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悪役令息編
何でまた出会うんだよ?
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事前に聞いてたように、一際大きな白い四角い建造物が講堂らしかった。中に入ると、まるで荘厳な教会みてーに、大きなステンドグラスが嵌まった窓がいくつもあって、明るい。
それにこれから入学する生徒たち、同い年の奴らが大勢いて騒めいていて、学校なんて通ったことがねー俺には、こういうのは初めての体験で、新鮮だった。
大事な使命があるっていうのに、思わずぽかんと口開けて辺りを見回していたら、ふいにすぐ後ろで、弾かれたような笑い声がした。
え?この声・・・
「アハハ!君、お尻破けてんで!どないしたん?」
「は、早く直すか、新しい制服に着替えた方がいいです・・・あの、良かったら、私、縫物得意なので・・・直しましょうか?」
聞き覚えのある声に素早く振り向くと、やっぱりそこには、赤くてくるくる巻いた短髪で緑の目の女の子と、青い目で、薄いブルーの長い髪をサイドで三つ編みにしている、ほわっとした雰囲気の子がいた。
自宅でロザリアがメイドをやってたんだ。もしかしたら他にも知ってる奴がいるかもしれないとは思ってた。
「エフィにウルダ!お前らもいるなんてな!」
こんな訳の分かんねー世界で仲間に再会出来た嬉しさで、思わずそう口にすると、まあ当然というかエフィもウルダもびっくりした顔をした。
「え?なんで名乗ってへんのに、アタシの名前知ってんの?」
「わ、私の名前も・・・うちは全然有名な家じゃないし、私も全然目立つタイプじゃないのに・・・」
「あ、はは・・・いや、えーとほら、それはさ」
戸惑っている二人に慌てて何とか言い繕おうとするけど、自慢じゃないがこういう時、咄嗟にうまいこと言えねーのが俺なんだよ。
焦ってるとその時、またしてもよく知ってる声が響いた。
「あれー、君、デビュタントの時に目立ってた子だよね~。確かリオン=アルベスタだったっけ~?男爵家の子息だろ。俺もあの場にいたからよく知ってるぜ~」
振り返ると、やっぱりだ。
鳶色の髪、赤い目のなんとなくかるーい感じの男が、ニヤニヤと笑いながら俺の肩に手を掛ける。
「ナギまでいるのかよ!?」
「んー?俺の名前も覚えててくれたんだ~?嬉しいなあ。俺もあれから君のこと、ずーっと気になってたんだよね~。君もそういう系?気になる子の名前はやっぱりチェックしちゃうよね~」
ナギは確か俺らよりも年上だった。
だけど今ここにいるナギは同い年らしい。そう言えば顔がちょっと幼いかもな。
それでも、言う事もやる事も、ナギは変わんねーな。
「いや、そういうワケじゃ・・・」
言いかけたけど、
「あ、ああ、そういう・・・でも、どうしよう私、だって・・・」
ウルダは困った顔でちらりとエフィを見て、エフィはそんなウルダに軽く頷いて、明るい声を上げた。
「アハハ、美少女は罪やなあ!けどごめんなぁ!アタシら、ちゃんと決まった相手いるねん!・・・なっ、ウルダ?」
「あっ・・・う、うん」
エフィとウルダはお互いにしか分からないように目配せして、頬を染めて笑い合ってた。
いや、俺は分かってるんだけどな。
こいつらはここでもこんな感じなんだな。まあ、誤解だけどなんか納得してくれてうまくまとまったみてーだから、いいか。
とか思っていたら、ナギが俺の肩にさらに腕を回して密着して来た。
「ねえねえ、リオン、これって運命だと思わな~い?あの時も、君、色んな子からモテてたけどさ、誰も相手にしてなかったじゃ~ん?なのに、俺の名前だけはちゃーんと覚えててくれてさ~。俺、今すっげぇ感動してるんだ」
「いや、ち、違うって、そういうワケじゃなくてっ」
話しながらナギの手が俺の肩どころか、髪、腰まで撫でくり回して来て、俺は慌てて手を外した。けど、外しても外しても、ナギの手はすぐにするりと絡みついて来る。
蛇かよっ!?
なんつー、ねちっこい触り方するんだ!
全然知らねー、どうでもいい奴なら、蹴っ飛ばせば簡単だけど、なまじ知った相手、しかもかなり世話になった相手だと、なかなかそこまで思いきれない。
そ、そうだ。
エフィとウルダに何とか間に入ってもらおうと思った俺が必死で目配せすると、二人はきょとんとした後、「ああ!」と合点がいった顔になった。
「じゃあ、アタシら行くな!あとは二人でゆっくり語り合ってや!」
「あの、これ良かったら、お、お尻を隠すのに使って下さいっ・・・それじゃ」
「え!?ちょ、ちょっと待って!?」
ち、ちがーう!そっちじゃねー!
俺はウルダに押し付けられたハンカチを手にプルプル震えた。
「ん?あれ、そういえばお尻、破れてるね。どうしたの~?そうだ、俺、寮なんだけどさ~、部屋に予備のズボンあるから貸してあげるよ。後で俺の部屋に行こ?ね?」
「ひょぇっ!」
ついっと尻の破れたところから手を突っ込まれて、変な声が出ちまった。
そう言えばコイツ、初対面の時にもいきなりキスして来たよな?
今も払っても払ってもむちゃくちゃ触って来るし、し、しかも触り方がすっげぇやらしいし、こんなんで部屋なんか行ったらどうなるか、さすがの俺でも分かる。
あっちの世界のナギは、キアが居たからすぐ諦めてくれたけど、今のナギは、完全にハンターモードだ。こいつ、本気で誰かを口説く時ってこんななのか。
ちょっと、いやかなりやばいぞ。
「いやあのさ、ナギ!気持ちは嬉しいけどさ、今日はもうズボン、これで行くから!家に帰れば予備もあるしさ!」
俺は久しぶりに貞操の危機を感じて、必死で言い募った。
「え~?でもさ~、これで歩き回ったら皆にリオンの可愛いお尻が見られちゃうじゃん~。そんなの嫌だなあ。俺、今再会したばっかりだけどさ、リオンの事、けっこう本気だぜ~?誰か好きな奴いるの?いなかったら俺と付き合ってよ」
くい、と顎を掴まれ、ナギの顔がアップになる。
う、うわっ!これって、さっきの王太子とおんなじパターンじゃねーかよっ!
「すっ、好きな奴いるから!だからナギとは付き合えねーよ!」
「へえ?興味深いな、それは」
ナギを押し返して叫んだと同時に、後ろから声がして、ふわりと抱き締められた。
一瞬、キアかと思った。けど、違う。声も、俺に触れる手も匂いも、馴染みがない。
振り向くと、そこには王太子が楽しそうな顔で立っていた。ナギも、俺の周りに居た他の生徒たちもみんな驚いた顔でざわついている。
「ユ、ユリアス殿下・・・」
「どうしてここに?」
「王族は特別席の筈なのに!?」
周りからそんな、戸惑った声が上がった。
「うげっ!?お前・・・っ、何でいるんだよ!?」
俺はパシッと王太子の手を払うと、素早く離れた。こいつには遠慮なんかいらねー。
つか、お前と出会うイベント、今日はもうないはずだろっ!?
マジで、何でまた出て来るんだ!?
王太子は俺の態度に動じた様子もなく、ニヤリと笑う。
「随分な口を利くじゃないか。それより、さっき言っていた好きな奴とは誰の事なんだ?ああ、言わなくても分かってる。お前が私に熱い想いを抱いている事くらいな。全く、恥ずかしいからと言って、わざと突っぱねるなど可愛い奴だ」
「・・・・・・は?」
あまりに自信満々に言われて、俺はバグって固まった。
何なんだ、こいつ?
俺がお前を好きだなんて、いつどこで何をどう見たら、そうなるんだよ!?
どんだけ、都合のいい思考回路してんだ?
「ちょ・・・リ、リオン、顔がハニワみたいになってるよ~?そ、それにさ~、さすがにユリアス殿下に向かってその態度はヤバイよ~。俺ら、弱小貴族なんだからさ、もうちょっと控えめな態度で接しないと~」
「・・・はっ!そ、そうだ!」
ナギが焦ったように後ろから袖を引いて来て、我に返った俺はキッと王太子を見据えた。
「あのな!俺は別にお前のことなんて何とも思ってねーんだよ!俺が好きなのはお前じゃねー!」
「ちょ、ちょーーっ!?リオン!だからそういうのはダメだって!ヤバイって~!」
ナギが本気で焦っている声で俺の腰にしがみ付いて来たけど、俺は止まらなかった。
「分かったらもう俺に構うんじゃねーよ!王太子なら王太子らしく似合いの相手とくっついとけよな!」
――――って、あれ、ちょっと待てよ?
物語の王子が高位貴族の女の子や、他国の王女と結婚するイメージでつい、そう言ってしまったけど、そういえば、この世界、こいつの婚約者ってキアなんじゃなかったっけ・・・?
ってことは、俺、今、自分で、一番好きな相手をこいつとくっつけようとしちゃったってこと?
あ、あわわわわ・・・!な、なんてこと言っちゃってんだよ、俺ぇーーー!?
一人で青くなって汗だくになっていると、王太子があからさまに溜息を付いた。
「それはディアレスキアの事か?まあ、全国民が知っている事だから仕方ないが・・・お前には誤解して欲しくないな。あれは貴族の義務として仕方なく受け入れた婚約者だ。そこに真実の愛などありはしない。私はあいつには全く興味も関心も持っていない。それより」
王太子は、俺の腕を掴むとぐいっと自分に引き寄せた。
「私はリオン、お前の事をもっと知りたいんだ」
「は、はぁーっ!?ちょ、ま、や、やめっ――――!?」
また王太子の顔がどアップで迫って来て、俺がその顔を両手で押し返したところで、途轍もない闇の気配を感じて、俺はハッと我に返った。
横を見ると、いつの間にかキアが立っていた。
う、うわぁ・・・これ、ヤベーよ。久々にキアが闇のオーラだだ漏れにしてる。めちゃくちゃ機嫌悪い!
絶対、今の全部見てたんだよな?
*********
ちょっとしたお遊びなんですが、今リオン達がいる王都レオグランス、そして王太子のユリアスは、別作品『異世界転移したら生前の素行のせいで最悪なスキルを貰ってしまった。男に抱かれてこの地獄から抜け出します』の3章に出て来る街と王子です。と言ってもそっちの世界線とは少し違う世界線ですが。本編では一瞬出て来たくらいで性格語る間もなかったユリアスだけど、兄弟だけあって、メンヘラ王女の妹リオラと同じく思い込み激しい所は似てます。
こんな感じで自分の作品全部に同じ名前のキャラ出したり、少し世界を共通させるのが好きです。
当初はもっと長くしようかと思ってたんですが、たぶんそろそろ〆ます(;^ω^)
ここまで読んで下さってる方、ありがとうございます~!
それにこれから入学する生徒たち、同い年の奴らが大勢いて騒めいていて、学校なんて通ったことがねー俺には、こういうのは初めての体験で、新鮮だった。
大事な使命があるっていうのに、思わずぽかんと口開けて辺りを見回していたら、ふいにすぐ後ろで、弾かれたような笑い声がした。
え?この声・・・
「アハハ!君、お尻破けてんで!どないしたん?」
「は、早く直すか、新しい制服に着替えた方がいいです・・・あの、良かったら、私、縫物得意なので・・・直しましょうか?」
聞き覚えのある声に素早く振り向くと、やっぱりそこには、赤くてくるくる巻いた短髪で緑の目の女の子と、青い目で、薄いブルーの長い髪をサイドで三つ編みにしている、ほわっとした雰囲気の子がいた。
自宅でロザリアがメイドをやってたんだ。もしかしたら他にも知ってる奴がいるかもしれないとは思ってた。
「エフィにウルダ!お前らもいるなんてな!」
こんな訳の分かんねー世界で仲間に再会出来た嬉しさで、思わずそう口にすると、まあ当然というかエフィもウルダもびっくりした顔をした。
「え?なんで名乗ってへんのに、アタシの名前知ってんの?」
「わ、私の名前も・・・うちは全然有名な家じゃないし、私も全然目立つタイプじゃないのに・・・」
「あ、はは・・・いや、えーとほら、それはさ」
戸惑っている二人に慌てて何とか言い繕おうとするけど、自慢じゃないがこういう時、咄嗟にうまいこと言えねーのが俺なんだよ。
焦ってるとその時、またしてもよく知ってる声が響いた。
「あれー、君、デビュタントの時に目立ってた子だよね~。確かリオン=アルベスタだったっけ~?男爵家の子息だろ。俺もあの場にいたからよく知ってるぜ~」
振り返ると、やっぱりだ。
鳶色の髪、赤い目のなんとなくかるーい感じの男が、ニヤニヤと笑いながら俺の肩に手を掛ける。
「ナギまでいるのかよ!?」
「んー?俺の名前も覚えててくれたんだ~?嬉しいなあ。俺もあれから君のこと、ずーっと気になってたんだよね~。君もそういう系?気になる子の名前はやっぱりチェックしちゃうよね~」
ナギは確か俺らよりも年上だった。
だけど今ここにいるナギは同い年らしい。そう言えば顔がちょっと幼いかもな。
それでも、言う事もやる事も、ナギは変わんねーな。
「いや、そういうワケじゃ・・・」
言いかけたけど、
「あ、ああ、そういう・・・でも、どうしよう私、だって・・・」
ウルダは困った顔でちらりとエフィを見て、エフィはそんなウルダに軽く頷いて、明るい声を上げた。
「アハハ、美少女は罪やなあ!けどごめんなぁ!アタシら、ちゃんと決まった相手いるねん!・・・なっ、ウルダ?」
「あっ・・・う、うん」
エフィとウルダはお互いにしか分からないように目配せして、頬を染めて笑い合ってた。
いや、俺は分かってるんだけどな。
こいつらはここでもこんな感じなんだな。まあ、誤解だけどなんか納得してくれてうまくまとまったみてーだから、いいか。
とか思っていたら、ナギが俺の肩にさらに腕を回して密着して来た。
「ねえねえ、リオン、これって運命だと思わな~い?あの時も、君、色んな子からモテてたけどさ、誰も相手にしてなかったじゃ~ん?なのに、俺の名前だけはちゃーんと覚えててくれてさ~。俺、今すっげぇ感動してるんだ」
「いや、ち、違うって、そういうワケじゃなくてっ」
話しながらナギの手が俺の肩どころか、髪、腰まで撫でくり回して来て、俺は慌てて手を外した。けど、外しても外しても、ナギの手はすぐにするりと絡みついて来る。
蛇かよっ!?
なんつー、ねちっこい触り方するんだ!
全然知らねー、どうでもいい奴なら、蹴っ飛ばせば簡単だけど、なまじ知った相手、しかもかなり世話になった相手だと、なかなかそこまで思いきれない。
そ、そうだ。
エフィとウルダに何とか間に入ってもらおうと思った俺が必死で目配せすると、二人はきょとんとした後、「ああ!」と合点がいった顔になった。
「じゃあ、アタシら行くな!あとは二人でゆっくり語り合ってや!」
「あの、これ良かったら、お、お尻を隠すのに使って下さいっ・・・それじゃ」
「え!?ちょ、ちょっと待って!?」
ち、ちがーう!そっちじゃねー!
俺はウルダに押し付けられたハンカチを手にプルプル震えた。
「ん?あれ、そういえばお尻、破れてるね。どうしたの~?そうだ、俺、寮なんだけどさ~、部屋に予備のズボンあるから貸してあげるよ。後で俺の部屋に行こ?ね?」
「ひょぇっ!」
ついっと尻の破れたところから手を突っ込まれて、変な声が出ちまった。
そう言えばコイツ、初対面の時にもいきなりキスして来たよな?
今も払っても払ってもむちゃくちゃ触って来るし、し、しかも触り方がすっげぇやらしいし、こんなんで部屋なんか行ったらどうなるか、さすがの俺でも分かる。
あっちの世界のナギは、キアが居たからすぐ諦めてくれたけど、今のナギは、完全にハンターモードだ。こいつ、本気で誰かを口説く時ってこんななのか。
ちょっと、いやかなりやばいぞ。
「いやあのさ、ナギ!気持ちは嬉しいけどさ、今日はもうズボン、これで行くから!家に帰れば予備もあるしさ!」
俺は久しぶりに貞操の危機を感じて、必死で言い募った。
「え~?でもさ~、これで歩き回ったら皆にリオンの可愛いお尻が見られちゃうじゃん~。そんなの嫌だなあ。俺、今再会したばっかりだけどさ、リオンの事、けっこう本気だぜ~?誰か好きな奴いるの?いなかったら俺と付き合ってよ」
くい、と顎を掴まれ、ナギの顔がアップになる。
う、うわっ!これって、さっきの王太子とおんなじパターンじゃねーかよっ!
「すっ、好きな奴いるから!だからナギとは付き合えねーよ!」
「へえ?興味深いな、それは」
ナギを押し返して叫んだと同時に、後ろから声がして、ふわりと抱き締められた。
一瞬、キアかと思った。けど、違う。声も、俺に触れる手も匂いも、馴染みがない。
振り向くと、そこには王太子が楽しそうな顔で立っていた。ナギも、俺の周りに居た他の生徒たちもみんな驚いた顔でざわついている。
「ユ、ユリアス殿下・・・」
「どうしてここに?」
「王族は特別席の筈なのに!?」
周りからそんな、戸惑った声が上がった。
「うげっ!?お前・・・っ、何でいるんだよ!?」
俺はパシッと王太子の手を払うと、素早く離れた。こいつには遠慮なんかいらねー。
つか、お前と出会うイベント、今日はもうないはずだろっ!?
マジで、何でまた出て来るんだ!?
王太子は俺の態度に動じた様子もなく、ニヤリと笑う。
「随分な口を利くじゃないか。それより、さっき言っていた好きな奴とは誰の事なんだ?ああ、言わなくても分かってる。お前が私に熱い想いを抱いている事くらいな。全く、恥ずかしいからと言って、わざと突っぱねるなど可愛い奴だ」
「・・・・・・は?」
あまりに自信満々に言われて、俺はバグって固まった。
何なんだ、こいつ?
俺がお前を好きだなんて、いつどこで何をどう見たら、そうなるんだよ!?
どんだけ、都合のいい思考回路してんだ?
「ちょ・・・リ、リオン、顔がハニワみたいになってるよ~?そ、それにさ~、さすがにユリアス殿下に向かってその態度はヤバイよ~。俺ら、弱小貴族なんだからさ、もうちょっと控えめな態度で接しないと~」
「・・・はっ!そ、そうだ!」
ナギが焦ったように後ろから袖を引いて来て、我に返った俺はキッと王太子を見据えた。
「あのな!俺は別にお前のことなんて何とも思ってねーんだよ!俺が好きなのはお前じゃねー!」
「ちょ、ちょーーっ!?リオン!だからそういうのはダメだって!ヤバイって~!」
ナギが本気で焦っている声で俺の腰にしがみ付いて来たけど、俺は止まらなかった。
「分かったらもう俺に構うんじゃねーよ!王太子なら王太子らしく似合いの相手とくっついとけよな!」
――――って、あれ、ちょっと待てよ?
物語の王子が高位貴族の女の子や、他国の王女と結婚するイメージでつい、そう言ってしまったけど、そういえば、この世界、こいつの婚約者ってキアなんじゃなかったっけ・・・?
ってことは、俺、今、自分で、一番好きな相手をこいつとくっつけようとしちゃったってこと?
あ、あわわわわ・・・!な、なんてこと言っちゃってんだよ、俺ぇーーー!?
一人で青くなって汗だくになっていると、王太子があからさまに溜息を付いた。
「それはディアレスキアの事か?まあ、全国民が知っている事だから仕方ないが・・・お前には誤解して欲しくないな。あれは貴族の義務として仕方なく受け入れた婚約者だ。そこに真実の愛などありはしない。私はあいつには全く興味も関心も持っていない。それより」
王太子は、俺の腕を掴むとぐいっと自分に引き寄せた。
「私はリオン、お前の事をもっと知りたいんだ」
「は、はぁーっ!?ちょ、ま、や、やめっ――――!?」
また王太子の顔がどアップで迫って来て、俺がその顔を両手で押し返したところで、途轍もない闇の気配を感じて、俺はハッと我に返った。
横を見ると、いつの間にかキアが立っていた。
う、うわぁ・・・これ、ヤベーよ。久々にキアが闇のオーラだだ漏れにしてる。めちゃくちゃ機嫌悪い!
絶対、今の全部見てたんだよな?
*********
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こんな感じで自分の作品全部に同じ名前のキャラ出したり、少し世界を共通させるのが好きです。
当初はもっと長くしようかと思ってたんですが、たぶんそろそろ〆ます(;^ω^)
ここまで読んで下さってる方、ありがとうございます~!
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