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学園祭で彼氏が女装したら私より可愛かったんだが
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おまけの話をアップします。入れ替わり理由の話より、こっち先に思いついちゃって(´ ω` )
女装苦手な方いらしたらごめんなさい~。時系列としては、前回の数週間後くらいです。
次回R18回で終わりです!
**********
「え?なにこれ?やっば!?」
私は呆然として目の前の瑞貴を見つめていた。長い睫毛が瞼の下に影を作り、色気と儚げな印象を与えている。唇はほんのりピンクのリップでツヤツヤうるうるとしていて、私が男だったら吸いつきたくなる。
ほっそりとした体つきは、女の子の格好をしていても全然違和感なく、少し高い背も、手足の長いスタイルのいい美少女で通じる。
「凛ちゃん、気に入ってくれた?」
声まで、少し低めの女の子で充分イケる。にこっと笑う瑞貴に私は、
「うんうんうん!めちゃくちゃ可愛いよ!」
と激しく頷いて、スマホのカメラで連写した。
♢♢♢
今日は私たちの学校の学園祭だ。
うちのクラスは、ありきたりなメイド喫茶をやることになった。
私はめんどくさいメイドはパスして、裏方で飲み物を入れたり、簡単なサンドイッチを作ったりする役をすることにした。
瑞貴も裏方を一緒にやる予定だったのだが、メイド役をやるユウナがこんなことを言い出した。
「ねえねえ、前から思ってたんだけど、今泉くんってすっごく女装似合いそうだよね~。女装して一緒にメイドやらない?メイド服も貸すよ~」
「え?イヤだけど」
すげなく即座に断る瑞貴だったが、私はちょっと思ってしまったのだ。
ユウナの言うことも良く分かるなって。私だって、前から思ってた。きっと女装したらそこらの女の子よりも可愛くなるだろうなって。
なので、つい言ってしまった。
「私、ちょっとだけ瑞貴の女装姿見てみたい・・・」
「え?凛ちゃん?」
困惑した顔で私のことを見る瑞貴に、私は言った。
「だって、きっとものすごく可愛くなるよ。なんか、可愛い女の子の瑞貴も見てみたいなあって。やっぱりイヤ?」
「えー・・・うーん。凛ちゃんが見たいなら、いいよ」
ちょっと渋ってたけど、やっぱり私のお願いは聞いてくれる瑞貴。
「わー!やった!」
私がぴょんぴょんして喜ぶと、仕方ないなあ、と言いながらも微笑む。
「おっ、オッケー出た!これは傑作が生まれる予感!」
ユウナもテンションが上がっている。
「まあしょうがないからやるけど、俺の担当、午前中だけにしといてね。午後は凛ちゃんと回る約束してるから」
「うんうん、分かってるよー。じゃあ早速着替えとメイク、しに行こうよ!ウィッグもちゃんとあるから!」
「え?準備良くない?」
私が思わず聞くと、ユウナは「今日はチャンスだと思って、持ってきてた!」と言った。
そして冒頭につながる。
肩より下の長いストレートヘアのウィッグを付けて、ユウナにメイクを施された瑞貴は、まったく違和感のない美少女になった。
ユウナのメイクの腕もすごくて驚いたけど、やっぱり瑞貴が一番凄い。
こんな美少女、この辺で見たことないくらいだ。
動画配信したらめちゃくちゃフォローされそう。
「ふわぁ~ホントにすごい美少女・・・可愛い過ぎるよ、瑞貴」
「そう?まあ凛ちゃんが喜んでるからいいけど、もうこれっきりだよ?」
「えー、もったいなーい!こんな可愛かったら、男も引っ掛け放題なのにー」
ユウナが声を上げるが、瑞貴に「誰が喜ぶんだよ、そんなの」と冷ややかな目で見られていた。
女装姿の瑞貴を見たクラスメイト達はざわめいた。
「え?まじ?あれ今泉?めちゃくちゃ可愛いじゃん」
「うっわ、レベルたけー」
「瑞貴なの?やっば、俺、男いけるかも」
男の子たちは驚きながらも頬を赤らめるやつ数名。男いけるかもって言ったのはショータだ。抱き着いてほっぺたにチューしようとして、瑞貴に頭を殴られていた。
女の子たちもきゃー、とか言いながらスマホで写真を撮ったり、ユウナのメイク凄いね、って話をしたりしていた。
時間になったので、瑞貴含むメイド役の子たちは所定の位置について、私たち裏方はカーテンで仕切られた後ろで待機することにした。
しばらくすると、他のクラスの子とか、別の学校から来たらしい人たちがぽつぽつとやって来始めた。
そして、みんな瑞貴を見ると、はっとしてポーっとして顔がだらしなくなっていく。
瑞貴も、もともと気真面目だから、ちゃんとメイド役をこなすつもりらしく、
「いらっしゃいませご主人様」
なんてにっこり笑っている。それがまた、すごく可愛い。
「あー私もご奉仕されてみたいよぉ」
私の隣で一緒にそれを見ていたマイが、身もだえして言う。
「あはは、あとで休憩前に飲み物持ってきてもらう?」
「それいい~」
二人で笑っていると注文が入って来たので、飲み物を用意したり、軽食を作ったりと忙しくなった。
時間が経つにつれ、瑞貴のことを口コミで聞いたのか、うちのクラスに来る人が増えた。
で、瑞貴に写真を撮っていいか聞いたり、一緒に写真を撮ろうとする人まで出てきた。
いや~、分かってたけど、やっぱ可愛すぎるよね。そりゃ浮かれちゃうわ。
瑞貴を見ると、そつなく笑顔で写真撮ってあげたりしていたけど、長い付き合いの私には分かる。あれはだいぶ疲れて来ている。
元々そんな乗り気じゃなかったのを、私が無理やり押し切ってやってもらったようなものなのだ。
これはそろそろ助けてやらねば。
そう思ったので、ユウナにこそっと耳打ちした。
「瑞貴、疲れてるみたいだからそろそろ終わりにしていい?」
「あ、うん、もちろん!服は貸しとくから着替えなくても大丈夫だよ」
と言ってくれたので、私は瑞貴のそばに行って「もう終わりでいいって。お疲れ」と言った。
「そう?じゃあ俺、着替えてくるね」
瑞貴は明らかにほっとした顔になった。
「ちょっと待って。私も空き部屋一緒に行く。着替える前に写真一緒に撮りたいもん」
私はそう言って瑞貴にくっついて隣の空き教室に入った。
「ごめんね、疲れたんでしょ?色んな人に写真撮られてたもんね」
「まあね。でも凛ちゃんがすごく喜んでくれてたから、それだけで俺は良かったんだけどね」
にこっと笑ってくれるので、私はごめんね、の意味と胸がきゅんとしたのとで、リップを塗った瑞貴の唇にちゅ、とキスをした。
そのまま、瑞貴の肩に手をまわしてキスをする。
瑞貴も私の背中に手をまわして、ぎゅっと抱き締めてきた。
でも目をうっすら開けると、女の子の姿。まるで女の子としているみたいで、ちょっとドキドキした。
女の子とキスするのってこんな感じなのかなあ。
「凛ちゃん・・・」
気付くと、瑞貴のそこが硬くなって私に押し付けられていた。
スカート姿のそこだけが盛り上がっているのは、すごく変な光景だ。
「あっ、ちょっと、ダメだよ!こんなとこで」
「先にキスしてきたのは凛ちゃんでしょ。ねえ・・・責任取ってこれ、どうにかして欲しいな」
「えっ責任って」
「凛ちゃんの手でここ、触って欲しい」
瑞貴がまた、あの小悪魔みたいな笑みで私の手を自分の股間のものに導いた。
「ええ~、こんな誰が入って来るかわかんないとこで無理だよ!」
「大丈夫、スカートで隠れるから。中に手、入れてこうしてくれる?」
今日はウィッグも付けてメイクもして、メイド服まで着てるから、目元を赤くして熱っぽく言う瑞貴は、ほんとに小悪魔な女の子だった。
なんかえっち・・・。
それに、こうなった瑞貴は止まらないんだよね。
最近は、もう淡白な仮面は端から捨て去ってるから、こういう雰囲気になると瑞貴はすぐに欲望をあらわにして来る。けどまあ、それが私も嫌じゃないっていうか・・・まあ、気持ちいいし・・・つい、一緒になって盛り上がってしまう。
それを分かってるから、瑞貴もぐいぐい来ちゃうんだよな。
「う・・・もう、分かったよ」
私はしぶしぶ、スカートの奥に差し込まれ熱いものを握った手を、ゆっくりと動かした。
「んっ・・・」
瑞貴が目を閉じて切ない声を漏らすと、私もドキドキしてくる。
うわー、伏せられた睫毛が長くて、上気した肌と相まってすっごくえっちな顔。
こんな顔見ちゃったら男はたまんないんじゃないかな。
私もたまんない気持ちになって来るもん。
私は瑞貴のものを握った手を動かしながら、顔をじっと見つめ続けてた。
視線を感じるのか瑞貴が目をうっすら開けて、私が覗き込んでいるのを知ると、くすっと笑う。
「ふふ、凛ちゃんもえっちな顔してる。興奮した?」
・・・した。けど、恥ずかしいから言いたくない。
「・・・やだ」
「やだ、じゃないでしょ。いい、んでしょ」
最近は少し余裕が出てきたらしい瑞貴は、時々こんな意地悪なことを愉しそうに言う。
「凛ちゃんのもしてあげるね」
「あっ、ちょ、ちょっと」
瑞貴が私のスカートの奥へ手を伸ばして来たので、思わず腰を引いて避けた。
「ん-。遠い・・・」
不満そうな声でがばっと私を抱き締めると、上から押し倒してくる。
いやいやいや、これ完全にする体勢じゃん。こんなとこでこんな体勢ダメだって!見られたら終わりだよ!
「ちょ、ちょっと待って瑞貴、さすがにここじゃこんなの無理!ね、続きは帰ってからにしよ?」
「ん?帰ったらいっぱいしていいんだ?」
いや、いっぱいとは言ってないけど。
「ちょっとなら・・・」
「えー、ちょっとなんて物足りないなあ。だったらここでもう少ししてたいよ」
くすくす笑って私に覆いかぶさったままキスしてくる。
「あっん、んむぅ~!」
くちゅくちゅ舌を絡められて、ダメなのに気持ち良くなって、私のあそこもじゅんとして来る。
ちょっとだけ、しちゃってもいいかな~なんて思ってしまった時、教室の扉が勢いよくガラガラッと開く音がして、私は固まった。目も開けられない。
瑞貴がゆっくり私の唇から離れて、起き上がる気配。
しーんとしたあと、さっきよりも静かにカラカラと扉が閉まる音がして、瑞貴が言った。
「・・・見られちゃったね。でも大丈夫。凛ちゃんの可愛い顔は見られてないよ。それに今の人、この学校の人じゃなかったし」
「見られちゃった、じゃないよーー!!ほらぁ、やっぱりこんなとこでこんなことするから、恥ずかしいことになっちゃったじゃん!もーやだーー!」
私は真っ赤になった顔を覆ってわめいた。ああっもう恥ずかしぬ!
すると瑞貴が私をぎゅっと抱き締めて落ち着かせようとしてきた。
「大丈夫だって。さっきも言ったけど、凛ちゃんの顔は見られてない。見られたのは俺の顔だけだし、俺だって女装してたから普段会ったら全然分かんないと思うよ。だから大丈夫」
そして私の頭をよしよししてくる。
「うう・・・」
私もだんだん落ち着いてきて、それなら大丈夫かなと思うようになった。
でももう、誰かが来るかもしれないとこではえっちなことはしない!
そして瑞貴にはお仕置きだ!
私は起き上がると言った。
「罰として瑞貴にはその格好のまま、一緒に校内を回ってもらうからね」
「ええー・・・」
イヤそうな顔をするけど、許してあげない。お仕置きだもん。
「はぁー、しょうがないな。それで凛ちゃんの気が済むならいいよ。じゃ、行こうか」
瑞貴はやれやれ、と言いたげに目を伏せていたけど、立ち上がると私の手を引っ張って起こしてくれた。
「でも家に帰ったら、俺も凛ちゃんにお仕置きしちゃおうかな」
また小悪魔スマイル。
「や、やだ、襲ってきた瑞貴が悪いのに、なんで私がお仕置きされちゃうの!?」
「凛ちゃんが可愛すぎるからいけないんだよ」
なんという理不尽な。可愛い可愛い言ってくれるのは嬉しいけど、でも客観的に見て可愛いのは瑞貴の方だからね?
私たちは校内で行われている色んな催しを見たり、模擬店でたこ焼きや焼き鳥を買って食べたり、輪投げや射的をやって遊んだりした。
どんなことでも、瑞貴と一緒にやればものすごく楽しい。
他のクラスの子とも会ったけど、みんな瑞貴を見てびっくりして、カメラで一緒に写真を撮っていた。瑞貴は開き直ったのか、普段通りの顔で楽しそうにしていた。
そろそろ、メイド喫茶の交代の時間だ。あとちょっとで学園祭も終わり。
去年はまだ彼氏彼女としては付き合ってなかったから、付き合ってから初めての学園祭。
それまでと違って、ただ一緒にいるだけでもすごく楽しくて幸せを感じた。
「瑞貴と一緒にいるだけで楽しいよ」
って言ったら、瑞貴も「俺も凛ちゃんと居れるだけで楽しくて幸せ」って笑ってくれた。
やっぱり好き。好きで好きで好き。
瑞貴の方が私のこと好きみたいに言ってくるけど、そんなことないな。私もかなり、いやめちゃくちゃ瑞貴のこと好きだ。
いつの間にか、いわゆる恋人繋ぎってやつで手を繋いで、クラスに帰ろうとしたところで、見慣れない男の子が瑞貴に声を掛けてきた。
「ねえ、君。さっきの子だよね?」
「・・・」
瑞貴は眉をひそめてその男の子を見ていたけど、ぷいと無視して歩いていこうとする。
知り合いじゃないのか。
どう見ても美少女だから、声かけたくなる気持ちも分かるけどね。
「あっ、待ってよ、ちょっとでいいから話さない?」
男の子は、わりと整った顔をしていた。そしてけっこう押しが強かった。
「俺、友達に誘われて今日来たんだけどさ。君みたいなめちゃくちゃ可愛い子初めて見たよ。もっと知り合いたいなあと思ってさー。あ、さっきは覗いちゃってごめんね」
げっ。こいつさっき私と瑞貴がいちゃいちゃしてる時に扉開けたやつか。
うわーーーこいつの頭の中からさっきの記憶を抹消したい。
「さっきの見たなら、誰か別の人に行くことはないって思わない?」
瑞貴が冷えた声で答えると、覗き男は、あははと笑った。
「いやーだって、女の子同士でキスとかさ、ふざけてたんでしょ。それか、ちょっとした気の迷いとか?ぜったい男の方がいいって。だからさ、俺のこと試してみない?」
なんてやつだ。
わりと顔はいいから、普段からこういう感じでやりまくってるのか。それにしても言ってることは最悪だけど、こんなんで靡く女の子いるの?
瑞貴はイラっとした顔をしたあと、小悪魔スマイルを浮かべて言った。
「ふーん。そんな自信あるんだ?」
覗き男は脈があると思ったのか、
「もちろん!絶対君のこと満足させてみせるよ」
なんて言ってる。
瑞貴は氷の微笑を浮かべていたけど、声のトーンを落として言った。
「俺に突っ込まれてもいいんなら、いいけど?」
「・・・え?」
覗き男の目が点になった。
「俺、挿れる側だから。お前の尻の穴に俺のちんこ突っ込んでもいいなら、試してやってもいいって言ってんだけど」
「え、嘘、男?」
覗き男はうろたえて目を泳がせながら、そそくさと消えていった。
やっぱり突っ込まれるのは嫌だったらしい。
が、それよりも私は気になったことを思わず聞いていた。
「ちょっと瑞貴、あんなこと言って、もしあいつがそれでもいいって言ったらどうしたの!?」
もちろん瑞貴がそんなことするわけないと思っているけど、ほんのちょっと、男と浮気ックスする瑞貴を想像して動揺してしまったのだ。
「え?そんなこと絶対ないと思ったからああ言ったんだけど、もしそうなったらあいつの股間蹴って逃げてたよ」
相手が男だろうと女だろうと、凛ちゃん以外の人とそんなことしたくないし。と苦笑いする瑞貴に、私はほっとするやら、今更ハラハラするやら、瑞貴の一途さに嬉しいやらで、感情が忙しかった。
その後、無事に学園祭は終わった。瑞貴もユウナにメイクを落としてもらって、服も着替え、さっぱりしたーと言いながら伸びをしていた。
女装苦手な方いらしたらごめんなさい~。時系列としては、前回の数週間後くらいです。
次回R18回で終わりです!
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「え?なにこれ?やっば!?」
私は呆然として目の前の瑞貴を見つめていた。長い睫毛が瞼の下に影を作り、色気と儚げな印象を与えている。唇はほんのりピンクのリップでツヤツヤうるうるとしていて、私が男だったら吸いつきたくなる。
ほっそりとした体つきは、女の子の格好をしていても全然違和感なく、少し高い背も、手足の長いスタイルのいい美少女で通じる。
「凛ちゃん、気に入ってくれた?」
声まで、少し低めの女の子で充分イケる。にこっと笑う瑞貴に私は、
「うんうんうん!めちゃくちゃ可愛いよ!」
と激しく頷いて、スマホのカメラで連写した。
♢♢♢
今日は私たちの学校の学園祭だ。
うちのクラスは、ありきたりなメイド喫茶をやることになった。
私はめんどくさいメイドはパスして、裏方で飲み物を入れたり、簡単なサンドイッチを作ったりする役をすることにした。
瑞貴も裏方を一緒にやる予定だったのだが、メイド役をやるユウナがこんなことを言い出した。
「ねえねえ、前から思ってたんだけど、今泉くんってすっごく女装似合いそうだよね~。女装して一緒にメイドやらない?メイド服も貸すよ~」
「え?イヤだけど」
すげなく即座に断る瑞貴だったが、私はちょっと思ってしまったのだ。
ユウナの言うことも良く分かるなって。私だって、前から思ってた。きっと女装したらそこらの女の子よりも可愛くなるだろうなって。
なので、つい言ってしまった。
「私、ちょっとだけ瑞貴の女装姿見てみたい・・・」
「え?凛ちゃん?」
困惑した顔で私のことを見る瑞貴に、私は言った。
「だって、きっとものすごく可愛くなるよ。なんか、可愛い女の子の瑞貴も見てみたいなあって。やっぱりイヤ?」
「えー・・・うーん。凛ちゃんが見たいなら、いいよ」
ちょっと渋ってたけど、やっぱり私のお願いは聞いてくれる瑞貴。
「わー!やった!」
私がぴょんぴょんして喜ぶと、仕方ないなあ、と言いながらも微笑む。
「おっ、オッケー出た!これは傑作が生まれる予感!」
ユウナもテンションが上がっている。
「まあしょうがないからやるけど、俺の担当、午前中だけにしといてね。午後は凛ちゃんと回る約束してるから」
「うんうん、分かってるよー。じゃあ早速着替えとメイク、しに行こうよ!ウィッグもちゃんとあるから!」
「え?準備良くない?」
私が思わず聞くと、ユウナは「今日はチャンスだと思って、持ってきてた!」と言った。
そして冒頭につながる。
肩より下の長いストレートヘアのウィッグを付けて、ユウナにメイクを施された瑞貴は、まったく違和感のない美少女になった。
ユウナのメイクの腕もすごくて驚いたけど、やっぱり瑞貴が一番凄い。
こんな美少女、この辺で見たことないくらいだ。
動画配信したらめちゃくちゃフォローされそう。
「ふわぁ~ホントにすごい美少女・・・可愛い過ぎるよ、瑞貴」
「そう?まあ凛ちゃんが喜んでるからいいけど、もうこれっきりだよ?」
「えー、もったいなーい!こんな可愛かったら、男も引っ掛け放題なのにー」
ユウナが声を上げるが、瑞貴に「誰が喜ぶんだよ、そんなの」と冷ややかな目で見られていた。
女装姿の瑞貴を見たクラスメイト達はざわめいた。
「え?まじ?あれ今泉?めちゃくちゃ可愛いじゃん」
「うっわ、レベルたけー」
「瑞貴なの?やっば、俺、男いけるかも」
男の子たちは驚きながらも頬を赤らめるやつ数名。男いけるかもって言ったのはショータだ。抱き着いてほっぺたにチューしようとして、瑞貴に頭を殴られていた。
女の子たちもきゃー、とか言いながらスマホで写真を撮ったり、ユウナのメイク凄いね、って話をしたりしていた。
時間になったので、瑞貴含むメイド役の子たちは所定の位置について、私たち裏方はカーテンで仕切られた後ろで待機することにした。
しばらくすると、他のクラスの子とか、別の学校から来たらしい人たちがぽつぽつとやって来始めた。
そして、みんな瑞貴を見ると、はっとしてポーっとして顔がだらしなくなっていく。
瑞貴も、もともと気真面目だから、ちゃんとメイド役をこなすつもりらしく、
「いらっしゃいませご主人様」
なんてにっこり笑っている。それがまた、すごく可愛い。
「あー私もご奉仕されてみたいよぉ」
私の隣で一緒にそれを見ていたマイが、身もだえして言う。
「あはは、あとで休憩前に飲み物持ってきてもらう?」
「それいい~」
二人で笑っていると注文が入って来たので、飲み物を用意したり、軽食を作ったりと忙しくなった。
時間が経つにつれ、瑞貴のことを口コミで聞いたのか、うちのクラスに来る人が増えた。
で、瑞貴に写真を撮っていいか聞いたり、一緒に写真を撮ろうとする人まで出てきた。
いや~、分かってたけど、やっぱ可愛すぎるよね。そりゃ浮かれちゃうわ。
瑞貴を見ると、そつなく笑顔で写真撮ってあげたりしていたけど、長い付き合いの私には分かる。あれはだいぶ疲れて来ている。
元々そんな乗り気じゃなかったのを、私が無理やり押し切ってやってもらったようなものなのだ。
これはそろそろ助けてやらねば。
そう思ったので、ユウナにこそっと耳打ちした。
「瑞貴、疲れてるみたいだからそろそろ終わりにしていい?」
「あ、うん、もちろん!服は貸しとくから着替えなくても大丈夫だよ」
と言ってくれたので、私は瑞貴のそばに行って「もう終わりでいいって。お疲れ」と言った。
「そう?じゃあ俺、着替えてくるね」
瑞貴は明らかにほっとした顔になった。
「ちょっと待って。私も空き部屋一緒に行く。着替える前に写真一緒に撮りたいもん」
私はそう言って瑞貴にくっついて隣の空き教室に入った。
「ごめんね、疲れたんでしょ?色んな人に写真撮られてたもんね」
「まあね。でも凛ちゃんがすごく喜んでくれてたから、それだけで俺は良かったんだけどね」
にこっと笑ってくれるので、私はごめんね、の意味と胸がきゅんとしたのとで、リップを塗った瑞貴の唇にちゅ、とキスをした。
そのまま、瑞貴の肩に手をまわしてキスをする。
瑞貴も私の背中に手をまわして、ぎゅっと抱き締めてきた。
でも目をうっすら開けると、女の子の姿。まるで女の子としているみたいで、ちょっとドキドキした。
女の子とキスするのってこんな感じなのかなあ。
「凛ちゃん・・・」
気付くと、瑞貴のそこが硬くなって私に押し付けられていた。
スカート姿のそこだけが盛り上がっているのは、すごく変な光景だ。
「あっ、ちょっと、ダメだよ!こんなとこで」
「先にキスしてきたのは凛ちゃんでしょ。ねえ・・・責任取ってこれ、どうにかして欲しいな」
「えっ責任って」
「凛ちゃんの手でここ、触って欲しい」
瑞貴がまた、あの小悪魔みたいな笑みで私の手を自分の股間のものに導いた。
「ええ~、こんな誰が入って来るかわかんないとこで無理だよ!」
「大丈夫、スカートで隠れるから。中に手、入れてこうしてくれる?」
今日はウィッグも付けてメイクもして、メイド服まで着てるから、目元を赤くして熱っぽく言う瑞貴は、ほんとに小悪魔な女の子だった。
なんかえっち・・・。
それに、こうなった瑞貴は止まらないんだよね。
最近は、もう淡白な仮面は端から捨て去ってるから、こういう雰囲気になると瑞貴はすぐに欲望をあらわにして来る。けどまあ、それが私も嫌じゃないっていうか・・・まあ、気持ちいいし・・・つい、一緒になって盛り上がってしまう。
それを分かってるから、瑞貴もぐいぐい来ちゃうんだよな。
「う・・・もう、分かったよ」
私はしぶしぶ、スカートの奥に差し込まれ熱いものを握った手を、ゆっくりと動かした。
「んっ・・・」
瑞貴が目を閉じて切ない声を漏らすと、私もドキドキしてくる。
うわー、伏せられた睫毛が長くて、上気した肌と相まってすっごくえっちな顔。
こんな顔見ちゃったら男はたまんないんじゃないかな。
私もたまんない気持ちになって来るもん。
私は瑞貴のものを握った手を動かしながら、顔をじっと見つめ続けてた。
視線を感じるのか瑞貴が目をうっすら開けて、私が覗き込んでいるのを知ると、くすっと笑う。
「ふふ、凛ちゃんもえっちな顔してる。興奮した?」
・・・した。けど、恥ずかしいから言いたくない。
「・・・やだ」
「やだ、じゃないでしょ。いい、んでしょ」
最近は少し余裕が出てきたらしい瑞貴は、時々こんな意地悪なことを愉しそうに言う。
「凛ちゃんのもしてあげるね」
「あっ、ちょ、ちょっと」
瑞貴が私のスカートの奥へ手を伸ばして来たので、思わず腰を引いて避けた。
「ん-。遠い・・・」
不満そうな声でがばっと私を抱き締めると、上から押し倒してくる。
いやいやいや、これ完全にする体勢じゃん。こんなとこでこんな体勢ダメだって!見られたら終わりだよ!
「ちょ、ちょっと待って瑞貴、さすがにここじゃこんなの無理!ね、続きは帰ってからにしよ?」
「ん?帰ったらいっぱいしていいんだ?」
いや、いっぱいとは言ってないけど。
「ちょっとなら・・・」
「えー、ちょっとなんて物足りないなあ。だったらここでもう少ししてたいよ」
くすくす笑って私に覆いかぶさったままキスしてくる。
「あっん、んむぅ~!」
くちゅくちゅ舌を絡められて、ダメなのに気持ち良くなって、私のあそこもじゅんとして来る。
ちょっとだけ、しちゃってもいいかな~なんて思ってしまった時、教室の扉が勢いよくガラガラッと開く音がして、私は固まった。目も開けられない。
瑞貴がゆっくり私の唇から離れて、起き上がる気配。
しーんとしたあと、さっきよりも静かにカラカラと扉が閉まる音がして、瑞貴が言った。
「・・・見られちゃったね。でも大丈夫。凛ちゃんの可愛い顔は見られてないよ。それに今の人、この学校の人じゃなかったし」
「見られちゃった、じゃないよーー!!ほらぁ、やっぱりこんなとこでこんなことするから、恥ずかしいことになっちゃったじゃん!もーやだーー!」
私は真っ赤になった顔を覆ってわめいた。ああっもう恥ずかしぬ!
すると瑞貴が私をぎゅっと抱き締めて落ち着かせようとしてきた。
「大丈夫だって。さっきも言ったけど、凛ちゃんの顔は見られてない。見られたのは俺の顔だけだし、俺だって女装してたから普段会ったら全然分かんないと思うよ。だから大丈夫」
そして私の頭をよしよししてくる。
「うう・・・」
私もだんだん落ち着いてきて、それなら大丈夫かなと思うようになった。
でももう、誰かが来るかもしれないとこではえっちなことはしない!
そして瑞貴にはお仕置きだ!
私は起き上がると言った。
「罰として瑞貴にはその格好のまま、一緒に校内を回ってもらうからね」
「ええー・・・」
イヤそうな顔をするけど、許してあげない。お仕置きだもん。
「はぁー、しょうがないな。それで凛ちゃんの気が済むならいいよ。じゃ、行こうか」
瑞貴はやれやれ、と言いたげに目を伏せていたけど、立ち上がると私の手を引っ張って起こしてくれた。
「でも家に帰ったら、俺も凛ちゃんにお仕置きしちゃおうかな」
また小悪魔スマイル。
「や、やだ、襲ってきた瑞貴が悪いのに、なんで私がお仕置きされちゃうの!?」
「凛ちゃんが可愛すぎるからいけないんだよ」
なんという理不尽な。可愛い可愛い言ってくれるのは嬉しいけど、でも客観的に見て可愛いのは瑞貴の方だからね?
私たちは校内で行われている色んな催しを見たり、模擬店でたこ焼きや焼き鳥を買って食べたり、輪投げや射的をやって遊んだりした。
どんなことでも、瑞貴と一緒にやればものすごく楽しい。
他のクラスの子とも会ったけど、みんな瑞貴を見てびっくりして、カメラで一緒に写真を撮っていた。瑞貴は開き直ったのか、普段通りの顔で楽しそうにしていた。
そろそろ、メイド喫茶の交代の時間だ。あとちょっとで学園祭も終わり。
去年はまだ彼氏彼女としては付き合ってなかったから、付き合ってから初めての学園祭。
それまでと違って、ただ一緒にいるだけでもすごく楽しくて幸せを感じた。
「瑞貴と一緒にいるだけで楽しいよ」
って言ったら、瑞貴も「俺も凛ちゃんと居れるだけで楽しくて幸せ」って笑ってくれた。
やっぱり好き。好きで好きで好き。
瑞貴の方が私のこと好きみたいに言ってくるけど、そんなことないな。私もかなり、いやめちゃくちゃ瑞貴のこと好きだ。
いつの間にか、いわゆる恋人繋ぎってやつで手を繋いで、クラスに帰ろうとしたところで、見慣れない男の子が瑞貴に声を掛けてきた。
「ねえ、君。さっきの子だよね?」
「・・・」
瑞貴は眉をひそめてその男の子を見ていたけど、ぷいと無視して歩いていこうとする。
知り合いじゃないのか。
どう見ても美少女だから、声かけたくなる気持ちも分かるけどね。
「あっ、待ってよ、ちょっとでいいから話さない?」
男の子は、わりと整った顔をしていた。そしてけっこう押しが強かった。
「俺、友達に誘われて今日来たんだけどさ。君みたいなめちゃくちゃ可愛い子初めて見たよ。もっと知り合いたいなあと思ってさー。あ、さっきは覗いちゃってごめんね」
げっ。こいつさっき私と瑞貴がいちゃいちゃしてる時に扉開けたやつか。
うわーーーこいつの頭の中からさっきの記憶を抹消したい。
「さっきの見たなら、誰か別の人に行くことはないって思わない?」
瑞貴が冷えた声で答えると、覗き男は、あははと笑った。
「いやーだって、女の子同士でキスとかさ、ふざけてたんでしょ。それか、ちょっとした気の迷いとか?ぜったい男の方がいいって。だからさ、俺のこと試してみない?」
なんてやつだ。
わりと顔はいいから、普段からこういう感じでやりまくってるのか。それにしても言ってることは最悪だけど、こんなんで靡く女の子いるの?
瑞貴はイラっとした顔をしたあと、小悪魔スマイルを浮かべて言った。
「ふーん。そんな自信あるんだ?」
覗き男は脈があると思ったのか、
「もちろん!絶対君のこと満足させてみせるよ」
なんて言ってる。
瑞貴は氷の微笑を浮かべていたけど、声のトーンを落として言った。
「俺に突っ込まれてもいいんなら、いいけど?」
「・・・え?」
覗き男の目が点になった。
「俺、挿れる側だから。お前の尻の穴に俺のちんこ突っ込んでもいいなら、試してやってもいいって言ってんだけど」
「え、嘘、男?」
覗き男はうろたえて目を泳がせながら、そそくさと消えていった。
やっぱり突っ込まれるのは嫌だったらしい。
が、それよりも私は気になったことを思わず聞いていた。
「ちょっと瑞貴、あんなこと言って、もしあいつがそれでもいいって言ったらどうしたの!?」
もちろん瑞貴がそんなことするわけないと思っているけど、ほんのちょっと、男と浮気ックスする瑞貴を想像して動揺してしまったのだ。
「え?そんなこと絶対ないと思ったからああ言ったんだけど、もしそうなったらあいつの股間蹴って逃げてたよ」
相手が男だろうと女だろうと、凛ちゃん以外の人とそんなことしたくないし。と苦笑いする瑞貴に、私はほっとするやら、今更ハラハラするやら、瑞貴の一途さに嬉しいやらで、感情が忙しかった。
その後、無事に学園祭は終わった。瑞貴もユウナにメイクを落としてもらって、服も着替え、さっぱりしたーと言いながら伸びをしていた。
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