258 / 329
31
しおりを挟む(け、喧嘩っ⁉︎)
戸塚君が山田君の頭を掴んで力を込めている様子に、あたふたする俺だけど、内山君、松野君、愛知君は、山田君そっちのけで、律さんとのおしゃべりを楽しんでいた。
「山田が元カレ面して返り討ちにあってやがる」
「あっは。あの子面白いよねー。たけるんだっけ?」
「そうですー、山田健ことたけるんですー」
「律さんって、もっちーのことオドオドちゃんって呼んでますけど、何か由来があるんですかぁ?」
「んふふ。それはね──」
(すごい……もう馴染んでる……)
すっかりみんなの輪に溶け込んでいる律さん。俺のときもあっという間に距離が近くなったし、律さんのコミュニケーション能力は本当にすごい。その五分の一……いや、十分の一でも見習いたい。
そんなことを思いながら、ほのぼのとしていると、ずっと隣にいた栗原君がコソッと耳打ちをしてきた。
「望月君。みんな律さんに懐き始めたし、こっちはこっちで遊んどくから、望月君は彼氏と二人で回っても良いんだよ?」
「ふぇ?」
「だって、元々デートの予定だったんでしょ?」
「あ……で、でも……」
律さんは察しが良いから協力してくれてるだけで、元々は戸塚君と遊ぶためにここに来ていたのだ。俺と戸塚君は実際は恋人じゃない。だから、こんな風に気を回してもらっても、素直に受け入れるわけにはいかないのだった。
「んー?俺のことは気にしなくて良いよー、オドオドちゃん。俺は、このウッチーに相手してもらうからっ」
俺の困惑顔を見逃さなかった律さんが、グイッと腕を引き寄せる。それも、内山君の腕を。
「ウッチーって……お、俺っスか⁉︎」
「うんオレオレ。君、背ぇ高いし、顔もイケてるし、おにーさん好みだなぁ……君はどう?年上興味ない?」
「い、いや俺っ、男は経験ないし!いや、律さんはめちゃくちゃ綺麗っスけど!」
「あはっ。照れてるの?かーわいっ」
「〰︎〰︎っ!」
首を律さんの細い指でツーとなぞられて、顔を真っ赤にする内山君。律さんのその仕草は色っぽくて、なんだかこっちまで気恥ずかしくなってしまう。
普段無邪気に振舞ってる律さんだけど、こういう色気のある一面を見ると、やっぱり年上のお兄さんなんだなって実感する。『年上』というか、『オトナ』って感じだ。
「あははー。内山が年上美人に魅了されてるー」
「内山タッパあるからねぇ。意外とモテるよねぇ」
「モテるというか、遊ばれてるだけにも見えるけどね……」
0
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
ガテンの処理事情
雄
BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。
ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる