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聖女フェルマ、魔導士シオンと両想いのようです
しおりを挟む私はシオンの顔を見つめた。
黒い濡れたような艶やかな髪が、顔にぱらって掛かってて、紅がかった目が、私を見ている。その唇は何か言いたそうに少し開いて……
うわ
私は急に胸がドキドキしてきた。え、ちょっ、これ何?顔も熱い。
私、シオンのこと……
「私、たぶん本当はシオンのことが好きみたい」
あれ?
気付いたら言っちゃってた。
そのとたん、シオンがベッドから立ち上がって、私をぎゅうっと抱き締めた。
ええ?
どうなった?
「俺も、たぶん……いや、たぶんじゃない。お前のことが好きだ」
え。
えーーー!?
いつ、好きになった!?
なに、この急展開!?
「うそぉ!?」
思わず叫んだ。
「嘘じゃない」
「え、だって、意地悪だったし、いつそんな、好きになんてなったわけ?」
「お前が残念聖女でごめんなさい、って言ったあたり」
はっきり答えられた。
えー。
「お前があの古代遺跡のダンジョンで、魔物を素手で嬉しそーにぶっ倒しまくってるの見た時、なんか面白い奴だなって思ってさ」
「あれを見て!?」
「うん。まあやばい奴だとも思ったけど」
あ、やばい奴と思われてたのか。まあそりゃそうだよな。あの時は完全に脳汁出てたもん。脳内麻薬出まくりだったもん。
「それで、そのあともお前がやることいちいち面白くて。まあ女に面白いとか誉め言葉じゃないとは思うけど……その時にはもう、お前のことが好きになってたんだよな。で、転移の罠に引っかかってどこかの部屋に飛ばされた時な」
「う、うん」
とりあえず、長そうなので頷きつつ聞く。
「お互い服脱いで、くっついてたろ。あれ、実は、柄にもなく俺もちょっとドキドキしてたんだ。でも、そんなこと悟られたらお前が気まずいと思って、なんとか何でもないふりし続けたけど、あの時は今思えば、もうかなり好きになってたんだ」
一気に語られた。
えーー、そうなんだ。あの時、私だけがドキドキしてるのかと思ってたよ。
まあ確かにシオンの心臓もドクドクはしてたけど、そういう意味で鼓動が早くなってるとは思わなかった。
「ダンジョンから帰ってきてから、気付いたらお前のことばっかり見てた。でも、そういえばお前はイグニスのこと好きだったんだよな、って思い出したら、胸が苦しくてさ……だからさっきイグニスの部屋の前にいるの見たら、つい……勝手に誤解してあんなこと言って悪かった」
「いや、もうそれはいいんだけど」
いやいやいや、待って待って。こんな懇切丁寧に『私を好きになった経緯』を説明してもらって、もうなんか、私、いっぱいいっぱいだわ。
しかも最初からずーーっとシオンってば、私のことをぎゅうぎゅう抱き締めたまんまだし。
あーーなんかいい匂いするー。これってシオンの愛用の石鹸の匂いかな。
はあ、落ち着く匂い……ってそうじゃなくて。
いや、キャラ違いすぎない?
「えっと、あの、すごく丁寧に詳しく分かりやすく、教えてくれてありがとう」
とりあえず礼を言う。
「それに、そんなに私のこと好きって言ってもらえて、すごく嬉しいよ……ていうか、そしたら私たちって両想いってこと?好き同士ってことだよね?」
「うん、そういうこと。俺の恋人になってくれよ」
「うん……恋人……えーー!!」
シオンのいい匂いにぼーっとしていた私は、はっと我に返って叫んだ。
「いいだろ?」
シオンの紅がかった潤んだ黒い瞳が、私を見つめてくる。
うわ……何、この色気。女の私より色っぽいって、なに?
いや、でも答えは一つよ。
私だってシオンのこと好きだもん。そう、私はシオンのことが好き。
「うん……いいよ。私をシオンの恋人にして」
私がきっぱりそう言うと、シオンはくすくす笑った。
「やっぱり、お前面白いよ。でも、すげえ嬉しい……」
そう言って、シオンの超絶美しい顔が私の顔に近づいてきた。
うわっ、睫毛ながっ。瞳もすごく綺麗。
「……そんなずっと見つめられるとキスしにくいんだけど」
「あ、わ、分かった」
きゅっと瞼を閉じると、ふっと笑ってシオンの熱が近づいてくる。
ちゅ、っと私の唇に柔らかいシオンの唇が当たった。
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