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番外編 みなりつ2
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***
あれから一週間が経った。
律は元から気まぐれなやつで、これまでも、連絡がないのが続いたことが何度もあった。
だけど、今回ばかりは、今までとは訳が違う。アイツはいい加減なやつだけど、意味のない嘘は言わない。俺たちがセフレという関係から、ただの友人になれたのがその良い例だ。
やらないと言えば、やらない。会わないと言えば、会わない。そういうやつなのだ。
つまり、俺たちの関係は本当に終わりを迎えたわけで。俺はそれが、どうにも納得できなかった。
なんで自分勝手にいなくなったんだって。お前にとって俺は、そんな簡単に切れる程度の存在だったのかって。そんな恨み言が、頭の中に渦巻いている。
(……いや、アイツにとって俺はその程度の相手だったってことだろ)
数いるダチの中の一人。しかも、セックスをしない方の。
アイツの中で、俺の優先順位が低いことくらい分かっていたことだし、そのポジションを望んだのは、紛れもなく俺自身だ。
(だけど俺は……)
できることなら、これからもずっと、アイツと同じ時間を過ごしたいって、そう思っていたのに。
「なのに、なんなわけ?俺がなんかしたかよ……」
目の前に座っている人間を睨みつけると、クソ憎たらしい善人ヅラのソイツは、困ったように眉を下げた。
「だいぶ酔ってる?戸塚くん」
「あ?酔ってねえよ、ふざけんな」
「はいはい。ほら、酒ばっかり飲んでないで、水も飲みな」
「……」
差し出された水を無視して、片手に持ってた缶ビールを呷る。センセイは気分を害した様子もなく、苦笑しながら頬杖をついた。
「……今日の宅飲み、心がやろうって言い出したんだよ」
「アイツが?」
晩酌をしてる食卓から少し離れたところにあるソファには、開始30分で早々に潰れた望月が眠っている。
俺の肩越しに望月を見つめるセンセイの瞳が、胸焼けしそうなほど甘ったるくて、俺は思わず苦笑を漏らした。
(付き合ってだいぶ経つくせに、相変わらずっつーか、なんつーか……)
クソきめえって思うのと同時に、どこか安心してる自分もいた。
自分の家庭が破綻していただけに、いつまで経っても仲良しこよしなコイツらを見ていると、まるで別世界を見ているかのような気になってくる。
そんな俺の微妙な表情に気づいたセンセイが、「どうかした?」なんて言って、不思議そうに首を傾げたけど、素直に言うのは癪だったから、俺は誤魔化すようにまた酒を一口飲んだ。
「別に。それで?なんで急に?」
「あぁ、うん。戸塚くんが元気ないからって」
「……へぇ」
自分ではいつも通りに振る舞っているつもりだったから、正直驚いた。しかも、あのドがつくほど鈍感な望月に見抜かれていたなんて。
(……けどまぁ、昔からそういうことには敏感だったか)
俺が辛い時、落ち込んでる時、望月はいつだってそばに居てくれていた。
「酒弱えくせに、ほんとお人好しなやつ」
「それくらい、戸塚くんが大事ってことだろう?それに……戸塚くんも、心のこと大事に思ってくれてるよね」
「あ?急になんだよ」
まるで何かの前置きのようなセンセイの物言いが引っ掛かって身構えると、センセイは途端に真面目な表情を浮かべ、「それを前提で話すけど」と、背筋を伸ばした。
「さっきの話を聞いた限り、君はその律くんって子のことが好きなんじゃないの?」
「……は?」
あれから一週間が経った。
律は元から気まぐれなやつで、これまでも、連絡がないのが続いたことが何度もあった。
だけど、今回ばかりは、今までとは訳が違う。アイツはいい加減なやつだけど、意味のない嘘は言わない。俺たちがセフレという関係から、ただの友人になれたのがその良い例だ。
やらないと言えば、やらない。会わないと言えば、会わない。そういうやつなのだ。
つまり、俺たちの関係は本当に終わりを迎えたわけで。俺はそれが、どうにも納得できなかった。
なんで自分勝手にいなくなったんだって。お前にとって俺は、そんな簡単に切れる程度の存在だったのかって。そんな恨み言が、頭の中に渦巻いている。
(……いや、アイツにとって俺はその程度の相手だったってことだろ)
数いるダチの中の一人。しかも、セックスをしない方の。
アイツの中で、俺の優先順位が低いことくらい分かっていたことだし、そのポジションを望んだのは、紛れもなく俺自身だ。
(だけど俺は……)
できることなら、これからもずっと、アイツと同じ時間を過ごしたいって、そう思っていたのに。
「なのに、なんなわけ?俺がなんかしたかよ……」
目の前に座っている人間を睨みつけると、クソ憎たらしい善人ヅラのソイツは、困ったように眉を下げた。
「だいぶ酔ってる?戸塚くん」
「あ?酔ってねえよ、ふざけんな」
「はいはい。ほら、酒ばっかり飲んでないで、水も飲みな」
「……」
差し出された水を無視して、片手に持ってた缶ビールを呷る。センセイは気分を害した様子もなく、苦笑しながら頬杖をついた。
「……今日の宅飲み、心がやろうって言い出したんだよ」
「アイツが?」
晩酌をしてる食卓から少し離れたところにあるソファには、開始30分で早々に潰れた望月が眠っている。
俺の肩越しに望月を見つめるセンセイの瞳が、胸焼けしそうなほど甘ったるくて、俺は思わず苦笑を漏らした。
(付き合ってだいぶ経つくせに、相変わらずっつーか、なんつーか……)
クソきめえって思うのと同時に、どこか安心してる自分もいた。
自分の家庭が破綻していただけに、いつまで経っても仲良しこよしなコイツらを見ていると、まるで別世界を見ているかのような気になってくる。
そんな俺の微妙な表情に気づいたセンセイが、「どうかした?」なんて言って、不思議そうに首を傾げたけど、素直に言うのは癪だったから、俺は誤魔化すようにまた酒を一口飲んだ。
「別に。それで?なんで急に?」
「あぁ、うん。戸塚くんが元気ないからって」
「……へぇ」
自分ではいつも通りに振る舞っているつもりだったから、正直驚いた。しかも、あのドがつくほど鈍感な望月に見抜かれていたなんて。
(……けどまぁ、昔からそういうことには敏感だったか)
俺が辛い時、落ち込んでる時、望月はいつだってそばに居てくれていた。
「酒弱えくせに、ほんとお人好しなやつ」
「それくらい、戸塚くんが大事ってことだろう?それに……戸塚くんも、心のこと大事に思ってくれてるよね」
「あ?急になんだよ」
まるで何かの前置きのようなセンセイの物言いが引っ掛かって身構えると、センセイは途端に真面目な表情を浮かべ、「それを前提で話すけど」と、背筋を伸ばした。
「さっきの話を聞いた限り、君はその律くんって子のことが好きなんじゃないの?」
「……は?」
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