先生、おねがい。

あん

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 「で、どういうことか説明しろアホ望月」
 「ひゃ、ひゃい……」

 律さんに半ば強制的に座らされたベンチで、俺は戸塚君にほっぺをつねり上げれていた。ちなみにみんなは、ちょっと離れたとこにあるフードコートで見守ってくれている。
 戸塚君に手を離してもらった俺は、姿勢を正して横目で戸塚君を見た。顔色を伺うように……伺うまでもなく、戸塚君は不機嫌オーラでいっぱいなのだけど。

 「えと、その……この前のお祭りの件があったでしょ?」
 「……」
 「それで、その……俺たちがお付き合いしてるって勘違いされちゃって……」
 「あぁ⁉︎」
 「ひぃっ」

 ビクッと身体を震わせる。
 戸塚君が怒るのも当たり前だ。こんな地味でダメダメな俺なんかと恋人だって誤解されて喜ぶ人なんて、世界中を探したって見つからないのだから。

 「ご、ごめんなさいっ。今すぐ誤解といてくるからっ──ひゃ」

 戸塚君に不快な思いをさせてしまうのなら、ウジウジしてはいられない。
 すぐに立ち上がって、みんなの元へ行こうとしたら、腕を引っ張られて、再びベンチに座らされてしまった。
 表情の読み取れない戸塚君が怖くて、ジリジリとお尻を滑らせて逃げるけど、すぐに端っこまで来てしまった。これ以上下がったら、ベンチから落ちてしまう。

 「あ、あのっ、ごめっ」
 「良いんじゃねえの、このままで」
 「ふぇ?」

 キョトンと目を瞬かせる俺の後頭部にそっと手を添えた戸塚君が、そのままごく自然に顔を近づけてきて、軽く首を傾げた。
 その行動はまるで、キスをするときの先生みたいで。でもまさか、戸塚君が先生みたいなことをするわけがなくて。

 「な、なに、して……」
 「は?キス……言わなくても分かるだろ」

 (……⁉︎)

 当然のような顔をする戸塚君に、目を見張る。
 戸塚君が何を考えているのか分からなかったけど、でも抵抗しなきゃってことは分かったから、力の限り戸塚君の胸を押しやった。

 「だ、だ、めっ……」

 だけど、非力な俺では戸塚君を止めることはできなくて。綺麗中をがどんどんと近づいて、もうすぐ唇が触れてしまいそうになったとき、打つ手がなくなった俺は、とっさに目を瞑ってしまった。
 抵抗を、やめてしまったのだ。

 「……っ」

 息を止める。
 うるさいくらいに心臓が跳ねて、これが緊張からなのか、はたまた違う何かからなのかは分からなかった。




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