
その頃は、奇妙な踊りが流行るは、辻斬りがあるはで庶民はてんやわんや。
これは、次に来る、新しい世を感じていたのではないのか。
日本の性文化が、最も乱れ咲きしていたと思われるころの話。
このてる吉は、飛脚であちこち街中をまわって、女を見ては喜んでいる。
生来の女好きではあるが、遊び狂っているうちに、ある思いに至ったのである。
女は観音様なのに、救われていない女衆が多すぎるのではないのか。
遊女たちの流した涙、流せなかった涙、声に出せない叫びを知った。
これは、なんとかならないものか。何か、出来ないかと。
……(オラが、遊女屋をやればええでねえか)
てる吉は、そう思ったのである。
生きるのに、本当に困窮しとる女から来てもらう。
歳、容姿、人となり、借金の過多、子連れなど、なんちゃない。
いつまでも、居てくれていい。みんなが付いているから。
女衆が、安寧に過ごせる場を作ろうと思った。
そこで置屋で知り合った土佐の女衒に弟子入りし、女体道のイロハを教わる。
あてがって来る闇の女らに、研がれまくられるという、ありがた修行を重ねる。
相模の国に女仕入れに行かされ、三人連れ帰り、褒美に小判を頂き元手を得る。
四ツ谷の岡場所の外れに、掘っ立て小屋みたいな置屋を作る。
なんとか四人集めて来て、さあ、これからだという時に……
てる吉は、闇に消えたのであった。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる