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番外編 みなりつ5
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***
あれから数日が経ったが、相変わらず何度連絡をしても無視され続け、俺は強硬手段に出ることにした。
「え、なんで……」
仕事から帰宅した律が、マンションの下で待っていた俺を見た途端、強張った表情を浮かべた。無理もない。俺だって家の前で待ち伏せされたら身構える。
「なんでって、お前が無視するからだろ」
「だからって家まで押しかけくる?とっつーって意外とヤバい人だったんだね」
それは、いつもの陽気な律からは考えられないほどに、そっけなく冷たい態度だった。
「……こうでもしねえとお前会ってくれねえだろ」
「なにそれ。当たり前じゃん。もうとっつーとは会わないって言ったもん」
「一方的に決めんな。こっちには話があんだよ」
「はぁ?仕方ないから聞いたげるけど、早く終わらせてね。この後予定あるから」
「……予定?」
「言ったっしょ、落ち着くって」
「それは……」
それは、特定の相手がいるということか。とは聞けなかった。
よく考えてみると、相手がいないのなら、ただのダチである俺と縁を切る必要はなかったんだ。相手がいるから、ただのダチでも、元セフレである俺とはいられなかったということなのだろう。
(あぁ、俺はまた……)
また、絶対に報われない想いを抱えるのか。
今回ばかりは、気付くのが遅かった俺が完全に悪いけれど、胸が潰れそうなほど痛いのは仕方がないだろう。
だけど、また不毛な恋になるとしても、それでも、同じ失敗を繰り返すのはごめんだ。だから、俺は真っ直ぐに律を見据えて、口を開いた。
「好きだ」
「──は?」
その一言で、律の冷たい仮面が剥がれた。
「な、何言って……」
今までのが仮面だったと分かったのは、律が顔を赤くしたからだ。
(なんて顔してんだよ……)
嫌な相手にこんなこと言われて、そんな顔するわけない。
わずかな希望を逃すまいと、俺は律に詰め寄り、手を掴んだ。
「お前のことが好きだって言ってる」
「っ、あ……あははっ、えー?そんな冗談、全然面白くな……」
「冗談じゃねえよ。本気でお前が好きだ」
「……っ、や、やめてよ」
「やめない。好きだ、律」
「〰︎〰︎っ」
律は耐えかねたように、俺の手を強く払った。そのまま立ち去ろうとする律の手を、再び掴む。今度は振り解かれないように、強い力で。
「待てよ。話終わってねえだろ」
「話なんてない!」
「聞くっつたろ」
「っ!じゃあ聞くけど!心くんは⁉︎ずっと好きだったじゃん!」
「あいつは恩人だ。大事なのは変わらねえ。けど、もう俺は、お前が」
「俺が好きって?付き合おうって?」
「……あぁ」
「はっ、何言ってんの?俺はとっつーがどんなに心くんのこと好きか知ってんだよ⁉︎そんなの信じられるわけないじゃん!」
あまりの剣幕に俺はたじろいだ。いつも飄々としてた律が、こんな風に声を荒げて感情を露わにしているのが珍しかったから。
「キレ、てんの……か?」
「キレてるよ!こんなの怒るに決まってんじゃん!バカ!」
俺の無神経な言葉に、律はさらに怒りを覚えたようで、ドンッと俺の胸に拳を叩きつけてきた。別に痛くはなかったけど、怒りはしっかりと伝わってくる。そんな重さだった。
あれから数日が経ったが、相変わらず何度連絡をしても無視され続け、俺は強硬手段に出ることにした。
「え、なんで……」
仕事から帰宅した律が、マンションの下で待っていた俺を見た途端、強張った表情を浮かべた。無理もない。俺だって家の前で待ち伏せされたら身構える。
「なんでって、お前が無視するからだろ」
「だからって家まで押しかけくる?とっつーって意外とヤバい人だったんだね」
それは、いつもの陽気な律からは考えられないほどに、そっけなく冷たい態度だった。
「……こうでもしねえとお前会ってくれねえだろ」
「なにそれ。当たり前じゃん。もうとっつーとは会わないって言ったもん」
「一方的に決めんな。こっちには話があんだよ」
「はぁ?仕方ないから聞いたげるけど、早く終わらせてね。この後予定あるから」
「……予定?」
「言ったっしょ、落ち着くって」
「それは……」
それは、特定の相手がいるということか。とは聞けなかった。
よく考えてみると、相手がいないのなら、ただのダチである俺と縁を切る必要はなかったんだ。相手がいるから、ただのダチでも、元セフレである俺とはいられなかったということなのだろう。
(あぁ、俺はまた……)
また、絶対に報われない想いを抱えるのか。
今回ばかりは、気付くのが遅かった俺が完全に悪いけれど、胸が潰れそうなほど痛いのは仕方がないだろう。
だけど、また不毛な恋になるとしても、それでも、同じ失敗を繰り返すのはごめんだ。だから、俺は真っ直ぐに律を見据えて、口を開いた。
「好きだ」
「──は?」
その一言で、律の冷たい仮面が剥がれた。
「な、何言って……」
今までのが仮面だったと分かったのは、律が顔を赤くしたからだ。
(なんて顔してんだよ……)
嫌な相手にこんなこと言われて、そんな顔するわけない。
わずかな希望を逃すまいと、俺は律に詰め寄り、手を掴んだ。
「お前のことが好きだって言ってる」
「っ、あ……あははっ、えー?そんな冗談、全然面白くな……」
「冗談じゃねえよ。本気でお前が好きだ」
「……っ、や、やめてよ」
「やめない。好きだ、律」
「〰︎〰︎っ」
律は耐えかねたように、俺の手を強く払った。そのまま立ち去ろうとする律の手を、再び掴む。今度は振り解かれないように、強い力で。
「待てよ。話終わってねえだろ」
「話なんてない!」
「聞くっつたろ」
「っ!じゃあ聞くけど!心くんは⁉︎ずっと好きだったじゃん!」
「あいつは恩人だ。大事なのは変わらねえ。けど、もう俺は、お前が」
「俺が好きって?付き合おうって?」
「……あぁ」
「はっ、何言ってんの?俺はとっつーがどんなに心くんのこと好きか知ってんだよ⁉︎そんなの信じられるわけないじゃん!」
あまりの剣幕に俺はたじろいだ。いつも飄々としてた律が、こんな風に声を荒げて感情を露わにしているのが珍しかったから。
「キレ、てんの……か?」
「キレてるよ!こんなの怒るに決まってんじゃん!バカ!」
俺の無神経な言葉に、律はさらに怒りを覚えたようで、ドンッと俺の胸に拳を叩きつけてきた。別に痛くはなかったけど、怒りはしっかりと伝わってくる。そんな重さだった。
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