狩野岑信 元禄二刀流絵巻

仁獅寺永雪

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物語前半の主要登場人物

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(1) 主人公及び近しい人々
 
狩野吉之助(かのう・きちのすけ)
 本作の主人公、三十五歳。後の奥絵師・狩野岑信(かのう・みねのぶ)、そして、土圭之間詰め番士・松本友盛(まつもと・とももり)。
 江戸画壇の総帥・狩野常信の次男。兄に優る絵画の才能を持ちながら、勘当同然に家を出された。甲斐で山役人として生き直していたところ、偶然の出会いから風雲渦巻く江戸に戻る。その後、絵師と武士の二刀流で主君のために奮闘する。六尺二寸の大男、得意とする武術は杖術。

狩野志乃(かのう・しの)
 吉之助の妻、三十三歳。戦国末期に甲斐に土着した狩野氏末流の家の一人娘。さばけた気性のしっかり者。

島田竜之進(しまだ・りゅうのしん)
 江戸で吉之助の相棒となる若者、二十六歳。不遇な育ちを感じさせない明るく素直な性格。一刀流の遣い手。

りん(りん)
 吉之助が甲州街道で出会う少女、十二歳(初登場時)。巾着切の手先として働かされていたが、吉之助と出会い救われる。手先は器用だが行儀作法は苦手、生命力の塊。

(2) 甲府藩関係者

西田春之丞(にしだ・はるのじょう)
 江戸の御家人、三十二歳。無役のため、甲府藩用人を務める弟を手伝い、探索方として各所を見て回っている。爽やかな好漢。この男と出会ったことで、吉之助の運命が・・・。

松平綱豊(まつだいら・つなとよ)
 吉之助の主君、三十五歳。甲府藩第二代藩主。江戸幕府第五代将軍・徳川綱吉の甥で、次期将軍の最有力候補。慈悲深く、身分に相応しい責任感を持つ。一方で優柔不断な面も。京都から迎えた正室に頭が上がらない。

近衛熙子(このえ・ひろこ)
 綱豊の正室、三十一歳。五摂家筆頭・近衛家の長女。父方の曾祖父は後陽成天皇、母方の祖父は後水尾天皇という超セレブ姫君。その美貌と聡明さから、天照大神の生まれ変わりと称えられている。しかし、その本質は好奇心旺盛なお転婆娘。政治に強い関心を持ち、夫を励ます。切れ長の鳳眼が印象的。

間部詮房(まなべ・あきふさ)
 西田春之丞の実弟、甲府藩用人、三十一歳。将軍継嗣争いの渦中にある主君を守るため、日夜心を砕く。信じられぬほど整った顔立ち。ただ、瓜二つの兄とは異なり、めったに感情を表に出さない。極めて有能だが、危機対応には若干の難あり。

安藤美作(あんどう・みまさか)
 甲府藩江戸家老、四十七歳。日頃は何事も間部に任せ切りの昼行燈。しかし、いざという時には頼りなる武寄りの重臣。

平松時子(ひらまつ・ときこ)
 中級公家・平松中納言の次女、近衛熙子に幼少時から仕える才色兼備の側近。やりたい放題の熙子を諫めながら、実はそれを楽しんでいる。熙子より三歳上。

(3) 主人公と敵対する人々

新見典膳(にいみ・てんぜん)
 先代甲府藩主の側近にして松平綱豊の育ての親・新見正信の嫡子。元の名は正友。三十五歳。ちょっとした偶然から、監視役の庄屋一家を斬殺して甲斐を出奔。甲府藩主家に恨みを抱き、吉之助の宿敵となる。愛刀は、先祖伝来の反りの深い騎兵刀。

乙星太夫(おとぼしだゆう)
 京都島原の高級遊女、二十四歳。全ての男を惑わす桃花眼の持ち主。典膳と出会い、人生を大きく回転させる。彼女の底知れぬ野心は、やがて・・・。

穴山重蔵(あなやま・じゅうぞう)
 川越藩江戸家老、大老格老中首座・柳沢出羽守の懐刀。主君の意を受け、将軍綱吉が忌み嫌う松平綱豊を失脚させるべく謀略を巡らす。四十代後半。

青柳厳四郎(あおやぎ・げんしろう)
 初登場時二十五歳。本名は柳生厳四郎、柳生藩先代藩主の四男。父親が晩年に下女に産ませた子であったため、山深い柳生の里で育てられ、そのまま飼い殺しとなっていた。典膳と意気投合し、その誘いで江戸に出る。筋目正しい新陰流の遣い手。

水分嵐子(みくまり・らんこ)
 柳生藩足軽の娘。早くに両親を亡くし、孤児同然に育つ。三歳上の厳四郎を慕い、勝手に付き従っている。厳四郎を上回る剣の天才。その無敵の抜刀術は、行くところ必ず屍山血河となす。また、景色を見たまま写し取る画才の持ち主。
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