先生、おねがい。

あん

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番外編 二月の夜⑤

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 「なに?無理なら別に、他の日でも良いけど」
 「や!無理じゃない!無理じゃないけど!とっつーの方が駄目じゃん!」
 「はぁ?なんでだよ?」
 「だって、万が一、心くんがチョコくれたとき用に、予定空けといた方が……」
 「アホか。“万が一”のために予定空けとくほど、頭お花畑じゃねえっつうの」
 「あ、あは……そっか……なんかごめん……」

 
 “万が一”を強調したとっつーに苦笑いが漏れる。
 確かに、冷静に考えると、心くんがバレンタインチョコを用意したとしても、その日はいんこーせんせーのものになるのだろう。悔しいことに。


 (いんこーせんせーのことはよく知らないけど、とっつーも充分良い男だと思うんだけどなぁ)


 それなのに、心くんがとっつーを選ばないことが、俺はすごく悔しいんだ。まぁ、何目線だよって感じだけど。


 「それに、お前には色々してもらってるし……」
 「え?」
 「今回もそうだけど、わざわざ福岡まで行ってお守り買ってきただろ。そこまでしてもらって、ぞんざいに扱うほど恩知らずじゃねえよ」
 「や、あれはほんと、たまたま旅行行ったついでだから……」


 嘘。俺にできることはそれくらいだからって、わざわざ福岡まで行ってしまった。就活終わって暇だったし。
 まぁ、ついでに現地のカッコいいおにーさんとワンナイトしたりもしたけど。


 「……それでも、割と勇気貰ってる」
 「……」


 今日は色々変なことしてテンションがおかしいことになってたけれど、とっつーのその言葉に、なんだか少し冷静になった。
 俺が変すぎたせいで、あんまり目立ってなかったけど。でも、なんか。


 (なんか、今日のとっつー、めちゃくちゃ優しいよね……)


 今まで絶対お兄さんと会わせたがらなかったくせに、俺が寒そうだからって家に上がらせてくれようとしたり。
 受験生で絶対体調崩せないくせに、自分のマフラーを貸してくれたり。
 明らかにバレンタインチョコなのに、気を遣って「バレンタイン関係ないっつーのは分かったけど」って言ってくれたり。
 それなのに、ホワイトデーの予定を俺にくれたり。

 まぁ、とっつーは、なんだかんだいつも優しいけど。だけど、今日は、優しい上に、素直だ。
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