先生、おねがい。

あん

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番外編 二月の夜④

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 「……なにこれ?」
 「差し入れ!もうすぐバレンタインじゃん?だから、お店に美味しそうなのいっぱい売ってて!いや、だからってバレンタインのチョコってわけじゃくて、ただの差し入れだから!おべんきょーには甘いもの必須でしょ!まぁ、今年は心くんも受験だから、とっつー一個も貰えなかったらかわいそーって思ったりもしたけど、ほんとバレンタインチョコってわけじゃないから!」
 「……お、おう」


 (やばっ。失敗した!)

 
 凄い勢いで捲し立てたせいで、若干引き気味のとっつー。
 違うって強調しすぎたせいで、逆にそれっぽくなってしまうという現象を引き起こしてしまった自分が恥ずかしすぎる。


 (うぅっ!やっぱ来なきゃよかった!俺の馬鹿!)


 「じゃ、じゃあ、試験頑張って!ふぁいと!」
 「あ、おい。これ巻いてけ」


 今すぐ逃げ出したくて、この場から立ち去ろうとしたのに、とっつーはあろうことか、自分の巻いてたマフラーを解き始めた。


 「ちょちょちょっ、何してんの⁉︎いいって!とっつー受験生なんだし、風邪ひいたら大変じゃん!」
 「うるせぇな。家すぐなんだし、こんくらいで引かねえよ。なめんな」
 「なめてないよ⁉︎けどっ、でもさぁっ」
 「黙れ。つーか落ち着け。どうしたんだよ今日……ほんと大丈夫か?」
 「うっ……」


 本気で心配そうな顔をされて、何も言えず押し黙ってしまう。


 (ほんと、何やってんだろ俺……)


 こんなはずじゃなかった。甘いものでも食べて、ちょっとでも癒されてくれたらって。そう思っただけなのに。
 自責の念に駆られつつ、しょぼくれながら大人しくマフラーを巻かれていると、途中でとっつーが「はぁ」とため息を吐いた。


 「……来月」
 「へ?」
 「14日、空けといて。バレンタイン関係ないっつーのは分かったけど、受験終わんのちょうどそんくらいだから」
 「……は⁉︎」
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