先生、おねがい。

あん

文字の大きさ
上 下
310 / 329

番外編 二月の夜④

しおりを挟む


 「……なにこれ?」
 「差し入れ!もうすぐバレンタインじゃん?だから、お店に美味しそうなのいっぱい売ってて!いや、だからってバレンタインのチョコってわけじゃくて、ただの差し入れだから!おべんきょーには甘いもの必須でしょ!まぁ、今年は心くんも受験だから、とっつー一個も貰えなかったらかわいそーって思ったりもしたけど、ほんとバレンタインチョコってわけじゃないから!」
 「……お、おう」


 (やばっ。失敗した!)

 
 凄い勢いで捲し立てたせいで、若干引き気味のとっつー。
 違うって強調しすぎたせいで、逆にそれっぽくなってしまうという現象を引き起こしてしまった自分が恥ずかしすぎる。


 (うぅっ!やっぱ来なきゃよかった!俺の馬鹿!)


 「じゃ、じゃあ、試験頑張って!ふぁいと!」
 「あ、おい。これ巻いてけ」


 今すぐ逃げ出したくて、この場から立ち去ろうとしたのに、とっつーはあろうことか、自分の巻いてたマフラーを解き始めた。


 「ちょちょちょっ、何してんの⁉︎いいって!とっつー受験生なんだし、風邪ひいたら大変じゃん!」
 「うるせぇな。家すぐなんだし、こんくらいで引かねえよ。なめんな」
 「なめてないよ⁉︎けどっ、でもさぁっ」
 「黙れ。つーか落ち着け。どうしたんだよ今日……ほんと大丈夫か?」
 「うっ……」


 本気で心配そうな顔をされて、何も言えず押し黙ってしまう。


 (ほんと、何やってんだろ俺……)


 こんなはずじゃなかった。甘いものでも食べて、ちょっとでも癒されてくれたらって。そう思っただけなのに。
 自責の念に駆られつつ、しょぼくれながら大人しくマフラーを巻かれていると、途中でとっつーが「はぁ」とため息を吐いた。


 「……来月」
 「へ?」
 「14日、空けといて。バレンタイン関係ないっつーのは分かったけど、受験終わんのちょうどそんくらいだから」
 「……は⁉︎」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

My heart in your hand.

津秋
BL
冷静で公平と評される風紀委員長の三年生と、排他的で顔も性格もキツめな一年生がゆっくり距離を縮めて、お互いが特別な人になっていく話。自サイトからの転載です。

処理中です...