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それから俺は分かりやすくグレ始めた。髪を茶色く染めて、耳に穴を開けて。ガラの悪い奴らとツルみ始めた。
親父には殴られたし、母親には罵倒された。けど無視してたら、いつのまにか何も言われなくなった。無理に作ったダチは本当に馬鹿で、話なんか合わなかったけど、それでも前よりはずっと気が楽だった。
そうして数ヶ月が経ったある日、俺はダチに連れられて、『アイツ』がいる街に行くことになる。
「なあ、学校サボんねえ?」
「あ?」
「俺ら生まれてからずっとこんな田舎町にいるし、たまには都会に行ってみたくね?こっから三時間くらいだし、行こうぜ!」
流されるまま電車に乗り込んで、着いた先は、俺が生まれ育った町とは全くもって違うところだった。
「でっけえビルー!なあ戸塚!ちょっと写真撮って!」
「はぁ?めんどくせぇ……」
そんな風に言ったが、本当は胸が高ぶっていたのを覚えている。一人で──厳密には一人ではないけれど、子どもだけで、日常を抜け出せたことに、妙な達成感と解放感を得ていた。
高いビル、複雑な線路図、ごった返す人波、そして──。
「……」
俺は立ち止まってしまった。俺が落ちた私立中学の制服を着た奴らをみかけたからだ。そいつらはキラキラしてて楽しそうで、急に頭が冷めたきがした。
(俺は何をしてるんだ)
自分が恥ずかしくなった。
あの時受かっていれば。受かって、こっちの寮に入っていれば。そうすれば、俺はあの家から解放されたのに。
全部、自業自得じゃないか。
「……」
「どした、戸塚」
「帰る」
「は⁉︎来たばっかじゃん!」
「うるせえ帰るっつってんだろ!」
感情のままに押し退けて、そいつがぶつかったのは。
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