東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!

大濠泉

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第一章 東堂正宗派遣:勇者編

◆3 勇者マサムネのステータス


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 俺、東堂正宗とうどうまさむねは、異世界における自分の身体をチェックしようと、自らの手で方々を叩きまくる。

(えっと……胸も足も大丈夫っと。
 ーーでも、ほんと、こんなんで身長が三メートル近くもあるってのか?
 信じられんな)

 すると、脳内に、若い女性の声が響いてきた。
 雇用主・妹の星野ひかりが、赤色の通信ボタンを押したらしい。
 モニターに付属する赤いボタンを押せば、異世界に派遣した者と交信できると言っていた。(彼女には仕組みを説明できないようだが)

 時空を異にする世界同士で、どうやって音声や映像を同期するのかサッパリわからん。
 でも、まあ、通信一つもできないようでは不便この上ないから、たしかに理屈なんざどうでもいい。便利に交信できさえすれば、それで良いと思う。

「マサムネくん、聞こえる?
 管理責任は私たちにあるから、コレから先、色々とアドバイスを送るわね。
 あなたは〈異世界から召喚された伝説の勇者〉ってことになってるから」

「〈伝説の勇者〉ねえーーこの俺様が。
 なんだか、実感ないな」

 自慢じゃないが、俺様は〈世界を救う〉などといった、自分に無益な行為をする趣味はまったくない。
 だが、仕事となると話が別だ。
 少なくとも自分に利益となる報酬が得られるのだから。

「実感がなくても、心配ない。
 ちゃんと、勇者様にみえてるわよ」

 ひかりの声が、脳裡のうりにこだまする。

 ほう。さすがは俺様だ。
 実感が持てないのに、すっかり〈勇者〉になってるってか。

「本当に? やっぱ宇宙レベルの俺様は、オーラが違うか」

〈勇者マサムネ〉として、俺は明るい声をあげた。
 が、交信相手は、ハァと息を漏らす。

「バカね。あなたの服装のことよ」

「え! 服装?」

 俺はアゴを下に向けて、再度、自分の手で、身体をアチコチ触りまくる。

「ーーああ、そうだったな。
 ついさっき確認したんだ。
 なんなんだこの格好は。
 コイツもナノマシンがいじったのか」

 背中にあかいマントがひるがえっており、頭には巨大な宝石が付いた革製バンダナが巻かれている。
 革製の鎧に、大振りの剣をげた姿ーーまさに姿形が〈いかにもな勇者〉であった。

「そうね。もとの服装を原子分解してから再構成してるって話よ。
 都合良く、派遣先ソッチに合わせた格好に設定してるわ」

 なんとも、都合が良いことで。
 でもーー。
 うん、こうした勇者コスプレも悪くない。
 お仕着せの作業着で仕事をさせられるよりは、よほど気分が良い。

 俺は軽口を叩いた。

「うんうん。結構イケてるかもな。
 ってことで、ひかりちゃん。俺様に惚れるなよ」

 俺の揶揄からかいを受けて、ひかりは呆れた声を出す。

「バカなこと言ってないで、まずは自分の能力を確認して」

 了解、とばかりに、俺は内心で強く意識した。

「ステータス・オープン!」と。

 すると、ステータス表が、目の前に現れた。

 名前:マサムネ 年齢:25 職業:勇者 レベル:20/20
 体力:999/1000 魔力量:999/1000
 攻撃力:999/1000 防御力:700/1000
 治癒力:600/1000
 俊敏性:700/1000
 スキル:鑑定・雷撃・火炎・索敵・加速・飛翔・反射・復元
 個性能力ユニーク・スキル混合カクテル

「おおっ!?」

 ステータス表を見るやいなや、俺は驚きの声をあげた。

 なんと、魔力量、攻撃力ともに999《スリーナイン》。
 ほとんどカンストだ。
 派遣前に調整すれば、こうして極限近くにまで魔力を増大させることができるらしい。

 こいつはナノマシンの性能のおかげではなく、転送する間に、意図的に起こした情報的雑音ノイズーー言葉を悪く言えば、情報的なバグのせいで、設定・付与されるものらしい。

 そういえば、一度、細胞レベルまで分析・解体してから、異世界で再構成するって言ってたもんな。
 その間に、魔力絡みの能力については、意図的に情報を放り込むと言っていた。
 その成果ってやつだ。

 雇い主の星野ひかりも明言する。

「そっちの世界での人間能力値は全ジャンル平均10以下だから、今のアナタはズバ抜けて強いはずよ」

「おおっ、つまり俺ってチートかよ!」

 反射的に、歓声をあげた。
 そりゃ、強いに越したことはないもんな。
 怖い気もするが、まあ、チートな魔力持ちになるのなら大歓迎だ。

「さぁて、〈勇者マサムネ〉のデビュー戦だ。
 気合い入れていくぞ!」

 俺様はいたって上機嫌に、両腕をブンブン振り回した。
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