先生、おねがい。

30

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　「んっまーいっ！オドオドちゃん！このチュロス美味しいよ！はい、あーんっ」

　促されるままパクッと一口いただけば、中に広がるジューシーな甘さ。

　「っ！美味しいですっ」

　思えばこれが初チュロス。テレビや街中で何度か見たことはあったけれど、まさか、こんなに美味しいものだったとは。耳が本物だったら、多分ピクピク動いちゃっていたと思うくらいだ。

　先生は食べたことがあるだろうか。こういう美味しいものを食べた時は、決まって、先生にも食べてもらいたくなる。先生は物知りさんだから、おそらく経験済みだとは思うけど、俺が経験した美味しいものは、なんでも共有したくなってしまうのだ。
　幸せを分かち合う、と言ったら、ちょっと大げさかもしれないけど。

　「んふふっ。相変わらずオドオドちゃんはかわいーねー」
　「あ、えと、このウサ耳はみんなが買ってくれて……」
　「あっは。可愛いのが自分じゃなくてウサ耳だと思ってるとこもポイント高い！」
　「？」

　キョトンと首を傾げると、律さんは「可愛い可愛いっ」とほっぺにスリスリしてきた。律さんのお肌がスベスベで気持ち良くて、俺はつい目を細めてしまう。

　「恋敵登場かと思ったけど、まさかもっちーとも仲が良かったとはねー……」
　「松野、修羅場展開にワクワクしてたからって、残念そうな顔するのやめなよ……」
　「あの赤いピアスも、もっちーがくれたものだって言ってたしな」
　「そんなに深い仲なんてぇ……ちょっと、いや、かなり、ジェラるわぁ」

　（ジェラる？）

　愛知君の言葉の意味は分からないけれど、律さんへの容疑（？）は晴れたようで良かったと、ホッと肩をなでおろす。
　ちなみに山田君は意識を回復させて、後列で戸塚君に何かを語っている最中だ。

　「望月の彼氏を名乗るなら、絶対に寂しい思いはさせるな‼︎」
　「……」
　「それから、望月が危ない目にあってる時は絶対に守ること‼︎」
　「……」
　「そ、そ、そそそそれから、そっ、そういうことをする時はっ、もっ、ももっ、望月の負担にならないよ──ぎゅえっ⁉︎」
　「てめえ……黙って聞いてれば好き勝手に言いやがって。それ以上アホみてえなこと言ってっと、握り潰すぞ」
　「も゛っ、も゛う潰してるっ！痛いっ！痛いごめんなさいごめんなさいごめんなさい‼︎」