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大濠泉

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第一章 東堂正宗派遣:勇者編

◆21 俺様は戦うために飛んだんだ。決して逃げるためじゃない!

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 今この場にいる人間の中で、空を飛べるのは俺様、〈勇者マサムネ〉だけだ。
 だから、空から迫り来る敵に対処できるのは、俺様だけということになる。

(よぉし! 
 見事、独りで戦って良いところ、見せてやろうじゃないの!)

 俺は、マジで本気を出すことにした。
 狙いどころは、単純だ。
 俺様の本気を目にすれば、聖女様の親衛隊どもも、押し黙るはず。
 さすがに、俺様の勇姿に、感嘆を禁じ得ないだろう。

『神のごとく空を舞い、魔族を撃退するーー。
 さすがは、異世界からやって来た勇者様ーー救世主様だ!』と。

 俺様は、そんな都合良い妄想を抱えながら、大空を飛翔する。
 グングン高度を上げていき、かれこれ千メートルほどは上空にあがっただろうか。

(これが飛翔フライの能力か。便利なもんだ!)

 俺様は空中で動きを停止し、地面を見下ろした。
 さすがに人間も魔族も、地をう存在はみな、豆粒ほどに見えた。

 だが……。

(ありゃ? こりゃあ、まずったか……!?)

 はるか地面を見下ろした俺は、血の気が退いた。
 地上では、魔族の竜騎兵軍団が、聖女様たちがいる陣地に向けて殺到していたからだ。

(おいおい、つのかよ、アイツら。
 俺様が空中で活躍しても、戻るところがなくなっちまうんじゃ……!?)

 たしかに、空を飛べるのは、俺様、勇者マサムネだけだ。
 つまり俺だけが空を飛んで、陸上の敵の攻撃を避けることができた。
 ゆえに空を飛べず、避けることが出来ない、地上に残された人間集団に、敵の攻撃が集中してしまったというわけだ。

(……むっ!?)

 地を這う連中の身を案じてばかりもいられなかった。
 単身、空を舞った俺にも、敵の刃が迫ってきていた。

 蝙蝠男バットマンの軍勢が、俺を遠巻きにしながらも、上下左右から取り囲み、翼をバタつかせてきたのである。

(いかにも、魔族ってかんじのデザインだな。
 それに、数も多いーーザッと五十ほどか……)

 蝙蝠こうもりどもが、バタバタと翼をはためかせる。
 翼だけは蝙蝠のようではない。
 黒い色ながら、鷲だか鷹のように大きな翼を持っていて、激しく羽ばたかせることができるみたいだ。
 翼がかなでる羽音が激しい。
 さらに、音とともに、強風が俺の顔をあおる。

(くっ、なんだよ、風当たりが強いな。
 結構、距離あるのに、風を起こすコツでもあるのかよ。
 ーーええい、鬱陶しい。
 目を開けていられねえじゃねぇか。
 でやあぁッ!)

 目を閉じたり、開けたりしながらの戦いになった。
 二、三体で固まって押し寄せてくる蝙蝠どもを、サラリとかわし、俺は剣をふるった。
 怖いほどの切れ味だった。
 空中戦ゆえに足場がないのに、腕を適当に振り回すだけで、スパスパと敵の身体を切り刻めた。
 だが、蝙蝠どもも、かなりしぶとかった。
 手足から緑色の血液を盛大に流しながらも、槍を突いてくる。

(おお、どんだけしつこいんだよ、蝙蝠のヤツら……。
 ーーそうだ!
 だったら、もっと効率良く……)

 蝙蝠どもの身体は、どうやら剛毛で覆われているようだ。
 だから斬っても斬っても、手足を切断しても、撤退しない。
 空を舞い続ける。

 ーーだったら、墜落させれば良いんじゃね?

「いくぞ!」

 俺は剣先を敵に向けて突き立てた。
 ひたすら敵の翼を狙ったのである。

(どうだ! 翼を負傷したら、ヤツらも浮いてはいられまい。
 俺様のように、魔力で飛んでいるわけじゃないからなぁ!)

 案の定、翼を斬られた蝙蝠どもは、次々と地面へと落下していった。
 蝙蝠どもも同じように、俺を効率良く攻撃しようとしているみたいであったが、手筈(てはず)が思い至らないようだった。
 蝙蝠どもは目をぐるぐる動かし、仲間同士でざわめき合うばかり。

 俺はほくそ笑んだ。

(まあ、俺様が魔法能力ではなく、翼や噴射とかの物理力で飛んでいたんなら、打つ手もあっただろうけどな。
 それに悪いが、剣を抜いた俺様は、無敵だ!)

 敵が至近距離に近づいてきたら、俺は間違いなく翼をぶった斬ることができた。

 実際、かれこれ五度ほど迎撃したら、敵は接近して来なくなった。
 俺が雷魔法を込めると、剣の刀身が青白く輝く。
 その輝きを目にしただけで、蝙蝠どもは近づこうとしなくなる。

〈勇者マサムネ〉は、さすがに存在自体がチートだった。
 五十を数える魔族相手の空中戦においても、圧倒的に優勢であった。

 とはいえ、それはそれで困ることもある。
 このまま敵が慎重になって距離を取られると、戦闘が長引いてしまう。

 俺は手応えのなさに、うんざりした。

(こりゃ、千日手になるかも……)

 ーーなどと考えていたら、敵軍団が、怪しげな団体行動を始めた。

 何十人もの蝙蝠男が、俺を取り囲んだ状態で輪になって、いっせいに大口を広げ始めたのだ。
 あたかも、親鳥から餌をもらう雛鳥ひなどりみたいに……。

 俺は本能的に、察知した。

(やばいぞ。なにか攻撃が来る!?
 だったら……)

 敵の攻撃が何かわからないうちに、俺は能力スキルを発動した。

反射カウンター!」
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